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「じゃあ、俺は帰るね」
さっきから沈黙を保っていた藤崎が椅子から立ち上がり、すたすたと玄関の方に向かう。
「え、なっちゃん?」
「あ、じゃあ私も帰るね!」
私も慌てて追いかけようとするが、引き留められた。
「三崎と話をしてから帰ったら?まだ、すっきりしてないだろ」
「え?」
「じゃあまた」
バタン、と玄関の扉が閉まった。
確かにまだ疑問に残っていることはある。
「なっちゃん、帰っちゃったの?」
そう問いかける祥平。その質問には答えず、私は思ったことを詰問した。
「ねえ、メールは見なかった?」
「えーと、見たんだけど返信するの忘れて・・・」
それは嘘。
「電話にも出られなかった?」
「うん、たまたま出られなくて・・・」
それも嘘だ。
「じゃあ、家を尋ねた時には家にいなかったの?」
「・・・うん、そうだね」
祥平は私と目を合わせようとしない。――――――嘘をついているときの癖だ。
今日、藤崎がチャイムを押したとき、祥平は家にいた。家の中からこっそりと玄関がのぞければ、誰が訪ねてきたのか分かるだろう。藤崎が率先してチャイムを押しに行ったのが、そのことが理由ならば。
「私のこと、避けてた・・・?」
しばらく静寂がその場をつつんだ。祥平がようやく私の目を見て答えた。
「ごめん」
短い謝罪。それは肯定だった。