「このお菓子の味って何かに似てる。」
ぽつんと呟いた。
「うーん、なんだっけ。思い出せないけど、すっごく昔に食べたことがある気がする。」
そもそもこれはお菓子なんだろうか?
華子は手に持った「それ」に目をやる。
赤と白のシマシマの包み紙に入ったキャラメルのような物体。見た目はお菓子。
とても甘い匂いがするし実際不味い物ではなかった。
ただキャラメルだとしたら、ずいぶん巨大だ。
厚さは2センチほどでハガキくらいの大きさがある。
「正体のわからないもの食べるって、あたしもチャレンジャーよね・・・。」
また誰もいない1人の部屋で呟いた。
そもそも、ここがどこなのかわからない。
壁も床も真っ白でヒンヤリとしたこの部屋。
目が覚めたらここにいて部屋の真ん中あたりに横になっていた。
天井をみると窓がついていて陽の光が差し込んでおり、その照らされた部分に包みはあった。
「寒い・・・。ここから出なくちゃ。」
包みを元の位置に置いて反対側の壁をみると、ピンク色の扉があった。
さっきは気が付かなかったけれど、ここが出口かもしれない。
近づいて観察してみる。
ピンクの扉はドアノブがついた西洋式の扉だ。
ドアノブを握り押したり引いたりしてみたが全く動かない。
「だめか。」
もっと注意深く観察してみる。
ドアノブの上に鍵穴らしきものがあった。
「鍵がかかってるの?」
華子はとてもがっかりした。
どうしてここにいるのかわからないが、わからないからこそ不気味で
早くここを出たいと思っていた。
「他にこの部屋にある物は無い?」
あたりを見回してみる。
すると「赤と白のシマシマの包み」の隣に
「青と黒の水玉模様の包み」が置いてあった。
「・・・あれ?増えた!?」
近寄って確認してみる。
匂いは無い。少し温かい。
やっぱりキャラメルに似ている。これも食べられるのだろうか?
「・・・いただきます。」
「けほっ、しょっぱいっ!」
あまり美味しいものでは無かったので、ますます華子はがっかりした。
華子は朝ごはんはキチンと毎日食べるタイプだ。
だから起きたらまず何か食べたいと思うのだ。
「出られないなら出られないで、せめて美味しいものが食べたい。」
懐かしい味がする「赤と白の包み」と
美味しくない「青と黒の包み」を両手に取り見比べてみる。
することもないし、もしかすると脱出の手がかりがあるかもしれない。
そんなことを考えながらじっと観察しているとあることに気がついた。
「包み紙の裏・・・赤いほうには1、青いほうには2・・・?」
包み紙の内側に大きく数字が書いてあったのだ。
数字には何の意味があるのだろうと考え始めたが、ちっともわからない。
華子は包みのことを、とりあえずほっておくことにした。
「もういちど鍵穴をみてみよう。」
鍵穴を覗いてみる。真っ暗で何もみえない。
手がかりなし。
そう華子が思ったときドアノブの形が数字の3のようにみえることに気づいた。
「1+2は3よね・・・。」
包みの元へ駆け寄ると、それぞれを開けてもういちど数字をみてみた。
1と2。間違いない、これで出られる。
華子は包みの中身をそれぞれ、ひとつまみずつちぎった。
そしてそれを練るように混ぜた。
キャラメル色だった物体は白っぽくなってきた。
それを細い棒状に成形していく。
「うまくいくといいけど。」
鍵穴に入るくらいの細さに仕上げていく。
みるみるうちに扉と同じピンク色に変わり固くなってきた。
鍵穴に作った「鍵」を差し込んでみる。
・・・・・・カチャ。
扉は開いた。
華子は部屋から出ることが出来た。