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vintage   作者: 河村諭鳥
6/9

6

「どうしたのよ?何で急に帰ったりしたの?」


帰ってきた姉に部屋に呼ばれて言われたので、私は、


「もうファン辞めた」


と言った。


「はあ?」


「今日はごめん。もういいよ。ファン辞めたから」


「いやいや、ちょっと!!」


自分の部屋へ行こうとした私を引き止め、


「それじゃ分かんないでしょ!あんた最近変だよ?何があったの?」


と言われたので、泣きそうになりながら、話した。


「うーん、分かった」


と姉は言った。


「また何かあれば言いな。いつでも聞くから」


「うん」


私は、言いながら頷いて、自分の部屋に行った。


それから、○○の曲を聞かなくなり、音楽番組も見なくなった。

その後は、学校へ行き、クラスの子と話し、御飯を食べて、勉強して、お風呂入って、音楽以外のTVを見たり、面白そうな動画を見たり して日々を過ごした。


平凡で、良く言えば平和だったが、別の言い方をすれば精彩に欠けていた。


ある日学校から帰ると、


「恵、ちょうど良かった。牛乳買って来て」


と母に言われて、自転車で近くのスーパーまで行った。


夕方近くだったので、商品に値引きシールが貼られていた。


主婦達で混雑していた売り場から、値引き商品を見事に勝ち取り、お釣りでアイスでも買おうと思い、売り場へ向かうおうとすると、突然、周りの景色が鮮やかに彩られた。


私は、有線から流れてきた音楽に立ち止まらされたのだ。


温かくて柔らかなんだけど、どこか力強くて熱い・・・○○の歌声だった。

メロディーも歌詞も聞いた事が無くて初めてだったけど、それでも、何だか自分に寄り添ってくれてる感じがして、とても温かい気持ちになった。


初めてTVで見た時も、それまでただただボーッと見ていただけなのに、

○○が歌った瞬間に引き込まれ、気がついたら心が温かくなっていた。


私は、買い物カゴに牛乳を入れたまま、その曲が終わるまで、じっと聞き入り、曲が終わ ると、急いでレジに並び、アイスも買わずに家まで猛ダッシュした。


「おねーちゃーん!!!」


家に帰って、台所に牛乳をボンッ!と置き、急いで姉の部屋に行くなり叫んだ。


「多分、このアルバムに入ってるやつだよ」


笑顔で姉が、サイン入りの新品のCDを出してきた。


「これ?」


「あげる」


「え?」


と言うと、娘はもう一枚同じCDを出してきて。


「いつも聞く用と、保存用に二枚買っといたの」


「お姉ちゃん」


と泣きそうになった。


「ついでにシリアルで、ライブの抽選も二枚申し込んどいたから」


「ありがとう!!お姉ちゃん!!」


「今度御飯おごってね」


「うんうん!何でも奢る!!!」


と姉にハグした。



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