繋がり
「海だぁ~。」
襟の大きな白いブラウスに水色のエプロン型のスカートを履いた美里がはしゃぐ。
黒でバックオープンスタイルになるタイトなワンピースを着こなす楓が美里の頭を押さえ付ける。
「少しは静かにしな。」
「楓ちゃん、言葉遣い…。」
「うるせえ、服が変わってもあたしはあたしだ。」
園田弟が運転する車の中は騒がしい。
一方、山崎が運転する車では…。
「せっかく美里ちゃんも明ちゃんも、いつもより可愛い格好してるのに…。」
悠一と新という男しか乗ってないと山崎がハンドルを握りながらシクシクと泣く。
「楓ちゃん、スタイルが良くて驚いたね~。」
のんびりと悠一が新へ話かける。
「僕もびっくりしましたよ。」
いつものヤンキースタイルしか知らない人は楓のワンピース姿に誰もが驚いた。
明も海に行くのならと紺色のキャミソールワンピースに白いジャケットを羽織り決まってはいたが、明のお洒落に見慣れてる分、楓のお洒落は衝撃的だったらしい。
「古澤先生は…、陰陽局の人だけじゃなく明さんも前から知ってるみたいですね。」
新が悠一を牽制する。
悠一は余裕の表情をしてる。
「古都、唯一の塾生だからね。しかも彼女は全国の塾生の中でもトップクラス。俺が教える必要のない塾生の事はある程度は調べるさ。」
「古澤先生が教える必要がない?」
「そう、あの子に俺達講師は必要がない。」
「なら、何故蝦夷に…。」
「それは陰陽局の奴らに聞け。」
悠一は新を観察するようにじっくりと見る。
新は悠一から目を逸らして窓の外を見た。
山ばかりだった狭い景色が海に変わり広がる。
園田弟が運転する車が停り、山崎も車を停める。
松林が広がる小さな島が無数に並ぶ海。
「松島や…、ああ松島や…。」
悠一が呟く。
「何それ?」
思わず明が聞いてしまう。
「天才と言われた俳句人があまりに美しい景色に見とれて俳句が歌えなかったと嫌味で言われた言葉さ。」
「嫌味なの?」
「大自然の中じゃ天才もちっぽけな人間って事。そう思うだろ?新君。」
いきなり悠一に言われて新が戸惑う。
「僕は…。」
「自然を操る事が出来ても、自然に抗う事は出来ん。」
悠一が新に何かを教えようとしてる。
「とりあえず飯っ!古澤先生が奢ってくれんだろ?」
テンションが高い楓と美里が悠一に手を振る。
「お~、食え食え。好きなだけ食え。それが若者の特権だぞ~。」
悠一が明の頭を軽くポンポンと叩いてから美里達の方へと向かう。
「明さんは牛タンバーガーが食べたかったんだよね?」
新が気を使って聞いて来る。
「ここでランチを食べたら、少し観光してから街に行く予定だからテイクアウトで買うよ。」
夕方には山へ戻る。
門限は夜の9時まで…。
買い物くらいはしたいと皆んなの意見を纏めた外出。
「行こう。」
新が爽やかな笑顔で明に手を差し出す。
自然と明も新の手を取る。
「2人とも早く~。」
手を繋いで歩く明と新に美里が手を振ってる。
新と恋をする気はない。
それでも新が明に何かを望んでる事だけは新の手から伝わって来る。
もし明が、この手を離せば新は明の前から消えてしまう気がする。
それを避ける為に悠一は新を見張ってる。
新が明に何を求めてるのか?
知りたい気はするが知りたくない気もした。




