表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『ワニザメに飲まれた速記者』

作者: 成城速記部
掲載日:2026/02/24

 渡し場を出た渡し船が突然動かなくなった。正しくは、流されているので、動かないよりも危険な状況である。船頭は、客たちに、これは、たまにあることなのだが、この中の誰かが、ワニザメに見込まれたからで、その人をワニザメに捧げれば、ほかの人は助かる。その人には気の毒だが、ほかの人を助けるためだから、諦めてもらいたい。ついては、一人一つずつ、持ち物を水に投げてもらいたい。ワニザメに見込まれていない人の持ち物は浮いたままになるが、見込まれた人の持ち物はすぐに水の中に引き込まれるから、その人は、身を投げてもらいたい。その人がワニザメに飲まれている間に、我々は船を出すということだ、と説明して、客は、一つずつ持ち物を投げた。皆が同時に投げると、どれが誰の持ち物かわからなくなるので、一人ずつ持ち物を投げていくと、若い速記者の番になったので、さすがにプレスマンは速記者の魂であるから、原文帳を投げたところ、紙束なのに、一瞬で沈んでいった。速記者は、ほかの人たちが助かるなら、と、プレスマンを横一文字にくわえて、ざんぶと飛び込んだ。

 船頭とほかの客たちが、速記者がどうなるかを見ようと身を乗り出した瞬間、船の何倍も大きなワニザメが、一瞬の半分くらいの時間で、速記者を飲み込んでしまった。船頭は、よしっ、と小さな声でつぶやいて、急いで船をこいでその場から離れた。すると、船の後ろにワニザメが浮かび上がり、大量の水とともに、速記者を吐き出した。速記者は、宙を飛んで船の中に飛び込んできた。さっきまでいた位置と同じ場所に。

 客たちは、ワニザメの消化液がつくと嫌なので、少し距離をとりながら、ワニザメに飲まれるのはどんな気分なのかを尋ねた。速記者は、こればかりは、飲まれたことがない人には伝えられない、とはぐらかした。どうして吐き出されたのかを尋ねると、速記者は、プレスマンをゆらゆらさせながら、こいつさ、と答えた。



教訓:胃袋を刺した、胃袋に胃袋の絵を描いた、胃袋に速記シャープの粉を振りかけた、など、幾つかの答えが思い浮かぶが、多分、刺した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ