オピニオフリーダ
仕事なんて無ければいいのに。もっと楽に生きたい。そんな夢みたいなことを毎日考えている。我ながら幼稚だなと思う。今日も私は残業で、本当に嫌になってしまう。誰かさんの手伝いをしたせいで、自分の仕事が終わらなかったのだ。
「んー、疲れた。もう帰りたいよー。……仕事、やめたいな。」
ふと、隣のデスクを見る。付箋がぐちゃぐちゃに張られている。その中で、最初に目をやった付箋の言葉が妙に気になった。オピニオフリーダ。
やっと仕事が終わり、家に帰る。私は上着も脱がずにベッドにダイブした。眠い。このまま寝てしまいそうだ。頑張ってお風呂場に行く。服を脱ぎ、シャワーを浴びる。結局私は、この生活から逃れられないのかな。
今日も、電車に揺られている。オピニオフリーダ。何だっけ? スマホで調べる。オピニオフリーダ。それは、国の名前らしい。その国の写真を見て、私が最初に思ったことは、自然豊かだなってこと。
そんなこんなで、私は今空港にいる。おととい、オピニオフリーダについて調べたら、ここに行きたいって思った。私は、昔から行動力だけは人よりあった。まあ、自分がやりたいことだけだけど。それで、今ここにいる。仕事もやめたし、アパートも退去したし。準備万端。飛行機に乗り込んだ。
飛行機がオピニオフリーダに着陸する。私は階段を下り、大きく深呼吸をした。空気がおいしい。今まで、空気がおいしいって意味わからなかったけど、本当においしいんだ。そんなことを考えていると、中学生くらいの女の子に声をかけられた。
「あの、どこの国から来たんですか?」
「日本から来たよ。でも、急にどうしたの?」
そう言うと、女の子はバッグから紙と鉛筆を取り出した。
「日本について教えてほしいんですけど……だめですか?」
なるほど。日本に興味があるのか。こういうときって、何から教えればいいんだろう。そうだ。私は、バッグからスマホを取り出す。
「何ですか、それ。」
私は最初、何のことを言われているのかわからなかった。だって、スマホは誰もが当たり前に知っていると思っていたから。
「それって、どれ?」
女の子は私のスマホを見ている。もしかして、まだスマホ持たせてもらってないのかな? 私はそう思って、女の子にスマホについて教えてあげた。
「すごいですね。そんなものがあるんだ。そうだ。私、カメラ持ってます。写真見せ合いっこしましょう。」
女の子が歩きだしたので、後ろをついていった。それにしても、自然豊かなところだな。私はすかさずスマホで風景を撮る。女の子はちらちらとこちらを見ている。そんなにスマホが珍しいのかな? 周りの大人はスマホとか使わないのかな?
「見てください。ここが私の住んでいる町です。」
女の子と同じ方向を見ると、まるで物語の中の世界のような風景が広がっていた。驚きすぎて、言葉が出ない。
「どうしましたか? 日本と違いますか?」
女の子の素朴な疑問に、私は大きく頷いた。
「全然違うよ。日本は、建物がたくさんあって息苦しいけど、ここは、自然って感じ……」
「自然のほうがいいんですか?」
女の子は理解できないというような顔で私を見ている。自然の良さを語ろうと口を開きかけたとき、後ろから声が聞こえた。
「アカリ?」
誰だろう。アカリというのは、たぶん女の子の名前だろう。女の子はその女性にかけよる。そして、私のほうを見て言った。
「紹介します。私のお母さんです。」
女の子のお母さんは、私を不審な目で見ている。そりゃそうだ、こんなに歳の離れた人といて、怪しいと疑わないほうがどうかしている。
「あの人は空港で出会ったの。日本から来たんだって。」
女の子が嬉しそうに話しているのを見て、お母さんも納得したようだった。
「娘が急に話しかけたんですよね。すみません。娘は外国に興味があって、特に日本に興味があるみたいで。」
「そうだったんですね。あの、何とお呼びすればいいですか?」
そう聞くと、女の子のお母さんはコムギと呼んでくださいと言った。
「私は、アカリでいいですよ。えっと……」
「私は怜奈。改めて、よろしくね。」
「じゃあ、行きましょうか。」
さっそく、アカリの家に行く。アカリの家も、やっぱり物語の中の家みたいだった。
「怜奈さん、ちょっと待っててください。あの、部屋散らかってるので片づけてきます。」
アカリは、階段を急いで上がっていった。
「怜奈さん、パン食べませんか? たぶん、アカリはすぐ降りて来ないと思うので。」
そう言って、コムギさんが焼きたてのパンを持ってきてくれた。
「もしかして、手作りですか?」
コムギさんは、当たり前という風に頷いた。この国では、手作りが普通なのかな? どたどたと音がしたかと思うと、アカリが走ってきた。
「片づけ終わりました。」
アカリの部屋に案内される。すごくたくさんの本が置かれていた。
「写真、見せ合いっこしましょう。」
そういって、アカリはカメラをいじる。私も、スマホをいじる。
「じゃあ、まず、今までで一番いい写真。せーの。」
アカリのカメラの小さい画面に映っているのは、森と月だ。
「きれい。」
私とアカリの声が被る。私達は顔を見合わせて笑った。
「これって花ですか? こんなきれいな花、見たことありません。」
外国にも桜ってなかったかな? 私はそう思ったけど、特に何も聞かなかった。
「これは、桜って言う花だよ。アカリの写真は、すごく神秘的だね。写真撮るの上手い。」
「そうですか? ありがとうございます。」
何でもないふうに言ってるけど、めちゃめちゃ嬉しそうだ。それにしても、こんな場所があるんだな。森なのに月光で明るく照らされてて、滝が反射してきらきら光ってて……。とにかくすごい。
「次は、すごい写真。せーの。」
アカリが出した写真はオーロラだった。こんなにきれいなんだ。見てみたいな。
「海に浮いてるよ? どういうこと?」
厳島神社の写真を見て、アカリはとてもはしゃいでいる。いつか、日本に連れてってあげたいなと思った。
お互いの写真を見せ合っているうちに、いつの間にか暗くなっていた。アカリもコムギさんも泊まっていいと言ってくれたので、今日は泊まらせてもらうことにした。今日は楽しかったな。ここを選んで、本当に良かった。
「怜奈さん、起きてる?」
ベッドで寝ているアカリが声をかけてきた。
「起きてるよ。どうしたの?」
少しの沈黙のあと、アカリが口を開く。
「日本って、怖いところなの?」
私はその質問を聞いた時、とても驚いた。外国からは、日本がそんなふうに見えているのか。私は全力で否定した。
「でもね、大人もたまに来る兵隊さんも言うの。外国は怖いところだって。なんか、働かなきゃ生きていけないみたいなことを言ってたんだけど。そんなことないよね?」
働かなきゃ生きていけない? どこの国でも働くのは当たり前じゃないのか? 働かない国なんて聞いたことない。私はやっと、この国が少し変だと気がついた。
「……日本っていうか、他の国でも働くのは当たり前だよ。だって、お金がないと生きていけないでしょ?」
「お金って何?」
まさか、お金すらないのか? じゃあ、どうやって物を買っているんだ? 私が知っている世界とは違いすぎて、頭が混乱しそうだった。
「ちょっと待って。お店で物を買うときはどうするの?」
「交換するんだよ。木の実とか肉とか。」
待って。何時代? 縄文時代なの?
「……そうなんだ。もう寝よっか。おやすみ。」
私は、頭の整理が追い付かず、アカリとの会話を強引に終わらせる。こんな国、どうやって成り立っているんだ? お金がないとか、働かなくていいとか……。そんなの最高じゃん。本当にここに来て良かった。
久しぶりにゆっくり寝られたな。スマホで時間を見る。まだ六時か。外、散歩してこようかな。アカリの部屋を出ると、とてもいい匂いがした。これは、パンの匂い? キッチンに行くと、コムギさんが朝食を作っているところだった。
「おはようございます。起きるの早いですね。何か手伝いましょうか?」
そう聞くと、コムギさんは首を横に振った。
「お客さんに手伝ってもらうわけにはいかないですから。ゆっくりしていてください。」
「じゃあ、外を散歩してきます。」
扉を開けて外に出ると、気持ちの良い風が吹いていた。どこに行こう? そうだ、森に行ってみよう。写真撮ってこよう。少し歩くと、すぐ森に着いた。アカリの写真で見た通り、いやその何十倍も神秘的だ。何の実かはわからないけど、たくさんある。そういえば、動物っていないのかな? まだ見かけてないけど……。その時、後ろから音がした。驚いて振り向くと、茂みからうさぎが出てきた。ほっとしたのもつかの間、うさぎがこちらを振り向く。うさぎだと思っていたものには角が生えていた。こんな生き物見たことない。帰ったらアカリに聞こうと思い、写真を撮ろうとした。その時、急に角の生えたうさぎがとびかかってきた。よく見ると、鋭い爪が生えている。誰か助けて。私は思わず目を閉じた。でも、数秒たっても何も起こらなかった。ゆっくり目を開けると、剣を持った男の子がいた。もしかして勇者? 本当に物語の世界みたい。男の子に勇者なのかを聞いてみた。そしたら、男の子はこう答えた。
「僕が勇者? そんなわけないじゃん。僕は、ケン。よろしくね。」
勇者じゃなくても剣を持ってるの? いや、そもそも、この世界に勇者というものはいなくて……
「お姉さん、どうしたの?」
ケンの言葉で我に返る。
「いや、何でもないよ。私は怜奈。よろしくね。」
自己紹介をして、私が昨日この国に来たことを話した。そして、この国について深く知るため、ケンと一緒に図書館に行くことになった。図書館はとても遠くにあった。ケンは元気に歩いている。でも、私はもう限界だった。
「ケン早いよ。ちょっと休ませて。」
そう言うと、ケンは座ってパンを食べ始めた。おなかすいてたのかな。私もパンをほおばる。やっぱりおいしい。ケンは微妙な顔をしている。ケンのお母さんはあまり料理が得意じゃないのかな。でも、見た目はおいしそうだけど。
「パン、おいしくないの? 私も食べたい。」
そう言うと、ケンは余っているパンを全てくれた。私は、恐る恐るパンを口に運ぶ。
「……おいしいよ。ケン、お母さんがせっかく作ってくれたんだから全部食べなよ。ほら、返すから……」
「大丈夫。おいしいなら、全部食べていいよ。僕は、コムギおばさんのパン食べるから。」
いつの間にか、私のパンが食べられている。ケンのお母さんには失礼だけど、まずかった。おなかいっぱいになった私たちは、最初よりも元気に図書館へ向かった。図書館の中は、信じられないほど本があった。
「本ありすぎじゃない? 自分の読みたい本、どうやって探すの?」
「自分では探せないよ。こんなに本があるんだもん。」
奥からおじいさんが歩いてくる。ケンは、そのおじいさんに駆け寄って、動物の本はどこにあるのか聞いた。おじいさんは、ゆっくりと図書館の奥へ歩いていく。私達もゆっくりと着いていく。そして、ゆっくりと指を指した。
「もしかして、どの本がどこにあるのか覚えているんですか?」
おじいさんはゆっくり頷く。すごい。こんなに本があるのに……。ちょっと待って、矛盾してない? この国に仕事はないんだよね? じゃあ、このおじいさんは?
「あの、おじいさんは図書館で働いているわけではないんですか?」
おじいさんはゆっくりと頷いた。
「おじいさんは趣味でやってるんだよ。しかも、この本、おじいさんが若い時に集めたんだって。」
おじいさんの代わりにケンが言った。趣味でやる人とかいるんだ。
「ねえ、本見ようよ。」
そう言われ、ケンが開いている本を見る。
「何これ? え、全部の動物に角生えてるの?」
ここに来てから、驚いてばかりだ。
「そうだよ。全部の動物に角が一本生えてるよ。外国は違うの?」
「違うよ。角一本の動物とか空想上の生き物かと思ってた。」
他の本も開いてみる。どの本を見ても、やっぱり角は一本だ。ふと、一冊の本が目に留まった。これは、料理の本? でも、動物の本の場所だよね。間違えたのかな。その本を開く。
「え、食べるの?」
「うん。どの動物も食べるよ。外国では、動物は食べないの?」
いや、食べるけど……。あれ? なんで、食べるのかなんて聞いたんだろう。角が生えてたって食べるよね。
「そうだよね。動物は食べるよ。でも、全部ではないかな?」
「へえ。外国と違うんだね。」
これから住むオピニオフリーダのことをよく知るために、たくさんの本を読んだ。気が付くと、もう十二時になっていた。そろそろおなかがすいてきたな。
「そろそろ帰ろうか。」
「そうだね。じゃあ、この本借りてこうかな。」
ケンは料理の本を持っていた。料理が好きなのかな? 好きなことがあるのっていいな。
アカリの家の扉を開けると、すぐにアカリが駆け寄ってきた。
「もう、どこ行ってたんですか? 朝起きたら、怜奈さんもお母さんもいないし。」
「コムギさんもいなかったの?」
「まあ、お母さんがどこに行ってるのかはわかってるけど……。」
アカリは頬を膨らませている。心配させちゃたかな? でも、こんなに心配してくれるなんて、昨日初めて会ったことなんて忘れてしまいそう。
「まあいいです。ご飯食べましょう。」
テーブルの上にはサラダが置かれている。でも、なんか……。
「すみません。私が作ったので、ちょっと下手で……。」
「いや、全然。見た目はちょっとあれだけど、味が良ければいいんだよ。」
口にサラダを運ぶ。これは……。
「やっぱり不味いですよね。大人になったら、一人で生きていけないよ。」
そんな大げさな。そう思ったけど、確かにケンもアカリも、料理が好きでやってるわけじゃなくて、一人で生きていくために練習しているのかな?
「この国では、料理を食べれる場所とか、売ってる場所とかないの?」
「そんな場所ないです。この国では、自分で木の実を採集したり、動物を倒したりして材料を集めて、自分で料理するんです。全部、一人でやらなきゃいけないんです。」
私はあっけにとられた。この歳で、もうそんなことを考えなければいけないのか。私だったら絶対に出来ない。アカリもケンもすごいな。
「すごいね。私がアカリぐらいの歳の時は、将来のことなんて何も考えてなかったよ。」
「……すごくなんか、ないです。私は、つらいこと、大変なことから逃げることしか考えていません。私の夢は、外国に行くことなんです。それだって、この先待っている大変な未来から逃げたいからなんです。きっと。それに、昨日の夜、働かなくてはいけないって聞いて、外国に本当に行きたいのかわからなくなってしまって……。結局、夢なんて後付けで、楽に生きたいだけなんですよ。」
アカリの目から涙があふれている。楽に生きたい、か……。
「アカリ。私はね、大人になってもずっと楽に生きたいって思ってたよ。だから、仕事をやめて、オピニオフリーダに来たの。私からしたら、仕事がない国があるなんて救いでしかなかった。でも、やっぱり、悩みを抱えている人は少なからずいるんだなって思ったよ。アカリが今話してくれたことも……。」
ケンがあの本を借りたとき、一瞬暗い顔をしたのも。
「でも、アカリはすごいよ。だって、外国ってわからないことだらけでしょ。そこに行こうって思えるのは、ただの逃げたいって気持ちだけでは無理なんじゃないかな?」
アカリは涙をぬぐって、少し微笑む。そして、いたずらっぽい顔で言った。
「それは自分に言ってるんですか?」
確かに、自分を納得させたいだけなのかもと思う。アカリと私は似ている。
「私やっぱり、外国に行きたいです。これは、逃げじゃない。私がちゃんと決めたやりたいことです。」
違う。やっぱり、似てなんかない。アカリは私より、全然すごい。
私は、数日、アカリの家に泊まらせてもらった。そして、今は家を探している。空き家が何件かあって、その中から選ぶシステムのようだ。候補は三つある。まず一つ目は、アカリの家の近くの古い家。二つ目は、ケンの家の近くの古い家。三つ目は、図書館の近くの新しいきれいな家。どうしよう。私は頭を抱える。知っている人が近くにいるほうが絶対いい。でも、古いんだよな。やっぱり、図書館の近くの家にするか。早速、家に向かう。やっぱり、景色はどこもきれいだ。家に着くまでにたくさんの写真を撮った。最後に一枚、家の写真を撮る。
「よし、お邪魔します。」
私は家の扉をゆっくりと開ける。
「きれいだけど……何もない。」
まさか家具も自分で作るの? だとしたら大変なんだけど。そう思っていると、扉が開く音が聞こえた。振り返ると、大柄の男性が立っていた。
「あ、えっと? どうされましたか?」
「おまえが今日からここに住むのか?」
私は縦に首を振る。すると、大柄の男性は外に出て行った。何だったの。怖い人もいるんだ。ここに来てから、優しい人にしか会ってなかったからか、そう思った。
「よいしょ。よいしょ。」
今度は何? さっきの男性と二人の男性がベッドを運んできた。もしかして、引っ越し屋さん? じゃあ、図書館のおじいさんと同じように趣味でやってるってこと? この国の人達、優しすぎない?
「あの、ありがとうございます。」
「感謝されるようなことじゃない。趣味でやっているだけだ。」
やっぱり趣味なんだ。
「趣味でやっているとしても、私が感謝したいと思うんだから、感謝されるようなことじゃないなんて言わないでください。」
大柄の男性が、怖い顔で私を睨む。怒らせちゃった? 謝ろうとすると、他の二人が言った。
「褒められ慣れてないだけだから、怒っているわけじゃないよ。」
私は胸を撫で下ろす。それにしても、息ぴったりだな。
「すまない。怒っているように見えたか? 俺はリキヤ。」
「私は怜奈です。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしく。じゃあな。」
帰ろうとしたリキヤさんを他の二人が引き留める。
「明日、ほら、あるじゃん。言わなくていいの?」
リキヤさんは首を傾げる。数秒後、何かを思い出したように言う。
「ああ。明日は、あれか。」
次の日、リキヤさんに言われた通り、お城へと向かった。そもそもお城があることすら、昨日まで知らなかったけど。着くと、そこにはたくさんの人達が集まっていた。アカリやコムギさん、ケンもいる。
「アカリ。今日って、何の集まりなの?」
「怜奈さん。今日は、五年に一度の国民が意見できる日です。」
この国にはそんなものがあるのか。あ、あそこにいるのはリキヤさん達だ。リキヤさん達に近づくと、なんだか今日は、昨日よりも怖い顔をしていた。なんか、話しかけづらいな……。おとなしくアカリのところに戻る。あれ? こんなに暗い雰囲気だったっけ? 集まっている人達の顔を見渡してみると、みんな険しい顔をしていた。
「静粛に。」
兵隊が叫ぶ。一気に場が静まり返り、なんだか緊張を覚えた。王様がバルコニーから出てくる。私は目を疑った。だって、私が思っていたような王様ではなかったから。王様は、国民と同じような服を着ていた。
「王様、聞いてほしいことがあります。」
誰かがそう叫んだ。
「申してみよ。」
「ありがとうございます。この国には、お金というものがありません。つまり、働くことは必要ないです。しかし、本当にそれでいいんでしょうか。国民は皆、退屈しています。」
それを聞いた王様は、少し考え言った。
「では、テーマパークか何かが欲しいということか?」
「いえ、違います。そうではなく、この国にもお金があったほうがいいと思うのです。」
その言葉を聞いた瞬間、私は青ざめた。どうして? そのことで頭がいっぱいだった。どうして、仕事をしたいと思うの?
「いや、それはできない。」
私はほっと胸を撫で下ろした。しかし、他の人達は違ったようだ。一気にその場が騒がしくなった。
「王様が、国民の意見を取り入れないなんて初めてじゃない。」
え? 逆に、今までは国民の意見を全部聞いていたの? それが普通なの?
「どうしてですか?」
「なんでだよ。」
国民が口々に言う。
「黙れ。」
王様の声が響く。その場はしんと静まり返った。
「なぜだ。そなたらが望んでいたことではないのか。仕事をしたくないと。」
国民の半数は俯いてしまった。心当たりのない国民はひそひそと話している。誰かが叫んだ。
「そんなこと、頼んでない。」
その言葉は王様の胸に深く刺さったようだった。
「じゃあ、この国を出ていけ。他の国なら働ける。頼んでない? それは、仕事をしたことがないから言えることだ。仕事をしたら、この国がどれだけいいかわかる。」
私も同じ意見だった。
「王様、わしの話を聞いてくれんか。」
そう言ったのは、図書館のおじいさんだった。
「なんだ?」
王様の声には怒りが感じられる。しかし、おじいさんはそんなことを気にせず話し始めた。
「わしは、四十年以上、この国に住み続けた。最初は、仕事がないなんて、いい国だと思っていた。途中から、それが退屈に感じるようになっていって、前の国に戻ろうか何回も考えた。でも、わしにはそんな勇気がなかった。怖かったんじゃ。仕事がまた上手くいかなかったらどうしようと……。」
「ほらな、結局、ここが一番なんだ。」
「でも、それは違うと思うんじゃよ。わしは今、ここを出ていかなかったことを後悔している。嫌なことから目をそらすのは悪いことじゃない。でもな、目をそらし続けるのは後悔でしかない。わしと同じ道を、辿ってほしくはないんじゃよ。」
その言葉は、私の胸に強く刺さった。私は、逃げてばかりで、何も頑張ろうとしていなかったことを思い出した。今からでも、やり直したいと思った。きっと、まだ遅くないはずだ。
私は結局、日本に戻ることにした。あれから、少し変われたところがあると思う。最初から決めつけるのはやめたし、何でも挑戦してみることにした。もうオピニオフリーダには戻らない。でも、あの場所で知ったことを忘れずに生きていこうと思う。
伝えたいことがしっかりと伝わったでしょうか?
「場面転換の方法」と「タイトルをどうやって考えているのか」をぜひ教えてほしいです。




