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第1章 祈らない訓練校 第4話 奇跡は資源である 2/3
奇跡が、説明されている。
まるで、道具のように。
「誤解しないでください。
点数が低いから価値が低い、という意味ではありません。
むしろ、癒やしは最も頻繁に使われ、最も消耗します」
男は講義室を見渡した。
「では、質問。
戦場で、瀕死の兵士が三人います。
あなた方の残り点数は……三点」
男は沈黙する候補生を見渡しながら「誰を癒やしますか?」と問いかける。
誰かが答えかけながらも、口を閉じた。男が即座に言ったからだ。
「正解は、ありません。ですが、記録は残ります。
誰を選び、誰を選ばなかったか。
理由も含めて」
黒板に、別の数字が書き足される。
「使用上限:個人一日二十点」
「月間配分:地域別予算制」
予算。
候補生たちは、その言葉に注目した。
「あなた方が使える奇跡は、無限ではありません。
そして、王国全体で、管理されています」
誰かが、震える声で言った。
「あの……蘇生は?」
教室の空気が変わる。
白衣の男は、一瞬だけ視線を伏せた。そして、黒板に線を引く。
「蘇生:記載なし」
はっきりと、そう告げた。




