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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
取り戻した日常
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護り子



「なるほど…。」


床の間をチラ見した青龍が呆れたように呟く。


「青龍様…、こちらへ。」


さっきまで業平が居た座卓の上座の席を業平が譲り明が居た下座へと回り込む。


「じゃあ…、私はお酒の用意を…。」


ここは逃げるが勝ちと明が立ち上がろうとする前に明の服は業平に掴まれて座らされる。


戸口に居た家政婦はもう居ない。

青龍の来訪はあっという間に屋敷中へ広まるだろう。


2人並んで正座する明と業平からは嫌な脂汗がダラダラと流れ出す。


「何があったか…、まず護り子の口から聞こうか?」


冷めた声がさらに冷たくなり明に突き刺さる。


「人界の都合ですので、私より業平が説明する方が…。」


そもそも、事の発端は陰陽局の視察計画から始まる。

そこは業平の領分であり明には関係ない。


「私は護り子の口からと言ったのだが…。」


更に、部屋の気温が下がる。


「…。」


またしても理不尽だ。

通常、明姫が留守の時は未成年である明でなく業平が当主代行を務める。

ならば今も当主代行は業平のはずなのに、目の前の神は未成年だろうがお構い無しに明を指名する。

結局、理不尽を泣きながら飲み込んだ明が掻い摘んで事を説明する。


蝦夷で起きた事…。

厄災級の鬼と対峙する事になった。

だから玄武を呼び出した。

明を守護する玄武は自ら帰ろうとはしなかった。


「鬼を払い…、玄武様は…、そのまま…。」


帰らぬ人に…。

いや、安倍家の床の間で美術品のように飾られる存在となっている。


「ふむ…。ならば何故、直ぐに白虎を呼ばぬ。」


青龍が目を細めて明を睨む。

家政婦が持って来たグラスと酒のボトルを青龍の前に置くと、そそくさと部屋から出る。


忘れてました…、とは絶対に言えない。

業平に助けを求める視線を送るが、頼りにならない業平が明から目を逸らす。


こいつ…、覚えてろ!


怒りだけが明の中で募る中、青龍がグラスに酒を注いで飲み始める。

青龍は蟒蛇だ。

幾ら呑んでも酔いはしない。


「何故かと聞いている…。」


早く答えろと明をせっつく青龍…。


「苦手なので…。」


としか言い様がない。

玄武と違い白虎は苦手だ。

四神の中で、一番年若い白虎は玄武に育てられた。

しかも、白虎は女体化を好む。


本来、神に性別など無い。

白虎は何故か年若い女型を好み、玄武が甘やかす明を異様に嫌う態度を貫く。


ブフッ…。


青龍が吹いた。


青龍は怖い。

されど玄武の次に明に甘いのも青龍だ。

今は酒の力も有り、ご機嫌はかなり良い。


「苦手か?」

「苦手です。」

「なら朱雀でも呼べばよかろう。」

「朱雀様だと動けない玄武様を雑に扱います。」


朱雀は大雑把な性格だ。

青龍と白虎は比較的に玄武を年長者として敬い立てるが乱暴な朱雀はどうでも良いと玄武をその辺に放り投げるタイプである。


「まあ、良かろう。しかし、今後の玄武殿はこちらで預かる事とする。」


いつまでも人界に玄武を置いたままには出来ない。

眠ってるとはいえ、玄武の土地への浄化能力は発動され続けている。

人が多い古都では玄武の目覚めに時間がかかると青龍が迎えに来たらしい。


「それよりも護り子よ。今回、我らが心配すべき問題はお前の(つがい)の方だ。」


青龍の瞳が真っ直ぐに業平の方へ向く。


「その番…、変えようとは思わぬのか?護り子よ。」


まさかの言葉に明よりも業平の方が狼狽える。

青龍が明に業平とは別れるべきと言い出すとは思ってもみなかった。


「お待ち下さい。青龍様…。」

「待たぬ。そもそも、護り子が鬼化した原因は番にあったのだろう?番のお前が護り子が鬼化する原因を作るとかあってはならぬ事だ。」


青龍の怒りが業平に向けられる。

部屋の中だというのに、ゴォッと突風が業平の顔へと吹き付ける。

四神の怒りに逆らえない業平は手と頭を床に付き、ひたすら平服するしかなかった。



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