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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
明(あきら)という少女
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廃工場



「あらら…、通行止めだ。」


山崎が車を停めた。

廃工場がある川沿いの一本道…。

それ以外の道は無いというのに、道には制服の警官が二人立ち、規制線が張られてる。


「迂回をお願いします。」


運転席を覗き込む警官が早く車をどけろと運転手である山崎に命令する。


規制線の手前に橋がある。


「どうします?」


山崎が悠一に聞く。


「橋を渡ったところで俺と明だけ降ろしてくれ。山崎は遥さんと待機だ。」


声のトーンを一段と落として悠一が答える。


(こういう判断は相変わらず早い。)


悠一がふざけてない時は、結構不味い状況なのだと明は知っている。


悠一と二人で車を降り、規制線が張られてない対岸側の道を歩く。

川幅は10m以上あり、河川敷を入れると、かなりの距離になるというのに、問題の廃工場が見える範囲では、うじゃうじゃと野次馬が集まりつつある。


「あれが問題の廃工場か…。」


野次馬に紛れて悠一が呟く。

工場の入り口にミニカーサイズのパトカーが3台ほど見える。

他にも鑑識用の大型車や、刑事用の覆面まで、それなりの車が停まってる。


悠一がジャケットの内ポケットからオペラグラスを出して明に渡す。

それを受け取った明は人混みの隙間からオペラグラスで廃工場の中を確認する。


探偵を名乗るだけあって悠一は小道具の準備に抜かりがないと関心する。


刑事が4人…。

鑑識が多数…。

廃工場の管理の人間らしい人物が刑事と話をしてる。

それにもう現役とは思えない、かなり高齢の警備員。


「…!?」


思わずオペラグラスを下げて回れ右をする。


有り得ない話だが、オペラグラス越しの明と目線を合わせた人間が居る。


「局の人間が来てる。」


小声で悠一に伝えると、頷いた悠一が人目から明を遠ざけるように明の肩を抱いて歩き出す。


局の人間とは陰陽局から来た人間を意味する。

陰陽局は公安の1セクション扱いだ。

本来の陰陽師は占い師とさほど変わりない存在だった。

だが、ある時を境にして陰陽師の中に特殊な能力を持つ異能者が生まれだした。

異能者を野放しにすれば国に悪影響を起こす。

ならば公安で管理しようと、局を作り、職員に異能者である陰陽師を雇ってる。


明もいずれは、その陰陽局の職員となる。

だから、そこそこ普通の成績を取れば大学も国家公務員試験もフリーパスが約束されている。


そんな陰陽局の人間が、わざわざ一般女性が行方不明になったと云われる廃工場跡に来てる。


面倒なのは、そいつが悠一と同じで明の居場所を感じる事が出来る奴だという事。


「買い物に行く…。送ってくれる?」

「パパがなんでも買ってあげる。」


仲良くはないが仲良し親子のフリをして、いち早く現場から立ち去る。


(もう依頼人のお友達とやらは、この世に居ない。)


明も悠一も同じ考えだ。

陰陽局の人間が居るというだけで、その事実だけはハッキリとした。


後は、依頼人にどう納得してもらうかだ。

わざわざ悠一が説明しなくとも、明日には依頼人の耳にお友達の現状が警察から伝わるだろう。


結局、お友達を探して欲しいという依頼は果たせず、今日の悠一はタダ働きになったなと、娘と買い物が出来ると浮かれてる悠一を明は生暖かい目で眺め続けた。



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