操る者
「じゃあ、次はあたし…。」
美里に触発されたのか楓が一歩前へ出る。
そしてグランドにしゃがみ込む。
(ヤンキーが砂遊びしてる…。)
その場に居た全員がそう思った。
楓がヤンキー座りでグランドの土を山にする。
少し大きめの山と小さな山が出来上がる。
「頼むよ。」
楓が土を撫でて何かを呟いた。
辺りにモヤが立ち上る。
楓の隣に人型の何かが並び立つ。
もう一つの土山は宙へ飛び、ゆっくりと羽根を広げた後は楓の肩へと乗る。
「あれって…、熊?」
山崎が目を丸くする。
楓の肩にはフクロウが居る。
「カムイだよ。カムイッ!あのオッサン達…、好きなだけ痛め付けていいよっ!」
ニヤリと笑う楓が熊とフクロウに命令する。
「冗談じゃねぇよ。」
山崎が指を立てて構える。
悠一が札を出し熊とフクロウに向かって放つ。
呪戒札だ。
飛びかって来た熊とフクロウの額に悠一の札がベタりと張り付くと2体とも元の土塊に戻って崩れ落ちる。
「チッ…。」
ヤンキーが舌打ちする。
「楓ちゃん…。」
過激な楓を心配した美里がオロオロとする。
「君は蝦夷じゃなく蝦夷の子か?」
悠一がもう一枚の札を構えて楓に聞く。
「そうだよ。」
「血にヘブライが入ってるのか?」
「そんな昔話は知らない。」
「そうか…。」
悠一が札を収めてニヤニヤとする。
明にわかった事は楓がアイヌの血筋という事だけだ。
アイヌには妖も鬼も関係ない。
全てがカムイで神として考える。
その祖は未だわからず、アイヌ文化を継承する一族がアイヌ人だと言われてる。
(ヘブライの血…。)
楓が出したのは式神ではない。
楓にとってカムイ(神)だからと式神として出したのだろうが、あれはヘブライのゴーレムと同じ性質のもの。
古代ヘブライ人は農作業などを手伝わせたりと、自分達が使役する為の人型人形を土から作りだし、それを操る事に長けていた。
その土人形をヘブライのゴーレムと呼ぶ。
それを悠一に向かって、いきなりけしかけるとか信じられないと明は思う。
「次、誰かにこんな事すれば、君は危険人物として登録されて蝦夷の地には帰れなくなるぞ。」
明が口を開く前に悠一が楓を叱る。
「アンタが強いって聞いたから試しただけだよ。弱い人にはやらない。」
楓は開き直って答える。
「じゃ、次は白河君ね。」
山崎が新を指名する。
「僕は…、式神は出せません。」
「うん、大丈夫。今のところ古澤さん以外は誰も式神を出してないし、とりあえず君の能力を見せてくれる?」
楓のせいで空気がピリピリしてる。
「わかりました。」
新が深呼吸をしてグランドに立つ。
「少し離れてて下さい。」
そう言ってから、ふわりと両手を広げる。
明達は新から少し距離を取る。
新の周りの空気がゆっくりと回り出す。
「大気が…。」
山崎が呟いた。
新の周りを囲むように風がグルグルと回ってる。
「うむ…。」
悠一が札を一枚だけ新に向かって放つ。
楓のゴーレムに使った札と同じものだ。
もしも、新が何らかの術で大気を操ってる場合、悠一の札で止まるはず…。
なのに悠一が放った札は渦巻く風の中でビリビリと破れるだけで風は勢いを増していく。
「新君は窒息しないの?」
明が不安を声にする。
風はとんでもない勢いで回り続け、新の周りにあるもの全てを吹き飛ばしてるように見える。
風の中心に居る新の周りの空気も吹き飛ばされたるとすれば、術を使ってる新も危険だと思う。
「新君っ!もう止めてっ!」
これ以上は危険だと判断した明は、風の中心に向かって叫び続けた。




