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15話 魔巣の森

 魔巣の森が目の前に広がっている。

1週間の草原の旅もこれで終わりを告げた。


 カナト達を執拗に追いかけてきた草トカゲ達のほとんどは、カナトの風の竜巻によって、大空へ吹き飛ばして草トカゲとの戦いを避けて、なんとか魔巣の森まで辿り着いた。


 カナトは草原で剣を失ったので、今は魔法だけで戦っている状態だ。

リアンナ達も草原を抜けるだけで、満身創痍の状態だ。

魔巣の森の冒険者ランクがDランクからに設定されている理由を実感する。


 しかし、ここからが魔巣の森への挑戦の始まりだ。

ここで倒れていたのでは話にならない。



「やっと草原を抜けたね。魔獣は問題ないが、草原の広さに参ってしまうよ」


「ああ、ここまでの道が整備されていれば、もっと魔巣の森まで早く来れるだろうけれどな」



 しかし、草原の中にもゴブリン、ガルム、ホブゴブリン、草トカゲなどの魔獣達が多く隠れ住んでいる。

 魔巣の森までの街道をつくるなど、無理に違いない。

それに、街道を作ったとしても、利用者が冒険者しかいなければ、街道を作る意味がない。


 草トカゲのウロコは防具としても重宝されている品だ。

カナトのリュックの中には多数の草トカゲのウロコが保管されている。


 クッカが笑顔でカナトの袖を引っ張る。



「魔巣の森の木々は炎に耐性がある木々ばかりだ。だから盛大に炎系の魔法を使っても、森が燃え尽きることはないよ。だから、炎系の魔法を使っても大丈夫だからね」



 それはありがたい。草トカゲをどれだけ燃やし尽くしてやろうかと思ったか……カナトは不満を募らせていた。

ナナの周りには魔素が何重にも結界を張っているので、ナナに被害が及ぶことはない。

魔巣の森では炎系の魔法も使っていくことにする。


 うっそうとお生い茂った樹々が空まで広がっていて。

森の中へ入っていくと陽光が地上まで届いている箇所が少ないことに気づく。


 夕暮れには戦闘を中止して、野営の準備に入らなければいけない。

夜間に野営の準備をすることになって、手間がかかる。

魔巣の森の中を進める時間は、草原の中を歩くよりも時間が短い。


 メリッサが先頭に立って、戦斧を振り回して、皆が通れるほどの獣道を作ってくれる。

その後にリアンナが続き、クッカ、カナト、エルス、ナナの順番に森の中を進んでいく。


 魔巣の森の中では始終、魔獣達の鳴き声が聞こえてきて、自然と体に緊張感がみなぎる。


 最初に現れた魔獣はマウント手長猿だった。

木々の上から長い手を伸ばして、冒険者を襲う魔獣だ。

一番に弱そうなナナを狙ったらしいが、結界に阻まれて、奇襲に失敗したらしい。

ナナに手を出されて、カナトもクッカも怒りを覚える。



『魔素よ。あの魔獣の体内を爆破せよ。火炎爆裂』



 ボンという爆発音をたっててマウント手長猿は体の内側から破裂して、樹々の上から地上へと落下する。

肉片と血が飛び散るのが気持ちが悪い。



「オエ~……オエ~……」


「何度もいうけどね。そんな魔獣の殺し方をすると、体内の魔石を取れないの。もっと魔石が取れる倒し方をしてちょうだい。それと自分で爆裂させておいて、気持ち悪いからと言って吐かないでよ」



 怒りに任せて、体内から爆破させたが、この方法では魔石が取れないとリアンナに怒られてしまった。

魔巣の森には魔石を取りに来たのだ。

今の魔法は使わないほうがいいだろう。


 樹々の間から、巨体の魔獣が現れた。顔はどう見ても猪か豚だ。



「オークよ。絶対に女性は捕まらないでね。巣に連れ帰られて、魔獣を孕まされるわよ」



 オークは天然の鎧と天然の剣を持って、カナト達に襲いかかる。

エルスは素早く矢を連射して、オークの目を潰す。

メリッサは戦斧を横なぎに振って、オークの大きな腹を断ち割る。

中から内臓が飛び出してきて気持ちが悪い。

リアンナはオークの天然の鎧を避けて、腕の付け根を剣で斬り落とす。

クッカは両手に持った短剣を高速でとうてきして、オークの額を割って短剣が突き刺さり、絶命させる。

カナトは折れた剣を持って、何とか自分も戦いたいと願う。



《それならば、剣の柄より上の部分に熱線を生み出して剣とすれば良いのです》



 魔素の言葉が聞こえる。高熱の熱線を柄の上にイメージ固定して剣の代わりにすればいいのか。



『魔素に命じる。出でよ。ヒート剣』



 すると、柄より先に高熱の熱線の剣が出来上がった。

ヒート剣を片手に持って、カナトも戦いに参加する。

天然の鎧を着ているオークの腹をヒート剣で横なぎに一閃する。

 一瞬のうちにオークが上下に真っ二つに斬り裂かれる。


 今までのうっぷんを晴らすようにカナトはオーク相手に暴れまわった。

いつの間にか、リアンナ達は戦うのをやめて、カナトが戦う様を呆然と見ている。

クッカも短剣をホルダーに入れて見物している。

10体以上いたオーク達はたちまちのうちに全て倒されていた。


 戦いが終わった後にリアンナが優しい微笑みを浮かべながら、カナトに近寄ってくる。



「なんだかすごい剣だったわね。なぜ、今まで使わなかったの? あの剣なら草トカゲも一撃で倒せていたんじゃない?」


「今、思いついたんだ。確かに草トカゲも倒せたかもしれないが、この剣は高熱でできている。草原に燃え移る可能性もあったかもしれない」


「それはあくまで可能性でしょう。カナトがもっと早く考え付いていれば、もっと早くに草原を抜けられたかもしれないじゃない」


「……」



 リアンナの指摘は的を得ている。もっと早く魔素に相談しておけばよかった。

もっと草原に適した剣を生み出せたかもしれない。



「そんなにカナトを責めても仕方ないじゃろう。今、思いついただけでも良かったとするのじゃ」



 ナナが見かねて助け舟を出してくれた。

ナナは楽しそうに、ニコニコと微笑んでいる。

カナトが少しずつ成長していることが嬉しいのだろう。



「オークの肉は高く売れるのよ。早くリュックに入れましょう。腐っても嫌だから」



 そう言って、皆でオークの肉片を拾って、カナトのリュックの中へと収納していく。

あっという間に10体のオークの肉片はカナトのリュックの中へと収まった。


 少し早いが、オークを倒してから1時間ほど歩いた森の中で野営の準備に入る。

もうすぐ夕暮れ時にさしかかる。森の中での1日の時間は短い。

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