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13話 草原にて

 朝早くに集合した6人は、魔巣の森に向かって、草原の中を南西に向かって歩いている。


 リアンナ達はDランク冒険者になったばかりと聞いていたが、パーティプレイが上手く、ゴブリンやガルム達を簡単に屠っていく。


 今回はまだクッカの出番はない。

クッカはナナと隣を歩いて、ナナの防御にあたっている。

カナトの仕事といえば、丈の長い草原の草を、短く刈って、魔巣の森までの道を整備することぐらいだ。


 炎天下の下では、体力の消耗も早い。

すでに水筒の水も底を尽きかけている

カナトは魔法で水を手から放出して、水筒の中へ水を貯めていく。



「魔法士がいると色々と便利だね。これだと魔巣の森へは予定よりも早く着きそうだよ」



 リアンナがそう言って、笑いながら水筒の水をグビグビと飲んでいく。


 エルスの弓は命中補正がかかっているらしく、ゴブリンやガルムを発見すると、矢を射って一発必中で倒していく。

本当にバランスの取れた良いパーティだ。

残りのゴブリン達は前衛のメリッサの戦斧の餌食になる。


 今のところ、リアンナ達がゴブリンやガルムの群れを倒している。

魔石は全てリアンナ達に渡している。

最初はリアンナ達も戸惑っていたが、今では嬉しそうに魔石を受け取って笑っている。


 夜になると野営の準備をして、ガルムの肉を解体していく。

串に刺して肉を焼いて、口に頬張る。

ガルムの肉は固くて、筋が多く、美味しい肉ではない。それでも食料にはなる。


 リアンナ達はそれでも嬉しそうに食べていた。

しかし、ナナとクッカは興味がないらしく、それほど食は進まなかった。

カナトも腹は空いていなかったが、リアンナ達と調子を合わせるために、一緒になって食事をした。


 夜になると、皆でテントを出して、その中で眠る。

あまり活躍することのなかったカナトは率先して深夜の警備の役をかってでた。

どうせ、テントの周りには魔素が結界を張っているので、魔獣に襲撃されることはない。

形だけの警備だ。

カナトは焚火に木をくべながら、ウトウトとうたた寝をする。


 気が付けば、膝の上に頭をもたれさせて、ナナは気持ちよく寝息を立てている。

クッカは楽し気にその姿を眺めていた。



「おいらは神だからね。食事をしなくても、寝なくても平気なんだよ。普通のホビットのフリをするのも大変だね」



 クッカはホビット族の短剣使いとリアンナ達に紹介しているで、そのことが窮屈なのだろう。

しかし、リアンナ達にいきなりナナとクッカが神であると言っても誰も信じないと思う。

だから、嘘も仕方のない措置だ。


 草原を歩き始めて2日目になった。

リアンナ達からリュックが重いという文句が出はじめる。

リュックの中にはテントや色々なリアンナ達の私物が入っている。

重くて当たり前だ。



「それなら、俺のリュックの中へ入れておいてやるよ。俺のリュックの中はまだ余裕があるから」



 カナトはリアンナ達からリュックを受け取り、そのまま、自分のリュックの中へリアンナ達のリュックを収納してしまう。

その姿を見て、リアンナ達が驚いて目を丸くする。



「そのリュックって、もしかするとアイテムボックスかい? それも大容量なようだけど? 王都で売れば、一生遊んで暮らせるだけの金貨をもらうことができるよ」


「これはそれほど良い品ではないと思う。これは貰い物だから、価値のほどはわからないけどね」


「こんな高価な物をプレゼントするなんて、どんな人物なんだい?」


「旅の途中で助けた商人さ。名前も聞いていない」



 全てカナトが作った嘘の話である。

自分でアイテムボックスを作ったというと面倒なことになりそうなので、嘘の話でごまかした。


 しばらく歩いていると、クッカがカナトの袖を引っ張る。



「魔巣の森が近くなってきたから、草原の魔獣も強くなってきた。ホブゴブリンが現れたよ。おいらが狩ってきてもいいかい?暇なんだ」


「リアンナ達ばかりに戦わせても悪いな。クッカさえ良ければ、ホブゴブリンや他の魔獣も狩ってきてくれ。1時間ほど、この場所で待っているから」


「やったー! おいら行ってくるね!」



 そう言い残して、クッカは疾風のごとく姿を消した。

それを見ていたリアンナ達は口を開けて呆けている。



「クッカってホビット族だろう? 本当は強いのかい?」


「ああ、俺達のパーティの中では断トツに強い。今まではリアンナ達に任せていただけだ。1時間、この場所でクッカを待つことにする。クッカが戻ってきたら、どれだけ強いかわかるよ」



 ホビット族は俊敏さこそ上だが、人族よりも体力も気力も劣るとされている。

冒険者には不向きと言われている理由だ。

だから、リアンナ達にはクッカの実力を隠していた。

しかし、この6人の中で1番に強いのはクッカであることは間違いない事実だ。

そろそろクッカの実力をリアンナ達に見せてもいいだろうとカナトは思う。


 1時間を過ぎた頃にクッカが戻ってきた。

腰の革ホルダーにいっぱい魔石を詰め込んでいる。

ゴブリンやガルムに比べて魔石が少し大きい。



「この辺りのホブゴブリンはあらかた殺ってきたよ。ただ草トカゲが潜んでいる。あいつ等は固いウロコに覆われているから、短剣が折れる可能性があるから、放置してきた」


「あれだけの時間で、これほどのホブゴブリンを倒してくるなんてすごい。クッカのことを見直したよ。それにしても草トカゲは厄介だね」



 クッカからの情報を聞いて、リアンナが顔を歪ませる。

よほど相手をしたくない魔獣なのだろう。


 リアンナの説明では、草トカゲは亜竜の一種で、強力な前あごを武器としている。

全身をウロコに覆われた大型のワニをイメージをすればいいだろう。



「草トカゲが出てきたとなると厄介だね。これからは慎重に歩いていくしかないよ」



 リアンナは嫌な顔をして、そう呟いた。



「私の矢も通用しませんし、頼りになるのはメリッサの戦斧だけですね」



 エルスも残念そうに俯きながら呟く。



「これからはドワーフの膂力が役に立つ。私に任せておけば大丈夫さ。いざとなればカナトも魔法で援護してくれ」


「俺は初級魔法しか使えないぞ。使えないよりはマシだと思うが、あまり期待はしないでくれ」



 草トカゲ、亜竜の仲間。いったいどれだけの力があるのだろう。自分の力が通用するのだろうか。



「いざとなれば、おいらも本気を少し出すから、そんなに深刻にならなくてもいいよ」



 クッカは頭の上で両手を組んで、気軽な格好で、カナトに笑いかけた。

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