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第1章 祈らない訓練校 第5話 信じるな、理解しろ 1/3
次の講義は場所が移る。そこは礼拝堂に一番近い場所にあった。
それが皮肉だと気づいたのは、後になってからだ。
室内には、祭壇の代わりに実験台が並んでいた。壁には神話画ではなく、複雑な図式と数式。中央には、円環状の床紋様が刻まれている。
「立つな。座れ」
そう言ったのは、二人だった。
一人は、正統派の神官服を着た中年の男。
もう一人は、油染みのある作業着姿の女性。
「本講義は合同になる。
神学と、奇跡工学だ」
神官が言う。
工学。その言葉を候補生たちは、まだうまく飲み込めていなかった。
神官は、静かな声で問いかけた。
「まず、確認する。
神は存在するか?」
「……」候補生の誰も答えない。
「存在する。これは前提だ」
神官の言葉に少し、空気が緩む、が。「だが」と続く次の言葉で、それは崩れた。
「神は、万能ではない」
「少なくとも、我々が扱う範囲では、ですね」
神官に少し離れた場所にいた、工学側の女性が、即座に引き継ぐように言葉を繋げた。




