サポート
「どうかしたのか?」
森下をチラ見する明に業平が声をかけた。
「別に…。」
明の視線は舞台へと移動する。
広いラウンジにはテーブルが3つ。
舞台では船長が僅かな客に向かって長々と挨拶をしており、この後は食事をしながらオペラやジャズ、マジックを鑑賞する事になるらしい。
明達と悠一&山崎コンビ、隣のテーブルには陰陽局の女性陣をエスコートした忠と森下。
残りの陰陽局員が後ろのテーブルに居るが、そのメンバーはどうでも良い存在だ。
運転手の園田兄はこのくだらない茶番劇を辞退し、ルームサービスで食事を済ませると言っていた。
出来れば明も辞退したかったが立場上は許されない。
この船は明姫の手配。
祖母に恥をかかせるほど反抗的な孫でもない。
ただ、気になるのは一人だけ。
「あの浅桐って局員…、局員として大丈夫なの?」
上司である業平に聞く。
「浅桐は優秀な局員だ。」
おかしな秘書を使ってる業平が胸を張る。
身分を横文字にしたところで、優秀な人材になるとは限らないと明がガックリと項垂れる。
「明には何かが見えてるんだよ。あの局員からは微妙な気配がするからさ。」
悠一が明のフォローする。
見えなくとも悠一は感じてる。
「何か憑いてるって事か?」
悠一の言葉で業平が表情を変える。
打ち明けるべきか悩む明…。
「彼女のおばあちゃんでしょ?そんなに気にする必要はないんじゃない?」
明が言う前に山崎が口を挟む。
「山崎!?見えてんの?」
「あーゆーのはね。明ちゃんほどは見えないけど…。」
山崎の発言に明以上に驚いたのは業平だ。
「古澤さん、そろそろ彼の事を教えて貰えますか?」
山崎の正体を明かせと悠一に迫る。
「ん~、業平君はとっくに知ってるよね。山崎君は俺と同じ塾の子だよ。」
今更、なんだと悠一が面倒臭そうに答える。
「塾に…、アレが見える人間が居るのは初耳よ。」
明が険しい顔で悠一に言う。
この世で見えるのは明だけ…。
ずっと、そう言われ続けて来たのに、今更、見える人間が他にも居るとか有り得ない。
陰陽師は異能を持つ。
それは代々、血縁だけに受け継がれる能力だったが、血が混ざり過ぎた為か近年は血族であっても能力のない者が増えている。
それ故に、異能者が出ないまま陰陽師とは別世界で生きる事となった名家も少なくはない。
その代わりに、全く関係のない一般家庭で異能者が生まれ出した。
決して数は多くない。
昔から、国内でも海外でも異能者に対する研究施設は存在した。
主にESPなどに対する研究が目的とされているが、実際に摩訶不思議な能力を発動する人間は存在しない。
ただ、陰陽師としての能力は少し違う。
子供の頃に、存在しないお友達と遊んだりする子が陰陽師としての能力を持っているパターンがある。
無意識下で妖が見える、もしくは式神を作り出してる可能性があり、局はそういう子の能力適正を調べて一般人と陰陽師に振り分ける。
塾は、そんな異能者の為の施設。
悠一はそんな施設で陰陽の何たるかを学んだ一般人。
明や業平達と違うのは、塾ではあくまでも基礎しか教えてないという部分が存在する。
陰陽師は血族だけの秘術があり、例え安倍家であっても他の名家の秘術までは知りようがないのが普通だ。
悠一は、塾の中でも特別な存在だった。
だから明菜のサポートとして行動する事が許された挙句に明という娘まで成してしまった。
そんな悠一が今度は山崎を明のサポートに付けようとしている。
「お婆さまはご存知なの?」
悠一の勝手な行動を明が牽制する。
「婆さんは知ってるさ。爺さんもな。あくまでも選ぶ権利は明にあるという前提だけどね。」
悠一の言葉に明だけが驚きが隠せない。
「山崎君は優秀だよ~。しかも明と同じモノが見える。これってポイント高いよねぇ。」
ニヤニヤする悠一の顔にシャンパンをぶっかけてやりたいとか明は思う。
私はごく普通に恋をして結婚したいのよ。
出来れば、それが業平でありたいと明は願う。
業平の為にも悠一の話に顔色一つ変えない山崎とは距離を置こうと顔を背けた明だった。




