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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
取り戻した日常
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美里の決意



「なぁ、美里…。もう寝たか?」


安倍家の客間に敷かれた2つの布団。

その片方に寝そべる楓が、隣りで静かに眠る美里へ声を掛ける。


「まだ、起きてますよ。」


美里の部屋は本来ならば明の部屋の隣りになるらしいが、まだ荷物の準備が出来てない為に客人扱いの楓と同室にして貰ってる。


「美里は、なんで陰陽師になろうとか思うんだ?実家に帰って神主の勉強をした方が良くないか?」


新の事件で陰陽局に不信感を抱く楓は美里に冷静な意見を求めてる。

年下で妹のような美里だが周りの状況を見てからしか行動しない控えめな美里は、猪突猛進の楓よりも何かと慎重に考えている。


ましてや人一倍、怖がりの美里…。

塾では一番、陰陽の勉強を嫌がっていた美里しか知らない楓からすれば美里の変化が気になる。


「楓ちゃんは塾に来たきっかけってなんでしたか?」

「きっかけ?うちは、あたしが馬鹿だから高校にすら行けないって通ってた中学校から言われてさ。でも塾でなら、高校卒業の扱いになるって言われて喜んで行って来いって親から放り出されたのが、きっかけだよ。」


美里が布団に座り直すから楓も起き上がって美里に向かって座り直す。


「おじいちゃんが子供の頃、私が住む町は地震が来て大きな津波に襲われたんです。」


津波は町の全てを飲み込んだ。

その時、町外れにあった美里の実家となる神社の前でその津波はピタリと止まった。

神社が祀る神が護ってくれたお陰だろう。


「一部の町の人は神社に避難してて助かりました。」


別に、神社は高台にあった訳でもなく避難した人はごく僅かしか居ない。


「もしも、私が陰陽の力を持つ立派な神主になれれば、厄災が起きた時に神社に避難する人がもっと増えるかもしれないって、おじいちゃんに言われて塾へ来たのが私のきっかけでした。」


なのに怖がりの美里は陰陽の力と向き合う事はせずに逃げ回ってばかりだった。


「陰陽局の人が…、新さんの事を厄災級の鬼だと言ってました。強い陰陽師である明さんや古澤先生は、その厄災に立ち向かえる人でした。だから私も厄災が来た時に立ち向かえる強さが欲しいと思ったのです。」


自分を恥じてる美里だった。

なんの為にわざわざ下宿までして陰陽塾へ入ったのかを悔やむ美里が今度こそは頑張りたいと願ってるのが、ずっと傍にいた楓にはわかる。


「そっか…、美里もちゃんと考えて決めたんだな。」

「業平さんは…、まだ少し苦手です。でも明さんや古澤先生なら信じられます。」

「山崎は?」

「ちょっと怖いけど…、明さんが居れば大丈夫ですよ。」


美里が両手の拳を握って気合いを入れる。

塾とは違い、安倍家の世話になれば、普通の学校へ通いながら陰陽の勉強も出来る。

至れり尽くせりの条件だと楓にもわかってはいるが…。


「楓ちゃんはどうしたいの?」


美里が明と同じ質問を楓にぶつけて来る。

どうしたいかがわからない。

小学校も中学校も家から遠く、通うのが面倒だとろくに行かなかった。


いつしか他の子が当たり前に出来る事が『頭が悪いから』という理由で出来ない自分に気がついた。

アイヌには文字という文化が無いと聞いて、アイヌの生き方をすれば頭が悪くても大丈夫だと開き直った。


美里とは違う意味で逃げ回って来た楓には、自分がどうしたいかすらわからなくなっている。


「ゆっくり…、考えればいいと思う。」


安倍家は楓を追い出したりしない。

楓に必要なら家庭教師でもなんでも付けてくれる。

至れり尽くせりが待つ未来に焦る必要は無いのだと美里が楓を慰める。


(私は…どうしたい?私にはヘブライの血が流れてると古澤が言っていた。)


美里が寝付くのを確認した楓は携帯のネットでヘブライの事を調べ出す。


(ヘブライ…、ゴーレム…。)


色々な情報は出て来るが、なんでも身体で経験しないと理解が出来ない楓…。

普段は使わない頭を必死に使ってみたものの、30分後には美里と同じように睡魔の手に堕ちていた。



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