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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
自由気ままに
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許さない。

許さない。

許さない。


明の頭の中で別の明の声が木霊する。


殺してやる。

殺してやる。

殺してやる。


見開いた明の瞳から血の涙が流れ落ちる。


「そうだよ。明さん…、君は特別なんだ。君は僕と同じ…。僕と共に生きる事が許されてる存在なんだ。」


完全に鬼へと変貌を遂げた新がゲラゲラと笑い出す。


バチバチと光る赤い静電気が明を取り巻き出す。

大きな黒い瞳が赤色へと変わり、肩までの黒い髪が伸びて赤毛へと変化する。


「うわぁぁぁぁ…。」


我を失くした明が悲痛な声で泣き叫ぶ。

綺麗に整った歯に牙までもが生える。


「だめだ…、明…、そっちはだめなんだ。」

「ああぁぁぁぁ…。」

「行くなっ!明っ!」


意識が朦朧とするのを堪える業平が明へと呼びかける。

なのに業平の言葉が明へ届かない。

明の殺意が業平の言葉を上回る。


「グァァァ…。」


赤い髪を振り乱し、長くなった赤い爪で明が自分の髪を掻き毟る。


「畜生っ!玄武様っ!なんの為にこっち側へ来たんだよ!貴方の護り子が失われてもいいのかよっ!」


宙に向かって業平が叫んだ。


「お前さんら陰陽師は神使いが荒いわい!」


業平と明の2人を岩で出来た壁が取り囲む。

その岩から突き出た槍が新へ向かって放たれる。


「くっ…、玄武の力か…。」


大気を操り風を使う新には、土を司る玄武の技は苦手とする相手となる。

岩壁から無数に飛んで来る土の槍は新の作り出す大気までもを貫く勢いだ。


狭い塾長室ではやりづらいと判断した新が窓からグランドの方へと飛び出した。


壁の内側では暴走する明を抱えた業平が呆然とする。


「玄武…様?」


業平の目の前には、何故か半透明の小さな亀がふわふわと浮かんでる。

悠一の報告で玄武が明の守護に付いたとは聞いていた。

なのに明は玄武を伴わずに業平の前へ現れた。

やっと出て来た玄武は随分と中途半端な姿だと業平が愕然とする。


「お前さん…、儂が見えとるのか?」


亀が業平へ問う。


「玄武様…ですよね?」

「儂の声も聞こえてるようじゃな。これは儂の写し身じゃ。儂の本体は外で嬢ちゃんに頼まれた浄化を行ってる最中なんじゃ。」

「それは…、すみません。」

「しかし、お前さんは何者じゃ?」


玄武の本体はともかく、写し身や声は明にしか見えないし聞こえないはずだ。


「俺は…、多分…、明の(つがい)です。」


明が許す人間だけに明の能力の一部が移される。

その存在は番となり、明を支える存在となる者。

だから業平にも玄武が見えるし声も聞こえる。


ただ、業平は知らなかった。

明が業平を番として認めてくれてる事を…。

嬉しくて涙が出そうだと目元を拭う。


「ほー…、番とな…。随分と頼りない番じゃな。」


玄武の言葉に耳が痛い。


「俺は…。」

「番だと言うなら、何故、儂の護り子が鬼化しとる?完全に鬼に堕ちた時はわかっとるんじゃろな?」


明が完全に鬼に堕ちるには、明が人を殺す必要がある。

今の明は人として新を殺そうと怒りに我を失くしてる。

そして鬼に堕ちた明の番は人である業平でなく、鬼王である酒呑童子に取って代わる。


酒呑が明を手に入れれば、麒麟(きりん)…、つまり天帝をも凌ぐ力を手に入れる事となる。

そうならない為に安倍家は代々の陰陽師を犠牲にしてまで四神との護りの契約を望んだ。


麒麟と唯一対抗出来ると言われてる力は、この世界で四神しか持ち合わせていない。


「お前さんが本当に護り子の番だと言うのなら、今直ぐに嬢ちゃんを鬼から取り返せ。儂は外に居る若造の鬼の足止めをしてやる。」


玄武はそれだけを言うと姿を消す。

残された業平が苦しみに藻掻く明を抱き締める。

明の番として、やるべき事をしなければならない。

大きく息を吸い込んだ業平は、愛おしいげに明の顔を撫でてからゆっくりと明の口へと口付けをした。



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