お昼休み
「紗彩ー!お昼食べよー!」
4時間目の授業が終わった途端にお弁当を持って机に駆け寄って来たのは友人の明日香だった。
陽奈もお弁当を持って近づいてくる。
二人はクラスメートの中でも仲の良い友人だ。
お昼を一緒に食べる仲で、毎回私の席で食べていた。
私の席で食べているのは一番後ろで横にも席がなく、広々と使えていたから。
それでも、もう私の席で食べるのは二人にとって決定事項のようだった。
「あれ?転校生の双子いないね。椅子借りちゃおっと。」
明日香が隣りの双子の片割れ(見分けつかない)の席から椅子を引きずってきた。
陽奈も前の席の椅子を借りて座る。
「いただきます」
手を合わせてお弁当を開ける。
代わり映えのしないお弁当を食べながら二人と話す。
それもいつものことだ。
「双子、どこいったんだろうね?」
陽奈が双子の席を見ながら言う。
双子は戻ってきていない。
まだ、慣れてないはずだし、案内でも受けているんだろうか?
「お昼食べてないよね?お腹空いてないのかな?」
「学食にでも行ってるんじゃないの?」
陽奈の疑問に明日香が答える。
学食ならここにいないのも頷ける。
結構安い割には美味しいし。お昼休みは混雑していて、買うのも一苦労するぐらいだけど。
普段お弁当派な私達もたまに学食で食べることがある。
「そういえば、紗彩。図書室行かなくていいの?図書当番、今日って言ってなかったっけ?」
「!!わすれてた!」
陽奈に言われて委員会の当番のことを思い出す。
図書委員は週に一回、ペアで貸し出しの仕事をしなくてはならない。
今日は私の当番の日だった。
お弁当をかけこんで、急いで後片付けをする。
「ありがとう!ごめんね、行ってくる!」
慌てて立ち上がると、二人とも行ってらっしゃいと手を振ってくれた。
図書棟に向かって走る。図書棟と言っても他に、学食、パソコン室などがある。
1階が学食のために人が多い。反対に裏手にはほとんど人がいないのだけど。
図書室に行くため階段に向かうと、裏手から人の声が聞こえた。
いつもなら気にすることなく、図書室に行っていたと思う。
けれど、聞こえてきた声が覚えのある声だったため、つい気になって覗いてしまった。
「ふ、藤村さん!?」
覗いた途端、双子の片方に気づかれてしまった。
まあ、隠れてるつもりもあまりなかったのだけど。
「何してるの?」
双子の間には、男の子が食べるような大きなお弁当箱が1つ。
箸が2つあるということは二人で1つのお弁当を食べていたんだろうか?
「「ええと…」」
二人は言いよどむ。
言いたくないのなら聞く気はないから、気まずそうに目を逸らさなくてもいいのに。
「あ、仕事……行かなくちゃ!」
仕事を思い出して慌てて走る。
双子のことなんて構ってられなかった。
……結局、当番のペアの子に怒られてしまった。