呼び出し
「藤村さん、今日の放課後、ちょっといいかな?」
そう双子に声をかけられたのは昼休みが終わり、五時間目が始まる直前だった。
声をかけてきたのは多分、隣りの席のほうだから瑚太郎のほうだろうか?
見分けはつくはずがない。
(私、何かしたっけ?)
言われた意味がわからなくて目を白黒させる私に彼等は、約束したからね、と席に戻っていく。
すぐに先生が来てしまったから返事すら出来なかった。
部活にも入っていなく、今日は用事もなかった私には断るすべがない。
まぁ、特に断る理由もないのだけど。
ただ面倒だからあまり呼び出しとかはやめてほしいなとは思う。
それにしても、いったい何の用なんだろうか?
授業を聞き流しながら考える。
彼等との繋がりはノートくらいしかない。
後はご近所さんってことぐらい。
だから、声をかけられる理由がわからない。
ノートの時でさえ、意外だったのに。
ああ、もしかして、ノートを返すとか?
でも、そんなの普通に言うだろうし、もう写し終わったとは思えない。
休み時間に写してる様子を見ていたけど、二人で分担していたとはいえ、まだまだかかりそうだった。
挨拶の時は顔を見ただけ、朝はノート貸して、昼休みも見かけただけ。
これだけで呼び出された理由がわかる人っているのかな?
考えても仕方ないって言うのに、頭の中でぐるぐると回る。
行き着く先は同じ、わからないってことだけ。
ならば、考えるのも面倒だ。
寝てしまいたいくらいだと思いながら周りをみると、何人かは昼食後の授業中に襲いかかってくる睡魔に負けていた。
授業はいつの間にか終わっていた。
先生ももういない。ノートにはちゃんと板書していたが……話は全然覚えていない。
そして放課後。
残りの授業も結局、頭には入ってこなかった。
帰る準備をしつつも、ため息が出る。
面倒なことは大嫌いなのだ。
早く帰って部屋でごろごろとくつろぎたい。
「藤村さん」
声をかけてきた相手を見る。もちろん双子だ。
隣りの席なのだから逃げられるはずもない。
多分、面倒だと思ったことが顔に出ていたのだと思う。
双子は同じ顔で苦笑していた。
「ごめんね。ここじゃあれだから違う場所に移ろうか」
そう言われて何故か三人並んで歩く。
しかも、私が真ん中だ。
背の高い二人に挟まれて、平均的な背しかない私はどう見えるのだろうか。
……捕まえられた宇宙人とかだったら嫌だ。
時々こっちだよ、とか言われる以外は何も話さない。
それがなんだか少し怖かった。
双子もなんだか緊張している気がする。
本当に何の用なんだろう?
首をかしげながら、私は双子について行った。
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