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土曜日の夜、天引弥は廃墟のビルの中で眠っていた。
辺り一体ポータルが塞がりきっておらず、いつ魔族が現れてもおかしくない
眠ると言っても横になっているわけではなく、座って壁にもたれかかり、右手にはカッターを握っている。辺りには魔獣の死骸が広がっていた。
魔族の死骸は普通、国の研究機関に送られるため、闇市場では高値で取引されている。
そんな時、目の前の空間に亀裂が走った。
亀裂は広がっていき、やがて隙間が空いた。
弥は異変を感じて目を開けると起き上がり、横に飛んで距離をとった。
ポータルから人の右腕が現れた。
「よいしょっと、あれ?あ、こっちか」
裂け目からは身長160センチほどの少年が現れた。
見た目は中学生ほどだが、溢れ出る魔力の強大さは隠しきれていない。
「夜遅くにごめんねー、復旧支援に来たら立ち入り禁止区域に男が入ってくって目撃情報が入ってさ?終わってさあ帰るかって思った時に思い出してね」
弥は突然のことだが平静を保ち続けている。
あたりに散らばっている死体を見れば密猟をしていたということは明らかだろう。
これでほんとにゲームオーバーか。
何も言わずに待っていると少年はポカンとして言った。
「ん?いやーそんなに潔いとちょっと心の準備してた僕がバカみたいだよー、いきなり殴りかかられらかもしれないって思ってたのにさ」
弥は少年の5メートルほど前に立つと口を開いた。
「前置きはどうでもいい、早くしろ」
「そんな悲観的に捉えないでさ?ここには僕と君しかいないじゃん」
少し考えるそぶりをして言った。
「見逃してくれるのか?」
「まあ見た感じ服は私服でボロボロ、武器もカッター?狩猟用には見えないし、情状酌量の余地はあるかなって感じ」
少年は無言で弥を見つめ、理由を話すように促しているように見えた。
「...五年前に父親が死んで母子家庭で育ったんだが、最近母が男をつくってから家に俺の居場所がなくなったように思った、色々と性格も相まって人生に嫌気がさして自殺のつもりだったがいつのまにか非行少年になっちまった」
「そう、それはお気の毒に...まあ端から君をサツに突き出すつもりなんてなかったんだけどね」
「は?」
「いかにも訳ありって感じだったしねー。でも条件がある、君が殺した魔獣さ、平均的な魔力の人がやるならちょっときついぐらいで殺せなくはないなって感じなんだけど、こんな量やるなんてやばい、それに今もまだ余力ありって感じだしね」
「つまりなんだ?」
「つまりデーモンハンターにならない?」




