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18話 リグル村へ帰還

 気絶したリアンナ、メリッサ、エルスの3人をそのままの状態で寝かしておく。

ターヤンとクッカとカナトの3人で背負って魔巣の森の出入り口まで運ぶ。



「ターヤン、また遊びにくるからね」


「クッカ、俺、待ってる」



 クッカは可哀そうに、またターヤンに抱擁されていた。

クッカは「うわー、臭い」と言いながらも、顔が笑っている。

本当に仲が良いのだろう。


 クッカとの抱擁が終わると、ターヤンは魔巣の森深くへと戻っていった。

それからリアンナ、メリッサ、エルスの3人が気がつくまで、森の樹々にもたれて、ゆくっりと休みながら待つ

ことにした。


 3人は気づくと「全裸の男が……」と騒いでいたが、夢でも見たのだろうと、とぼけておいた。

説明するのが面倒だし、どう説明したらよいのかわからなかったから。



「あれ以上、魔巣の森の奥への冒険は危険と判断した。だから気絶しているうちに、ここまで運んできた」


「クッカとカナトには迷惑をかけた。あたいもそろそろ限界だと思っていたのよ」


「良い判断だと思うよ。冒険者は冒険しても、命賭けになってはダメだからね」



 いつも無口にしていたクッカが、いつになくリアンナへ諭している。

リアンナも無言で頷いて、納得しているようだ。

メリッサとエルスも異論はないらしい。


 もうすぐ夕暮れ時だ。野営の準備をして、明日から草原をリグル村へ向けて戻ることにした。







 魔巣の森を出発してから、5日で草原を走破してリグル村へと戻ってきた。

カナトがヒート剣を使えるようになったので、草トカゲは全て狩ってリュックの中へと収まっている。


 村の出入り口にいる、いつもの警備の村人も、カナト達の無事な姿を見て喜んだ。

大通を歩いて冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者ギルドの中へ入るとセリルが嬉しそうに手を振っている。



「只今、魔巣の森から戻ってきました。草原を抜けるのに手間取ってしまって」


「普通のEランク冒険者は魔巣の森までたどりつけずに草原から引き返してくる者も多いの。だから、草原を抜けられただけでも大したものよ」



 セリルは自分のことのように興奮して、拍手をしたまま顔を赤面させている。



「それで……魔巣の森と、草原での狩りの獲物を交換してほしいんだけど……いいかな?少し量が多いんだ」


「え? リュックはペタンコに見えるけど?」


「ちょっと訳ありで、ここでは説明できないんだ」


「わかったわ。ついてきて」



 セリルの案内で冒険者ギルドの裏側へと回ると、広い倉庫が現れた。



「この倉庫は解体所にも使われている場所なの。遠慮せずに入って」



 セリルを先頭に皆で倉庫の中へと入る。相当に広い。

その中で3名の者達が解体作業をしている。

一番、体格の良い褐色の肌の男性が近寄ってきて、カナト達を見下ろす。



「今、魔巣の森から戻ってきた、カナト達よ。荷物を出したいというから連れてきたの」


「おおー。魔巣の森の魔獣か。最近では珍しいな。解体作業なら任せてくれ。俺の名はルッセルという」


「それじゃあ、カナト、荷物を出してみて。私も興味があるわ」



 そういえば特定なモノの取り出し方ってどうするんだっけ?

今まで考えたこともなかった。

適当に手を突っ込んだだけで、目当てのモノを取り出せていたから、考えてもいなかった。



《カナト様、抽出と詠唱ください。そうすれば目当ての品を抽出できます》



 いつもながら魔素は頼りになるな。

まるでカナトの思考を読んでいるみたいだ。

カナトはリュックを逆さまにして、口の中で小さく詠唱する。



『魔素よ。魔獣だけを抽出せよ』



 リュックから勢いよく、魔獣の死体が放出された。

一気に広かった倉庫の半分が魔獣の死体で埋まる。



「なんだこれは?」


「ツリーサーペント、水熊、オーク、手長マウント猿もあるじゃないか。それに草トカゲの量は何だ100を超えてるぞ。ホブゴブリン、ゴブリン、ガルムなんて数えきれない」


「カナトさんのリュックって、もしかするとアイテムボックスなんですか?」


「ああ……アイテムボックスもどきって感じだな。あまり気にしないでくれ」



 カナトが自分で魔法で作ったとは言えず、黙って話をズラした。

 理由を知っているナナとクッカはクスクスと笑っている。

リアンナ、メリッサ、エルスの3人は、これほど魔獣が入っていたとは知らずに、セリル達と一緒に驚いている。



「これだけの量を解体するには、徹夜でも3日はかかる。魔石もこちらで取り出すから、日数をくれ」



 ルッセルの顔には先ほどまで見せていた余裕はない。

解体所にいた、他の2人も顔を青ざめている。

セリルも口を両手で抑えて、まだ驚いた顔をしている。


 クッカが革のホルダーから魔石を手にいっぱい取り出して見せる。

カナトも革のホルダーから同じく、魔石を手にいっぱいに取り出す。

それを見て、セリルは額を押さえてよろめいた。



「これだけでも先に換金してくれるとありがたい。手持ちの硬貨が少ないんだ。6人で割らないといけないし」


「わかりました。交換所へ向かいましょう。後のことはルッセルに任せておけば大丈夫です」


「こらー……セリル逃げるのか」



 セリルはルッセルの言葉を無視して、倉庫の扉を閉めると、微笑んで冒険者ギルドの中へ入っていく。

カナトは少しだけルッセル達のことを気の毒に思った。



「それでは魔石を交換しますので、交換所ですべての魔石を出してください。そして食堂でお待ちくださいね」



 セリルはそういうと、受付カウンターへと戻っていった。

クッカとカナトは革ホルダーに入れていた魔石を全て、カウンターの上に放出した。

交換所の女性職員も顔を引きつらせている。


 カナト達は待っている間、食堂でエール酒を飲んでいることにした。

カナトとクッカが持っていた魔石だけで金貨120枚と交換になった。


 1人金貨20枚にわけて、リアンナ、メリッサ、エルスの3人に金貨20枚づつを渡す。

金貨20枚あれば村では2か月分の稼ぎに相当する。


 リアンナ、メリッサ、エルスの3人は喜びの声をあげる。

クッカとナナは金貨を受け取らなかった。



「おいらにはお金なんていらないし、カナトの役にたててよ」


「我もカナトに預けているのが一番の安心じゃ。カナトが自由に使えばよい」



 そう2人に諭されて金貨60枚を受け取り、カナトは革ホルダーの中へ収めた。

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