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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
果てしなき旅へ
52/88

グランドにて



「講師の山崎(やまざき) 浩司(こうじ)でーす。浩ちゃんって呼んでくれていいよ~。」


明達4人が居た教室にやって来た悠一と山崎。

悠一は黙ったまま腕を組み、扉にもたれて立ってる。

塾生の警戒心を和らげる為に、中年男の悠一ではなく、チャラい山崎が仕切ってる感じがする。


「では、出席を取ります。白河 新君。」

「はい。」

「知里 楓さん。」

「…。」

「返事をしてくれないと、女子全員を楓ちゃんって呼んじゃうよ?」

「知里だよ。勝手に楓って呼ぶな。」

「つまり、君が知里さんね。じゃあ、兵法 美里さんは?」


山崎が、わざとらしく明と美里を見比べる。

真っ赤にした顔を背けた美里がもじもじしながら僅かに右手を上げる。


「じゃ、君が古都唯一の塾生、安倍 明さんね。」


大袈裟に山崎が明の顔を覗き込む。


(他人の意味、わかってんの?)


キッと明が山崎を睨む。

それが幸いしたのか、楓が


「いちいち、近付くんじゃねーよ。」


と明から山崎を引き剥がす。

楓の正義感が明との距離を縮めてくれる。

山崎には悪者になって貰えば、明も探り易いと思う。


塾生の敵扱いにされた山崎だが、そんな事はいちいち気に介さない質だからケロリとして教壇に立つ。


「最後に、こっちのおじさんは古澤 悠一先生ね。この人はやばいくらい強いから逆らわないよ~にね。」


悠一は敵に回すなと言いたいらしい。

明も出来るだけ悠一を見ないようにしてる。

明と一瞬でも目が合えば、悠一の顔が一気に緩む可能性があるからだ。

他人を演じる以上、それだけは避けたい。


「えーっと、知里さんと兵法さんは式神が作れるんだっけ?」


塾生の資料を見て山崎が聞く。


「なら、グランドに出るぞ。」


悠一が山崎を顎しゃくる。


「うん、俺らも皆んなの腕前が見たいからグランドに行こうか。」


手を叩き、教室から出ろと山崎が言う。


チッと舌打ちをするのは楓で、美里は相変わらずもじもじとするだけだ。


「行こうか。明さん。」


まだ塾内の地理に慣れてない明を新がエスコートしてくれるらしい。


「そうだね。グランドはあっち?」

「そっちは中庭、グランドはこっち。」


明と新が動けば、仕方ないと楓や美里も動き出す。


塾のグランドは異常と思えるくらいに広かった。


「凄い…。」


明が通うお嬢様学校では体育は重視されない為、グランドは狭い。

ただし、部活動にはお金をかける保護者が多く、部活専用のジムやらグランドやらは存在する。


そんなお嬢様学校とは違う意味で広いグランド。

まずグランドの端が見えない。

見えるのはグランドの向こうにそびえ立つ山脈だけだ。


「この学校、運動会とか部活とか無いのにグランドだけは何故か広いんだよ。」


新が眉をひそめて明に言う。


「そりゃ、そうだよ。ここは陰陽塾なんだよ。術を使う生徒が万が一に暴走してもいいように広いグランドを作るのは当たり前だよ。」


塾では当たり前の事を山崎が説明する。

一瞬、しまったと明は思う。

古都の塾も広いグランドがあるのかもしれない。

古都の塾は過疎で廃村になった村を利用してるとは聞いていたが、そんな広いグランドがあるとは聞いてない。


「はーい、皆さん、今から古澤先生がお手本を見せまーす。しっかり見て学んでねー。」


山崎が塾生の注意を引き、明の微妙な嘘はバレずに済んだとホッとする。


「んじゃ…。」


面倒臭そうに悠一が紙札を指先から出す。

いつ見ても手品みたいだと明は思う。


「ホイッ…。」


軽々と悠一が紙札を宙へ放つ。

ヒラヒラと舞い落ちた紙札は、何も無いはずのグランドであっという間に3人の女性へと変化した。



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