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12話 アイテムボックス

 ルーナに明日から魔巣の森へ向かうことを伝える。

そして、代金を払うので、部屋をそのままにしてほしいと頼んだが断られてしまった。

魔巣の森へ行く冒険者の半分が帰ってこないのだという。

だから、魔巣の森へ行く冒険者の部屋を、そのままにしておくことはしていないと説明された。

確かに半数の冒険者が戻って来なければ、そういう経営方針になってもおかしくない。



「夕飯の用意はできていますから、いつも食堂へ来てくださーい」



 リュックを2つ抱えて、3階の自室まで戻って、リュックを下す。

これだけ大きなリュックを背負っての旅は、大変だろうと思う。

リュックを背負ったまま、魔獣と戦うなんて無理そうだ。

このリュックを何とかしなければならない。


 カナトは防具と武具を取り外して、シャツに姿になって、ベッドの端に座り込む。

リュックが内容量が大きければ問題ないのだが……そういえばアイテムボックスという言葉を聞いたことがある。

昔、読んだラノベの本に書いてあった。

なんでも収納できるカバンなどがあったことを思いだす。

自分ではどうやって作成すればいいのかわからないが、魔素に聞けばわかるかもしれない。



「魔素、リュックの内容量をもっと大きくしたい。できるだけ無限に大きくしたいけどできるか?」


《できます。空間魔法を使えば簡単です。リュックの中を空にしてから、リュックの中へ向けて広がれと言ってもらえれば、私達、魔素が魔法を発動して、リュックの内容量を大きくします》



 これでリュックの内容量については問題が解決される。

無限の内容量であれば問題はない。



「それは助かる。後、重さをなんとかならないか。とても重くて、身動きが不自由なんだ」


《それは重力魔法で可能です。このリュックの中を無重力状態にすれば重さを感じることはありません。無重力になれと命令していただければ、私達で実行いたします》



 なるほど……重力があるから重さがある。

無重力であれば、重さの問題は解決される。



「後、リュックの中の時間は止めてほしい。そのほうが肉などの保存にいいからな」


《時間魔法で解決することができます。リュックの中の時間よ止まれと命じていただきましたら大丈夫です。魔素は外から自然に補給するようにしておきますから、魔石を用意しておく必要もありません》



 時間魔法……時空間への干渉は魔法としては高度ではないのだろうか。

魔素ができるというのだから試してみよう。



「何でも相談してみるもんだな。さっそくやってみよう」



 2つのリュックの中身を全て取り出して、1つのリュックで実験してみる。

リュックの中を空にして、その中へ右手を入れて、魔素に言われたよう詠唱する。


 魔素に指示されるがままに詠唱し魔法を実行する。

誰も教えてくれないので、カナトは自分が中級魔法以上の魔法を使っていることを理解していない。

自分1人でアイテムボックスを作れたことに興奮する。



「さて?もう1つのリュックはどうしようか? 便利な道具は2つあってもいいだろう。予備にもう1つ作っておこう」



 カナトは気軽な気持ちでアイテムボックスのリュックをもう1つ作る。

そのリュックも、背負っているリュックの中へと収納する。

これで、明日の魔巣の森への準備は万端だ。

一仕事を終えて、ベッドに寝そべっていると、部屋の扉が開いてナナが入ってきた。



「1階では夕食の用意ができているのであろう。我は人族の食事を気に入っておる。早く食べに行こう」



 ナナは人族の食事が気に入ったらしく、神様なので食事をする必要もないのだが、夕食を食べるのを楽しみにしている。

カナトは笑ってベッドから立ち上がって、ナナと2人で1階の食堂へ向かった。


 食堂の中を見回すと、リアンナが手を振ってカナト達を呼んでいる。

リアンナ達の席へ向かうと、リアンナを含めた3人の少女達が立ち上がって、カナト達に挨拶をする。


 1人は身長は140cmほどと小さいが、横幅が広く、すごく胸が大きい。

小柄な体なのに筋肉が盛り上がっている。



「私はドワーフ族でね。このパーティ前衛を務めている。メリッサさ。一緒に魔巣の森へ行くんだろう。前衛の守りは任せておきな」



 もう1人は身長が170cm近くあり、スレンダーなモデル体型の美女。耳が尖っているのでエルフだろう。



「私の名はエルス。見ての通りのエルフよ。後衛で風魔法と弓を担当している。細剣で中衛もこなせる。今回の魔巣の森の遠征では、よろしく頼む」



「これがあたい達のパーティのメンバー全員さ。パーティ名はまだ決まっていない。上手い名前が決まらなくって……」



 リアンナがそう言って、カナトへ右手を出してくる。カナトも笑顔でリアンナと握手をする。

リアンナ、メリッサ、エルスの3人は18歳の同年代だという。

冒険者ギルドで1人で困っていた所をリアンナが

声をかけたことが、パーティを組むキッカケになったそうだ。


 カナトもナナとクッカを合わせたパーティであることを説明する。

内容をどう説明していいかわからなかったので、カナトが前衛で、クッカが中衛、ナナは後衛ということで説明しておいた。


 なし崩し的にリアンナと一緒に夕食を取ることになった。

皆の前にルーナが運んできたエール酒の樽が運ばれてくる。

素早くナナは自分のエール酒だけキンキンに冷やしている。

リアンナ達にもキンキンのエール酒を楽しんでもらいたい。


 カナトは詠唱を唱え、リアンナ達のエール酒もキンキンに冷やす。

そして自分も一気にエール酒を飲む。やはりエール酒は冷えているにかぎる。

何も知らないリアンナ達はエール酒を一気に飲んで、冷えたエール酒に驚いている。



「これってすごく美味しい。今までぬるいエール酒しか飲んだことがなかったけど、冷やすとこんなに美味しいんだ。これってカナトがしたの?」


「ああ、初級魔法だし、飲むなら美味しいほうがいいと思って」


「素晴らしい魔法の利用法だ。私も考えつかなかった」



 リアンナやエルスからも大好評で、メリッサなどはエール酒を一気飲みして、すでにルーナに追加注文している。


 夕食は夜遅くまで続いた。リアンナとエルスは既に酔っぱらって、テーブルの上で寝息を立てている。

元気なのはメリッサだけだ。

これで明日の遠征は大丈夫だろうか。



「2人は私が部屋まで運ぶから、カナトは心配しなくていいさ」


「それじゃあ、朝に1階に集合な。2日酔いでも連れて行くからな」


「大丈夫さ。この2人も加減をして飲んでいる。朝には絶好調だろう。それでは朝に会おう」



 リアンナとエルスを気にしつつ、カナトとナナは自室へと戻っていった。

明日からは魔巣の森への旅が始まる。

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