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第1章 祈らない訓練校 第4話 奇跡は資源である 3/3
「蘇生:記載なし」
「禁忌です。
理論上は可能です。ですが……。
予算上、政治上、宗教上。
許可された事例は、存在しません」
存在しない。
聖女なら、死者を蘇らせる。子どもの頃に聞いた物語が、頭をよぎる。
白衣の男は、それを切り捨てるように言う。
「物語と現実を混同しないこと、です。
奇跡は、資源です。
資源は、配分されます」
そのまま講義は、続いた。
使用履歴の提出方法。監査の頻度。違反時の処分。
それらは、どれも神の話ではなかった。
講義の最後、男はこう締めくくった。
「覚えておいてください。
奇跡を使ったかどうかよりも、使わなかった理由の方が、重く見られます」
講義が終わる。
男は余韻を残さず、挨拶の言葉すら残すこともせずに事務的に教室を出で行った。
候補生たちは黒板を見つめて講義を振り返る。そこには数字と線と簡潔な言葉だけが残っている。
祈りは、どこにもなかった。
奇跡は、願うものじゃない。
──割り当てられるもの。
それが、この場所の常識なのだ。
ようやく……。
理解し始めていた。




