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19話 光金貨の受け渡し

 3日後に冒険者ギルドへ行くと、いつものようにセリルが微笑んで手を振ってくれる。

ミディアムヘアーのゆるふわカールが今日も美しい。

全体的に少し丸味を帯びた、大人の女性的なスタイルが、色香を漂わせている。



「ルッセル達の解体作業が終わったわよ。少し大きなお金になったから、奥の部屋で硬貨を渡します。ついてきて」



 受付カウンタの横にある通路を歩いて、ギルド職員達が働いている後ろを通って、奥の部屋へ通じる扉を開けると、左右に広がっている廊下に通じていた。


 右奥へ通じる通路を歩いて、一番奥の部屋のドアをセリルがノックする。中から「入っても良いぞ」という声が聞こえてくる。

セリルはゆくっりと扉を開いて、カナトとナナを部屋の中へ入るように促す。

セリルは部屋の中へ入ってこない。


 部屋の中には白ひげを生やした老年の男性が1人いる。

背も低く、体格も細いが只者でない雰囲気をまとっている。



「お主達がカナトとナナか。わしはリグル村の冒険者ギルドのギルド長をしているルーカスという。ソファに座ってくれ」



 言われるがままにカナトとナナはルーカスの対面にあるソファに座る。

ルーカスも座ってテーブルの上に置かれている水を飲む。



「実はカナトとナナにはお詫びを言わねばならんのだ。リグル村の冒険者ギルドは規模が小さい。あれだけの魔獣の死体と魔石を持って帰ってきてくれたのは嬉しいんじゃが、金庫の硬貨が不足していてな」



 あれだけの数のホブゴブリン・ガルム・草トカゲの数だ。

魔巣の森の魔獣の死体もある。

小さなリグル村の冒険者ギルドで扱うには大きすぎる成果だったのだだろう。



「今は光金貨100枚しかギルドの中に硬貨はないのじゃ。全ての硬貨をお主達に渡すわけにはいかん。今回、手渡すのは光金貨60枚にしてほしい。残りの60枚については後日に『疾風の刃』の3名に支払う予定になっている」



 別にカナト達はお金が欲しくて魔巣の森を目指したわけではない。

あくまでカナトの修行のためだ。

しかし、リアンナ、メリッサ、エルスの3名の取り分もある。

『疾風の刃』とは3人のパーティ名で良いのだろうか。



「それでは光金貨40枚をもらっていきます。後の光金貨20枚は、村の神殿の整備と、英雄神クッカを称える信仰に使ってください。俺もナナも英雄神クッカのことが好きなんですよ」


「おおー……わしもリグル村の英雄神クッカ様のことは好きじゃ。それでは光金貨20枚はクッカ様への信仰に使わせてもらう。信者達も村人も喜ぶじゃろう。クッカ様のために祭りでも催そう」



 神の力は人間の信仰心が大きく影響しているとナナから聞いた。

これでクッカを信仰する村人の信仰心が高まれば、クッカの力になれる。



「ついでに創造神についても信仰してくれると嬉しい。創造神は名前がないため、誰にも信仰されていない、可哀そうな神様なんだ。俺は創造神を信仰しているから、お願いしたい」


「そうであった。創造神様がいなければ、カルデナ世界もコーデリア大陸もなかった。一番に偉大な神じゃ。クッカ様と同様に創造神様への信仰も復活させるよう、村長と相談して実行しよう」



 この言葉を聞いて、ナナはカナトへ振り返って、可愛い花が咲いたような笑顔を浮かべる。

創造神の信仰が広まれば、ナナの力も高まる。

各地で創造神の信仰を取り戻すことも大事なことだとカナトは思った。


 ギルドマスターとの話し合いが終わって、光金貨40枚が入った革袋をもらって

、部屋を出ると、廊下にはセリルが姿勢正しく経っていた。

カナト達を待ってくれていたらしい。

セリルの後ろについて、いつもの受付カウンターへ戻る。



「カナト、ナナ……ギルドカードを貸してください。D級ランク冒険者へ昇格です。ギルドカードを交換しますから、もう少しだけ待っていて」



 カナトが2枚のギルドカードをセリルに渡すと、セリルがギルド職員達の席に座って作業を始める。

そして5分ほどで足早に戻ってきた。

手には今までの銅色のギルドカードと違い、銀色のカードを持っている。



「はい、これが新しい冒険者カードね。銀色に変わったでしょう。冒険者として一人前と認められた証拠なの。Dランク昇格おめでとう」



 そう言って、カナトとナナに銀色のギルドカードをセリルは手渡しする。

ナナは何の興味もなさそうに、銀色のカードを見つめてから、カナトに渡す。

カナトは革ホルダーに収納する。


 セリルと別れて、食堂を見るとリアンナ、メリッサ、エルスの3人が、食堂のテーブルに座って手を振っている。

どうもカナト達を待ってくれていたようだ。



「あたい達3人でパーティ名を決めたんだ。名前は『疾風の刃』にしたよ」


「『疾風の刃』か。良い名だと思う」


「今回は草原での戦いが多かったからね。あたい達も疾風のごとく体を動かして魔獣と戦いたいと思ったんだよ。疾風の刃のごとく魔獣を倒すことを目標にするって3人で決めたんだ」



 だからパーティ名が『疾風の刃』になったのか、実にリアンナらしい発想だ。



「ギルド長から話は聞いた。硬貨の受け取りを俺達を先にしてくれてありがとう」


「いいよ……私達はCランク冒険者になるまで、リグル村にいるつもりだったし、当面の資金には困っていないから。カナト達はこれからどうするの? リグル村に残るなら嬉しいんだけど」


「まだローグライク王国の辺境のことも、よく知らないし、カールストンの街へ行くつもりだ。色々な街を見てみたいんだ。俺はまだ、この世界に慣れていないからね」



 リグル村は良い村だ。

近くに魔巣の頂や魔巣の森もある。

魔獣を倒す冒険者にとっては長居するのもいいだろう。

しかし、カナトは冒険者だが、この世界のことに無知すぎる。

もう少し大きな町で知識を増やしたい。



「それなら、掲示板で依頼を見ていきなよ。カールストンの街へ行く商人が護衛の依頼を求めているかもしれないよ」



 商人の護衛ということなら、カールストンの街へも入りやすいだろう。

護衛としての任務も達成できれば、依頼料も手に入る。


 カナトは『疾風の刃』にお礼を言って、食堂から離れて、掲示板に張り出している依頼を見る。

丁度、カールストンの街へ行く行商人から、護衛の依頼が載っていた。

無造作に依頼の紙を取って、受付カウンターのセリルの元へと持っていく。

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