地下都市にて…
「なんで…、こーなるの…。」
教会では既に司祭が明と明菜を待って居た。
明姫のところに案内すると言われついて来た先はバチカンの地下都市…。
古都とは違い、迷路のように張り巡らされた古い石畳の通路をひたすら歩かされた明は今にも司祭を蹴り飛ばしたい気分になっている。
「陰陽師も祓魔師も地下組織だから…、地下都市を利用するのは当たり前なのよ。」
慣れてる明菜は地下通路を平気な顔で歩く。
悪魔祓いや他の儀式を人目に晒さない為にも地下都市は必要不可欠と言われても、現代っ子の明は電動キックボードくらい用意しとけとか考える。
ただ歩くだけはつまらない。
明菜に聞きたい事がたくさんある。
「ねぇ、ママ…。」
「なぁに?」
「なんで…、あの人と離婚したの?」
ポンコツになるからと言われれば、それまでだ。
明が見る限り、明菜はまだ悠一を愛してるし、悠一も同じはず…。
なのに、わざわざ悠一と離婚してまで明菜は明の前から姿を消した。
子供の明からすれば、全部が明のせいだと言われてる気分になる。
「悠一と初めて会った時ね…、今日みたいにママ…、変な男にナンパされてたの…。」
突然、現れた悠一がしつこいナンパ男を退けた。
明菜が昔話をする。
悠一が明菜のサポートに付いた事は聞いていた。
サポートである悠一はほとんど姿を見せず、明菜が嫌な思いをした時だけ、どこからともなく現れる。
「あの人…、女遊びが凄いでしょ?」
明が頷くとふふと明菜が笑う。
「でもね…、悠一から誘った女の子は一人も居ないのよ。相談に乗って欲しいとか、助けを求める女の子を放っておけないだけで…、悠一が構うと女の子が勘違いするだけなの…。だから浮気された事は一度もないの。」
「だったら…。」
離婚する必要は…。
明が言う前に明菜が答える。
「あの人…、他の人は平気なくせに、ママの前だと緊張してポンコツになるからよ。」
「それが原因?」
「だって、ポンコツのままだと明を守れないでしょ?」
笑顔で明菜が言う。
その笑顔に寂しさが滲んでる。
「やっぱり…、私の為…?」
「違うわ。自分達の為よ。明を失ったら、私と悠一の繋がりも消えてしまう。」
悠一が明に付いた黒い闇と戦いたいと言った。
戦う為の情報を少しでも手に入れる為に明菜が祓魔師として西洋へ渡った。
明姫の怒りを避ける為に離婚の決意をした。
幾らポンコツでも悠一は父親で、明菜は母親なんだと明の頭を撫でて来る。
「ママ…、ごめんなさい。」
「何が?」
「ママを信用が出来ないって言った事…。」
「言われても仕方ないよね。小さな明を置いて出て行ったダメな母親だもん。」
「ダメじゃないよ。」
「その言葉…、悠一にも言ってあげなさい。」
祓魔師になっても明と悠一の事は報告を受けていた明菜は明が悠一を毛嫌いする事が心配だと言う。
「悠一は…、親に虐待を受けて育ったの。能力のせいで気持ち悪い子だって家族に拒否されて来たのよ。」
明が知ってる悠一からは考えられない話だ。
「だから、悠一はママに嫌われるのが怖くてポンコツになるし、明に必要以上に構っちゃうの。」
「確かにそうだね。」
明の前に小石の一つでも落ちていたら、明が躓くかもしれないと小石を消滅させようとするのが悠一だ。
「家族に嫌われるのが怖くて、家族に傷一つ付けたくないのが悠一…、それを明が理解してあげて…。」
いづれ、明菜は悠一の元に帰るつもりだ。
ここは明が譲るべき…。
「わかった。ママも出来るだけ早く帰って来てね。」
「当然よ。」
立ち止まった明菜が明の頬にキスをする。
少しくすぐったいと明は思う。
いつかはポンコツをパパと呼んでやらねばならない。
そんな覚悟を明が決めた瞬間だった。




