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『RISING』  作者: kouxProjectRISING
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 第一部 第一話 『決めるのは未来だ』

2008年 4月6日日曜日AM 2:20




都内某所 警視庁首都高速道路管制センター



 天候は良好、気温は4月と言っても夜中はまだ肌寒い。この日も普段と変わらぬ日曜の朝を迎えるはずだった。


 管制モニターを眺めていた管制員の吉本が口を開く。

「土井係長、今日はやけに車が多くないですか?しかもトラックばっかり。」

「大抵、日曜にかけての深夜はハイタクか乗用車が各モニターに数台ずつがいいとこですよね。」

「どっかで大きなイベントでもあるんじゃねぇか?」

「そういえば、昼間のテレビで言ってましたよ。」

「海外の有名なアーティストが来日して大規模なジャパンライブやるって。なんて言ってたっけなぁ。」

「えぇ~っと。そうそう。サイファー・クルナード!」

「それで決まりだな。まぁご苦労なこったな。週末のこんな時間までトラック転がしてさ。」

「自分たちだって同じじゃないですか?こうしてこんな夜中にぼやっとモニター見てるんですから。」

「まぁそれもそうだな。警察官って言っても色々だからな、決して脚光を浴びることのない地味な警察官」

「それが俺達、道路交通管制官ってことですね。」

「あぁ~ぁ相変わらず暇だな、なんかおもしれぇことねぇかな?」土井がいった瞬間


『プルルルルルルッ。』電話の呼出音が鳴る


「はい、こちら道路管制センター、吉本です。どうしましたか?」


「コレヨリ、シュトコウソクハ、ワレワレ『ライジング』ガ、センキョシマス。ケイサツノ、カンヨハミトメマセン」

 機械の声だった。最近インターネット話題のボーカロイドとかっていうインプットした曲を自動で歌うというあれの声だ。話の内容に不釣合いな声は続ける。

「ケイサツノカンヨガハンメイシタバアイ、ショトコウソクハショウメツスルト オモエ ブツッ」

勝手に切れた。


「なんだ変な顔して」

「いやいつものいたずらですよきっと。」

「機械の声で首都高を占拠するって言ってました。」

「で?」

「警察は関与するなってだけ言って勝手に切れました。」

「なんだそれ。またガキの仕業か?」

「最近多いんですよね。暇な子供がこういう悪戯してくるの」


 今年に入ってからこの類の悪戯がやけに多い

職務に支障きたすほどではないがちょくちょくこういった悪戯電話がかかってくる。

当たり前のことだがその後なにもおきることはなく日常にのまれていってしまう。


「いつもどおり報告書だけ上げといてくれ」

「は~い」吉本が欠伸交じりの返事する。



同刻首都高速芝浦PA


 オレンジ色の街灯に照らされた浜崎橋JCT、新宿や渋谷といった都心と神奈川エリア更にはレインボーブリッジを渡り臨海副都心までもつなぐ首都高速でも重要なJCTの一つで昼間は渋滞の名所であるが、夜中となると静かなもので渋滞がおきることはめったにない。ニュースなどでよく首都高速の映像のあの場所である。すぐ脇には東京タワーがそびえ更に奥には六本木の超高層ビルが覗える。


 レインボーブリッジから環状線に流入する手前にあるのが芝浦PAこの小さなPAに一台のコンボイトレーラが不気味に止まっている。Perterbiltピータービルト Model 388ワインレッド色の車体でスリーパーキャブには赤毛の女性の横顔をデザインした大きなエンブレムが入っている。冷凍トレーラも連結してあり、箱には株式会社港栄水産いう文字が描かれている。


『芝浦PAの兼よりみんな準備はいいかなぁ?』

『こちら尚、準備は万全だ兼、浜崎橋上りは重要なんだからしくじるなよな』

『ははは、大丈夫だよ、大作のおやじが俺のスカニア乗ってくるから二台あれば十分ふさげるよ』

『まぁ頼んだぞ』

『お~お~、兼よぉ、この車なんなんだよ。なんかピーピーうるせ~ぞ』

『おやじよぉ、変なとこいじんなよ。それはおいらのピーターと連動してるだけだから気にしないでいいから』

『それより時間までにこっちこれんの?』

『てめぇ、大先輩に対して何言ってやがる。俺を誰だと思ってんだ?』

『高原大作 48歳 職業ただのおやじ、こんな大事なときに自分のトラックをお釈迦にした俺の大先輩でしょ?』

『このやろ~と言いたいところだが…今日はこの辺にしてやるか。今、羽田クリア時間は問題ね~な』

『乗る虎がね~虎乗りはただのおやじなんだよ~~。ははははっ』

『ちくしょうがぁぁ、いまからそっち行くからな待ってろよぉ』

『ほ~い』

『お前たち相変わらず仲がいいな。よしっそんじゃそろそろ行くか。尚より全車へ2:30より行動開始、しっかり頼むぜ、目標、完全封鎖まで10分な。入口封鎖部隊は所定の位置で待機、本線封鎖部隊は細心の注意をはらってやってくれ。僚車情報は端末から発信されっからうまくやってくれよな』



『RISING』第一部 第一話 『決めるのは未来だ』



2008年 4月6日日曜日AM 2:30 首都高川口線上り足立入谷出口付近



『ピピピピピッ、モクテキチマデアト、2300、ゲンソクをハジメテクダサイ。

コウホウ120mニ、コード100シャリョウガツイテイマス。アナタノリュウシャデス。

チュウイシテクダサイ。』


「兼もよくこんなもん作るよな。」隆行はつぶやく

「っていうか大丈夫かな俺の相棒は…あんなせんまいとこ二台一緒にかんぬきしろなんて、

兼はあんなこと言ってたけど」


『隆行の相棒はとっておきのトラック用意したから期待しててねん。腕だけは確かだからさ』


 まぁ兼のことだ。ろくな奴じゃねぇのは確かなんだけど、あんなところで後続車をうまくかわして封鎖なんて容易じゃねぇとりあえずお手並み拝見ってことでやりますか…


隆行はシフトノブに手をかけて減速の準備をする。左ミラーに目をやると後方に相棒のトラックと思われる車から合図。


『ピピピピピッー。ノコリ1000、コウゾクヲカクニン、フウサジュンビニハイッテクダサイ』


「よし、時間だ。」隆行はハザードをたき徐々に速度を落とす。

相棒のプロフィアはハザードをたきながら徐々に速度をあげ隆行のプロフィアをかわし前に出きった瞬間、両車ともにフルブレーキをかけながら車両を傾けていき、本線及び路側帯を大型トラック二台で完全に封鎖して停まった。

「よしゃ、いい腕だ」といいながら電光案内棒、通称ニンジンを手に車外に飛び出す。

幸い今後続車は来ていないようだ。すばやく車両後方に回りウイングのスイッチを押した。

遠くの方から車のヘッドライトの光が見えて来たが構わずウイングを全開させる。

相棒の恰幅のいい影が視界の端を駆けて行く、降りてきてニンジンを振っているようだ。

ウイングを全開させると用意していたライトのスイッチを入れる。庫内側面には

『首都高速封鎖!!爆発物アリ!!非難サレタシ!!』と大きく掲げられた横断幕がかけられている。


 首都高速川口線本線は完全に封鎖された。


「ふっ」と息を吐き顔をあげるとそこには






牛がいた…それもピンク色の斑模様…ガックリorz


兼の野郎…やっぱりな、こういうことかとりあえず無視でいいか…だなスルーでいいな。自分を納得させトラックに戻ろうとしたとき。


『ポンポン』と肩にやわらか~い感触が…


とりあえずスルースルーと心の中で唱え歩きつづける。





『ど~~~~ん』牛が体当たりしてきた。

よろめきながら振り返る。

「なにしやがるんだてめぇ~」


 ピンクまだら牛は着ぐるみののあたまを取る

「無視することないっしょやぁ~~~」

まだ中学生と言ってもおかしくないほどの顔立ちの女が

髪も顔も汗まみれで怒ってきた。


「お前馬鹿か、こんなときに牛の着ぐるみなんて着た奴が

現れたら無視すんだろ普通。まぁいいお前はニンジン振ってろ。報告してくる」


 トラックのステップに足をかけ無線機に手をかける。


『こちら東北道本線部隊、石垣隆行、川口線本線は封鎖した』

『こちら兼、りょうか~い。こっちも浜崎橋封鎖完了、現時点で本線はあと東名のみだな。

隆行どうだぁそっちは?』

『どうもこうもねぇなんだあの生物は?』

『いい娘だぞ~、そうそう、「みなくる軒」の古い常連の娘だからよろしくなぁ~』

『変なのよこすなって言ったのによぉ』

『でも腕はまぁまぁだったろ。大丈夫、隆行にぴったりの不思議ちゃんだから、ははははっ』


『こちら、東名本線の蓮沼、すまん、後続が多くててこずってしもた。今、封鎖完了や』


『英ちゃんありがとね~、もうそろそろ入口部隊も終わるとこじゃないかな?』

『ちゅうか、主役はどうした?』

『こちら尚、悪りぃわりぃ、内回り霞ヶ関封鎖したぞみんな、ありがとな。とりあえずこっちはOKだ。

兼、そろそろつぎの準備に入ってくれ』

『おうよ、了解、一斉送信~、ピッ、いっけぇ~』



「あのう、萌々いつまでニンジン振ってればいいのさ?

みんなここから降りてくさ。もういんでないかい?」

牛女が話かけてくる。

「ああ、牛女か、じゃぁトラック戻ってろ、とりあえずそのみっともねぇ着ぐるみ脱いどけ。っていうかお前まさかそれ着て運転してきたのか?」


「みっともなくなんかないさ、これはウチの大人気キャラクターなの知らないのかい?お店にこれ着ていくと子供達みんな喜んでくれるから着てきたのになしてそんなこというのさ。それにちゃんと途中で着替えてきたさ、鹿追からこの格好で来るわけないっしょや。それに萌々は牛女なんて名前じゃないさ、牧村萌々(もも)ってちゃんと名前があるさ」

「話が全く噛み合わない奴だな。まぁいいとにかく着替えて来いよ、そんな汗まみれのままじゃ風邪ひくぞ」


 牛女もとい牧村萌々は肩を落としてトラックへ戻っていった。



 隆行もトラックのドアを閉めてキャビンに乗り込む


『こちら、霞が関の朝日向尚斗。ただいま2008年 4月6日 AM 2:43、我々、RISINGは首都高速を完全に封鎖した。』


『作戦による損害はゼロ、さすがだ。これから本作戦に入る。全員そのまま待機してくれ』


『こちら、東北本線、隆行、質問があるんだが…。』

『隆行どうした?』尚斗が応える

『やってから言ってもしょうがね~けどこれってよ、本当に正しいことなのか?』

『そんなもん良いか悪いかっていえば悪いことなんだろうけどさ。これが正しいかどうかは俺達が決めることじゃない。決めるのは未来だ。俺はそう信じてる。だから今は自分の正しいと思う道を走りたい』

『協力してくれるか?』

『あぁ、わかったお前に任せるよ』


 長き戦いの火蓋が切って落とされた。朝日向尚斗、須藤兼の二人の男が率いる『RISING』と国家権力との戦いが始まる。



霞が関 警視庁本部


『ビービー。本庁より入電、首都高速で占拠事件発生、現場に向かわずその場で待機。身勝手な行動は慎むように、上層部命令である』


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