凄く面倒臭い
「明さんだけついていらっしゃい。」
古都へ戻った明に明姫がそう言うので美里だけが忠と留守番という事になる。
(私もお爺さまと留守番の方がいいのに…。)
ガックリと項垂れる明は明姫が手配した園田兄が運転する車へと押し込まれる。
「弟は?」
園田兄が明姫に聞く。
「あちらの園田さんには適当な温泉で一泊して来なさいと言ってあるわ。」
「それは嬉しい事ですね…。」
兄が細い目を更に細めて笑う。
祓魔師に追われた園田弟は古都から遥かに離れた温泉まで祓魔師を引っ張ってるらしい。
今、明達の車の後ろには山崎の車がついて来てる。
「祓魔師が何故、この国に…。」
「その説明をする為に連れて来たのですよ。」
秘密が多い家族は会話すら謎だらけである。
車は古都の中心地へと向かい、とある建物の駐車場へと入っていく。
「ここは…。」
年代物の建物…。
レンガ造りで400年以上も前に建てられた3階建ての小さなビル。
明も何度かは来た事がある。
「陰陽局…。」
明がそう呟くと明姫はスタスタと歩き建物の中へと入ってしまう。
実際に明がこの建物に入るのは始めてだ。
表向きは水道管理局の管轄になってる建物。
その建物の古びたエレベーターへ明姫が迷う事なく乗り込むので明と悠一、山崎も無言のままついて行く。
古いエレベーターには突起型をした緊急停止スイッチが付いている。
そのスイッチを明姫が停止に切り替えるとエレベーター内の電源が落ち、非常灯へと切り替わる。
明姫が首に鎖で下げていた鍵を取り出し、エレベーターのコントロール版へ差し込むと、エレベーターへは再び電力が流れ出す。
この手間にどういう意味があるのかわからないのは明だけで悠一は表情を変えず、山崎がニヤニヤとする。
「これから、どうなるの?」
悔しいけど山崎に聞く。
「明ちゃんは初めて来たの?」
「そうよ。」
「本来なら、このエレベーターは1階から地上3階までにしか行かないよね。」
「うん…。」
「でも、この切り替え作業でエレベーターは地下3階へと行けるようになる。」
「地下3階なんかあるの?」
「そこから更に移動するけどねー。」
山崎が言うようにエレベーターを降りた先は長い廊下しかなかった。
その廊下の途中に警備員が居て、明姫が持つIDカードの確認をする。
「ご苦労さまです。」
確認が終わると警備員が明姫に敬礼してから通路の先にある扉を開けてくれる。
いよいよか…。
明の期待を裏切り、扉の向こうはまた通路…。
その先にあるのは近代的なエレベーター…。
「なんか…、凄く面倒臭い…。急いでる時とか…、絶対に嫌になりそう…。」
思わず本音が出る。
「現場対応が陰陽師の本質だからな。こんなところにわざわざ来る事なんか滅多にない。」
明姫が明を睨む中、悠一が明に説明をする。
「でも、業平は毎日出勤してるんでしょ?」
「平時はな。有事には現場入りしてるはず…。」
平和な時だけ使われる陰陽局…。
随分と無駄な経費が投入されているとしか思えない。
明達を乗せたエレベーターは地下3階から更に地下7階へと突き進む。
「ええー!?」
エレベーターを降りた先は再び通路…。
地下3階の倍の幅はあるが…、殺風景な長い通路にはそろそろうんざりとする。
「もう少しですよ。」
明姫が通路を進む。
またしてもゲートがある。
今度は無人。
明姫がIDカードをスキャナーに差し込むと、ゲートが左右に開き、倉庫の様な何も無い空間が現れる。
「だから…、何なの?ここは…。」
いい加減にしてくれと言う明に山崎が
「一応、シェルターになってるんだよ。万が一の厄災が起きた時は古都にある20箇所の秘密の入口から、ここへ避難が出来るようになってるって事。陰陽局がある都市だけのシェルターだけどねー。」
と答える。
万が一の厄災…。
それに陰陽師が対応出来ないレベルの鬼が出た時の対策として、数百年前から準備されているシェルター。
(陰陽師が対応出来ないレベルの厄災が来れば、シェルターなんか全く意味がないじゃん。)
古都の地下には無駄な地下都市が存在する。
そんな事は知りたくなかったと明は呆れるだけだった。




