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頭の記憶を頼りに店を探して、私はようやく辿り着く事ができた。
私が探していた店は、オシャレで、人気のあるカフェ…ではなく、昔からその場所にあって、とっても落ち着いていて、静かなのが魅力的なカフェ
この間、偶然見つけたのが、丁度この場所だった
私は店の前に立つと、深呼吸してドアの取っ手を掴んだ。
立派なドアを開けると、店内は、ほとんど空席状態。
店員さんも「お好きな席にどうぞ」と言ってくれる
私はドキドキしながら、自分の一番近くの空席を選ぶと、二人掛けの席の奥の方の椅子に座り、一息ついた。
さほど大きな荷物を持っていたワケではない私は、自分の体と壁との間にカバンを置き、中からお気に入りの小説を取り出した。
私が一回やってみたかった、「静かなカフェで読書する」という夢が叶う日が来たんだ。
私は一旦小説をテーブルの端に置くと、メニューを開いた。
この店で、昔から使われているのか、今の時代のオシャレなカフェでは、もう使われてないような、ずしっと重いメニューは、とっても触りごこちが良い。
私はこの、重みのあるメニュー本が好きで、いくら探しても見つからなかったものが、今、手元にある事を実感していた。
私は、そのメニューをめくりながら、色あせたページを見つめる
メニューを見ている時は、このメニューを開いた人たちの想いが残っている気がして、私はこの瞬間が、一番好き。
「お腹すいたな」
「何を頼もう」
「この店のこれは、どの店のより美味しい」
きっと、そう考えながら、メニューを見つめていたんだろうな…
なんか、そういう気持ちって、人が幸せな気分の時だと思うから、その瞬間、メニューに残る想いは、きっと色あせないんだろうな。
私も、見た目的には随分と色あせたメニューを見ながら、一番へこんでる箇所を見つけた
“カフェ・オレ”
私は、店員さんを呼ぶと、一番へこんでる部分を押した
「カフェオレ下さい」
私の指は“カフェ・オレ”と書いてある文字の横、斜め下のへこみに触れている。