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死んだ世界の救世主  作者: 豊山伽藍
序章
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00話 プロローグ

 人間には様々な者が存在すると言う者は多い。事実、全く同じ人間など存在しないだろう。

 

 しかし、突き詰めて考えれば結局は2種類に収束すると僕は考えている。〝賢い者〟と〝そうでない者〟の2種類だ。


 賢い者とはどういう者か。民衆の上に立ち、治め、正しい方向へ導くことが出来る者である。

 では、そうでない者とはどういう者か。賢い者の元へ集い、その声を聴く者である。


 偉そうなことを言っているが、「お前は賢い者なのか」と聞かれれば「解らない」としか答えられない。所詮は20にも満たない若造だ。

 

 だが、それでも僕の周りの人間達……この国の未来を担う人間達がそうでない者に分類されるぐらいは昔から気付いていた。

 

 特に僕の父親であり、この国の全権を託されている当代の〝救世主〟などが良い例だろう。

 

 頂点に立つ者でありながら、自分一人では何一つ決定することが出来ない。無駄な優しさの為に奴隷を奴隷として扱うことも出来ない。国に蔓延る無能を切り捨てることも出来ない。優柔不断で甘いだけの愚か者だ。


 救世主に情など必要無い。必要なのは類稀な先見性とそれを基盤とした決断力、後は徹底した合理性のみである。それ以外の要素は邪魔にしかならない。


 父はそれらを何一つとして持っていない。だから大切なものを失ったし、これからも失い続けるだろう。救世主としては器が全く足りないのだ。

 

 漸く何かを決めたと思ったら、「奴隷制を廃止し、全ての者に人権を与える」である。ふざけているとしか思えない。

 

 この国において救世主は絶対であり、神に等しい。父がそう決定すれば、もはや覆ることは無いのだ。

 

 民衆の不満は爆発寸前である。数百年に渡って家畜の様に扱ってきた者を同じ人間と認めろと言い出したのだから当然だろう。今はまだ表立ったことは起こっていないが、内乱が発生する可能性もある。


 全ては我々に管理されていなければならない。一度手を離れれば、必ずまた争いが起こる。そうなれば過去の過ちの繰り返しに、いやそれ以上だ。

 

 今度は、この星に残された最後の安息の地であるこの国が滅ぶのだ。即ち、人類の滅亡。それだけは何としてでも避けなければならない。


 父がこのまま救世主を続けていれば間違いなく滅亡する。1歳年の離れた兄弟もいるが、こちらもあまり優秀ではない。期待しない方が良いだろう。


 ならば……僕に残された道は一つしかない。

 

 あのような能無しでも一応は血の繋がった肉親である。可能ならこんな手段は取りたくなかったが、人類の存続が懸かっているのだ。天秤に掛ければどちらが重いかなんて考えなくても分かる。


 今、この国を守れるのは僕しかいない。ならば僕が守る。守り抜く。絶対に人類を、この星の生きた記憶を滅亡させたりしない。


 初代救世主は、争いの種と成り得る者を全て外に追放することで滅亡を防いだらしいが、それではまだ甘い。もっと効果的で良い方法がある。


 さて、時間は一秒たりとも待ってはくれない。早急に準備に取り掛かるとしよう。


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