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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
取り戻した日常
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結局は未解決事件



「まずは、白河 新について説明をしたい。君達が知ってる新という人物は存在しないという事がわかった。」


業平の言葉に楓が目付きを変える。


「存在しないってなんだよ!鬼だから、居なかった事にしろって意味かよ。」


楓を抑えるのが美里の役目。


「楓ちゃん…、落ち着いて…、最後まで話を聞こうよ。」


美里を妹のように思う楓が引き下がる。


白河 新は存在しない。

話は、とある夫婦の話から始まった。


夫婦は最初の子を流産で失ってる。

その後、なかなか子供には恵まれず不妊治療などを受けた記録は見つかった。

夫婦は信心深く、教会へ通う姿も目撃される。


「ここからは想像だ。夫婦は神に祈りでなく願いを捧げた可能性がある。」


業平が眉を顰めた。


契約が存在しない限り神は何もしてくれない。

基本、神は人を見守るだけの存在だ。

そんな神に人は祈りを捧げる。


無闇に願いを聞き届けるのは鬼だ。

いわゆる悪魔と呼ばれる者。

言葉巧みに人を唆し、願いを叶えるフリをして人に代償を払わせる。


「鬼が…、その夫婦に子供を与えたという事?」


冷静な明が確認すれば業平が頷く。


「子供が生まれた6日後、夫婦は全身を切り刻まれて出血多量で死んでいるのが発見されている。」


それが新の最初の犯行だと業平は言う。

まさか、生まれたばかりの赤子が犯人だとは誰も思わず、事件は未解決事件として闇へ消えた。


悪魔は無事に夫婦の魂を手に入れて、ほくそ笑んだのだろうと明は想像する。

新は生まれた時から悪魔付きの子だった。

そして両親を殺し、簡単に悪魔へ堕ちた。


「事件後、赤子は施設に入ったと思われていた。だが実際は何処の施設にもその赤子を受け入れたという記録が残って無い。」

「記録が無いって…。」

「出生記録すら届けられてない赤子だったからな。名前すら無い赤子は、そうやって世間から姿を消した。」

「なら、何故、塾に?」

「塾長の独断行為によるものだ。」


業平が怒りを露わにする。


塾長は陰陽局の人間。

つまり名家の出身。

ただし、能力はほとんどなく、塾長の正妻が産んだ2人の子供も全く能力の無い一般人だった。


「夫婦殺害の現場から消えた赤子を塾長が勝手に引き取り、赤子に白河 新という名前と嘘の家族の記録を捏造し与えたのだと思われる。」


塾長に悪魔の力を利用されるだけの為に…。

現実には存在しない存在として生きる事を新は塾長から強要されたのだ。


自由が欲しい。

自由になりたいと切望した新の言葉の重さが、明だけでなく美里や楓にものしかかる。


「だからって…、なんで新はあんな事をしたんだよっ!」


のしかかる重圧を跳ね除ける為に楓が叫ぶ。


「誰かに…、気付いて欲しかったんだよ。」


明がそう呟く。

新は誰かを殺す事で自分の存在を世界中に知らしめようとしただけだ。


人を殺してはいけないという概念は、生まれつき持つ本能とは違い親が与える価値観の一つである。


大昔、人喰いの風習がある未開の地では『罪人は殺して食べても構わない。』という価値観で育った子供が自分の子供にも同じ価値観を教えていた。


新には悪魔の力を利用しようとする塾長しか保護者が存在せず、塾長も自分に都合の悪い人間なら殺しても構わないと新に教えていたのだと痛感する。


「あの日、新君は塾長から…、視察に来た陰陽局の人間を殺せと言われたんだわ。」


明が悔しさから目に涙を浮かべる。

美里も同じように泣き、楓が怒りでテーブルを殴る。


「半分以上が推測になるが、それが今回の事件の全貌だろうと思われる。」


業平が言葉を締めくくる。

忠が新しいコーヒーを入れ直し皆に落ち着きを促す。


コーヒーを飲みながら山崎がふと呟く。


「…て事は、明ちゃんのお陰で今世紀の切り裂きジャック事件も未解決事件として終わるって事かぁ。」


これを聞いた明がコーヒーを吹き出す。


「わ…、私のせいじゃないもん。」

「でも…、明ちゃんのせいになるじゃん。切り裂きジャックは鬼だから陰陽師が祓って居なくなりました。めでたしめでたしなんて陰陽局は絶対に公表しないっしょ?」


業平がうんうんと頷く。


「ジャックザリッパーについては、陰陽局は何も知らない(てい)になる。」

「ちょ…、業平、あんまりじゃない。」

「じゃ、どうやって公表するんだよ?」


存在しない新は、やはり存在しないまま…。

明が泣こうが喚こうが、それは変わらない事実だと突きつけられるだけだった。



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