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私はもう恋なんてする必要もない――平凡でバカだと言われた庶民なので、何も言わずにいなくなりますね  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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平凡な女の子

 王立西地区総合学園中等部。


 王都西地区の外れにある小さな学園で、普通の庶民から下級、中級貴族が通うどこにでもある普通の学園だ。


 そんな学園の中等部二年生の私、リリス・パットンはどこにでもいる普通の庶民の女の子。


 別に可愛いわけでもない、かといって卑下するほど悪い容姿ではないと思っている。


 ちょっと地味だけど。勉強は苦手で下から数えた方が早い。運動神経がいいわけでもなく、魔法が上手く使えるわけでもない……。


 自分の取り柄……なんだろう? 全然思い浮かばない。


 今は魔法力学の授業中なのに、よくわからないからどうでもいいことばかり考えてしまう。


 あっ、そうだ、私が得意なことは空想、夢想、妄想かな? 


 ほら、例えば、授業中にいきなり他国のテロリストが侵入して、私が人知れず倒す、とか。身分を隠した王子様と知り合って、大冒険の末に婚約、果ては王女になったり……。

 妄想を作り出すのって楽しいんだよね。


「おい、リリス、授業終わってるぞ。お〜い、リリス・パットン? 聞いてるのか?」


「え? あ、本当だ……」


「はっ、相変わらずバカで鈍い女だな、お前は」


「……お、お前……って言わないでください。もう中二なんだから……」


「声が小さくて聞こえねえよ。てか、いつまで敬語なの? 俺達同級生じゃん。お前結構可愛いんだから、もっとしゃきっとしろよ」


 私に軽口を叩くのは、隣の席のキース・ハウエル君だ。初等部のころから一緒だけど、正直、私が男子から話しかけられるのは珍しい。


 だってさ、私って口下手だし、どもっちゃうし、男子と喋ると緊張して汗が出ちゃうし……。


 キース君はこのクラスのカースト上位の存在。うん、子爵貴族なんだ。

 学園での庶民と貴族の割合は半々くらい。


 難しいことはよくわからないけど、王都では庶民もちゃんと教育を受けないといけないといわれている。


 とにかく、キース君は気さくに話しかけてくれるけど、顔も良くて頭も良くて魔法もすごい。それに貴族だから、本当の意味でカースト上位だよ。


 だから、私はキース君のことがちょっとだけ気になる。これが恋っていうものかわからないけど、好きだと思う。


「あのさ、リリスって、フィリスのこと興味あるの? いつも見てるよな?」


 人間は本心を付かれると言葉を失ってしまう。あと、顔が真っ赤に染まって、恥ずかしくて嫌な気持ちになる。

 フィリス君は……、はっきりと恋だとわかる。


 私の憧れの人。男爵家の三男なんだけど、クラスで一番かっこいいと思う。


 魔法がすごいし、勉強もできるし、かけっこだって速い。フィリス君の男爵家は王都の中央と繋がりがあるから、いつも珍しい話を友だちに披露している。


 正直、なんで好きなったかわからない。気が付くと目で追っている。

 一日、一回話すか話さないか程度の関係。でも、挨拶されただけで胸が高鳴るんだ……。

 もしも、フィリス君と付き合えて……婚約者になれたら、なんて妄想もしたことがある。


 多分ね、これって初恋なんだ。


 キース君はそんな私を見て鼻で笑った。


「フィリスはイケメンだから人気あるからな。お前は釣り合わねえよ、ははっ。ていうか、リリスって庶民じゃん。商店の娘だけど、貴族と付き合うのは難しいだろ」


「そ、そんなこと、わ、わかってるって」


「まあいいや、俺、今日さ、兄貴と一緒に冒険者ギルドにいってダンジョンへ潜るんだ。お前ってゴブリンに詳しいじゃん。弱点とか教えてくれよ」


 私は本ばっかり読んでいるから魔物の生態に詳しい。……クラスメイトは揶揄して私のことを「オーク娘」って呼ぶんだ。……


 中等部は正直みんなまだ子供だからね。人のことを馬鹿にして喜んでいるんだ。これはまだいい方。自分の名前にバカって付けられると、本当のことでも、すごく傷つくんだ。


 ……でも、王都中央でもそうなのかな? みんなこんな風に人のことを馬鹿にするのかな? 


「おい、聞いているのかよ? ちっ、バカリリスがトロイから先生が来ちまったじゃねえか。このバカ」


「バカバカ言わないでよ……」


「まあいいや、あとでゴブリンのこと教えてくれよな」


「うん……」


 キース君が自分の席へと戻る。……嫌なことを言われるけど、気になる男子と喋ると緊張して心臓がバクバクしちゃうし、お世辞でも可愛いと言われると嬉しくなっちゃう。


 しかも、放課後の約束をしちゃった。……誰の視線もなければ、普通に話せるかな?


 キース君はちょっと怖いけど、かっこいいし、明るいし……こんな私に話しかけてくれるから、やっぱり好きだ。


 あっ――

 窓際の席のフリーダさんが私のことを睨んでいる……。フリーダさんは男爵家の御令嬢。ちょっと気が強い女の子で、怖くて私は近づけない。キース君のことが好きって噂なんだ。


 私は俯きながらその時間をやり過ごす。

 そして、放課後になり――


「あっ、リリスさん……だっけ? 君もキースに呼ばれたの?」


 キースに呼ばれた空き教室に行くと――そこには憧れのフィリス君がいた。



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