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2話 草原の真ん中で

 気が付くと草原の真ん中で大の字になっていた。

そして上空では稲妻が光輝き、夜空にいく筋もの流星が見える。


 カナトが目を覚ますと白髪の少女は、悲しそうな目で空を眺めていた。

その間も流星が夜空に光輝く。



「創造神の我がいなくなれば神界は崩壊する。考えればわかる話であろうに……愚かなことじゃ」



 ゆっくりと上半身を持ち上げ、髪の毛をかきながら、カナトは創造神に声をかける。

今でも自分に何が起こったのか理解できない。

全てを知っているのは神官のような服装をしている白髪の美少女だけだ。



「一体、何が起こったんだ?」


「すまぬ……まだ説明していなかったな。我は創造神。名前はない。我を神界から追放して、天神、地神、海神の3兄弟が神界を支配しようとしたのだ」


「それで俺は、それに巻き込まれたというわけか?」


「うむ。我が守護神にしようとして召喚した。だが儀式の前に天神に邪魔されたというわけじゃ」



 体のあちら、こちらを見て確かめる。服装が変わっているだけ……

なんだか肌がツヤツヤしているように思える。

あまり気にすることでもないと、頭の隅から考えを捨てる。

今はそれよりも聞きたいことが多くある。



「ここは一体、どこなんだ?」


「ここは我が創造したカルデナ世界のコーデリア大陸のどこかじゃ」


「それで儀式を邪魔された俺は、きちんと守護神になれたのか?」


「不完全じゃ。守護神にはなっったが、今のままでは普通の人間と変わらん。幸運が無限大なだけじゃ」


「神界を出た我も同じじゃ。普通の人間と変わらん。我には神を誕生させる能力しかないからのう」



 それでは神の異能は創造神が与えたものではないように聞こえる。

では神はどうやって異能を手にしたというのか?



「神の異能は誰が与えたんだ? 創造神が与えたものじゃないのか?」


「うむ。神の異能は自然と発現するのじゃ」


「俺にも異能が発現するのか?」


「それはわからん。儀式をしていない神など初めてなのでな」



 なんとも頼りない答えが返ってくる。

カナトはまだ神となる儀式を受けていない状態だという。

白髪の美少女は、不安気な顔でカナトの瞳をのぞき込んでくる。

今にも捨てられそうな子犬のような目をしている。



「別にお前を置いて行ったり、捨てたりしないよ。銀髪の美女にも頼まれているからな」



 カナトはゆっくりと立ち上がり、白髪の美少女の肩をポンポンと優しく叩く。



「気安く叩くでない。我は創造神じゃぞ」



 これから2人で暮らしていくのに名前がないのは不便だ。

創造神だから名前がないことは知っている。

名無し……せめて、あだ名や通り名ぐらいはつけたほうがいいだろう。



「名前がないのは不便だ。名無しだからナナにしよう」


「勝手に呼ぶがいい。我に名はないのだから。あだ名と思って付き合おう」



 周りを見回しても、一帯は草原で埋め尽くされている。

その向こうには森らしきものが見える。

夜は動かないほうが良いだろう。



「今日はここで野宿だな」



 不思議と腹も空かない。

カナトは草原に横たわると目を閉じる。

草原を吹き抜ける風が、熱気を取り払い、ちょうど良い温度だ。

しばらくするとナナもカナトにしがみつくようにして、草原の真ん中で2人で眠りについた。







 太陽が昇ってきたのと同時に目が覚める。

体の上にしがみつくようにしてナナは安らかな寝息をたてている。

白い髪が太陽に照らされてキラキラと輝いている。

ナナは小顔で目が大きく、少し鼻は低いが美少女といえた。



「俺が35歳ではなくて、10代なら喜ぶところなんだろうけどな」



 35歳のカナトから見ればナナは美少女だが幼すぎる。

人間の年齢にすると15歳ほどに見える。

肌がスベスベで、透き通るように白い。


 ゆっくりとナナの体を草原に置いて、立ち上がって自分の身なりを確かめる。

革鎧に革の手甲、ブーツ、腰に剣を帯びている。

これでは異世界のファンタジー世界で格好だろうと思う。


 草原に座り込んで、腕を組みながら昨日の出来事を考える。

昨日、確かにカナトはコンビニで車によって死んだ。

直後に真っ白な空間に立っていて、神々の騒動に巻き込まれた。

そして、今はカルデナ世界のコーデリア大陸のどこかの草原に座っている。

時系列は理解できたが、今の状況に納得することができない。



「これから、どうすればいいんだよ。さっぱり、わからないぞ」


《街に向かえばよろしいでしょう。この辺りは低級の魔獣が多くて危険です》



 また小さな声が耳元で聞こえてきた。

どこから声が聞こえてくるのだろうと不安でキョロキョロと見回す。

しかし周りを見回しても誰もいない。



《私達は魔素と言います。カナト様の世界に例えれば元素の1つと思ってください》



 元素がしゃべった。

そんなことを今まで経験したことはない。

そんなことはあり得ないとカナトの理性が訴える。

それを無視するように魔素の声が耳元に聞こえてくる。



《昨日の夜は私達が創造神様の周りに強力な結界を張っていたので、魔獣達は近寄れませんでした》


「ああ……気配りありがとう……」


《カナト様が起きられたので、結界は解きました。後は守護神であるカナト様が創造神様をお守りください》


「そんなことを言わずに、ずーっとお前達でナナを守ってくれていてもいいんだぞ」


《それでは創造神様の意思に反することになります。それはできません。カナト様が守ってください》



 そう言って、魔素達の声は聞こえなくなった。

それと同時にナナが目覚めて、上半身を起こして、目をこすり始める。

寝ぼけた顔で挨拶をしてくるナナはとても愛らしい。

ここが危険地帯であることを忘れてしまいそうだ。



「おはようなのじゃ」


「……おはよう」



 太陽がナナを白髪を優しく照らす。

白髪が風にたなびいて、陽光に照らされてキラキラと輝く。

まさに天使のような美しさと神々しさがナナからあふれだす。

思わずカナトは何もかも忘れて、ナナに見惚れて、不覚にも顔が赤くなる。



「何じゃ?」


「……何でもない」



 周りの草が突然「ガサガサ」と音を立てる。

草原の草は丈が長く、相手の姿はよく見えないが誰かいる気配がする。

風上から獣の匂いが漂ってきた。

魔素が突然、耳元でカナトにささやく。



《カナト様、ゴブリンが3匹現れました。創造神様は私達が結界を張ってお守りします。カナト様は存分にゴブリンと戦ってください》


「俺も結界の中に入れてくれればいいじゃないか」


《カナト様は守護神です。戦うのが宿命です。頑張って戦ってください》

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