バリケード
「ねぇ、明。山崎君って酷くない?明のパパを置いて行こうとするんだよ。それって本当に酷いよね?」
車の中で必死に明に同意を求めようとする悠一だが明も山崎の共犯である以上、ここはスルーである。
「この車、どうしたの?」
運転手である園田兄へと聞いてみる。
いつもの黒塗り高級車が、何故か灰がかった緑色のジープに代わってる。
「申し訳ございません。この島では舗装された道路が海岸線だけで、他への移動は全て地道になると聞きましたので、勝手ながらホテルでリースしている車に変更させて頂きました。」
別に車なんか乗れれば何でも良いと明は思うのに園田兄はかなり律儀な人間らしく、明に親切丁寧な弁明をする。
あれからホテルに戻り車での移動へ切り替えた。
居留地まではジャングルのような森を抜ければ20分で着くと言われたが、それは獣道レベルで居留地の人間が町へ降りて来る時に使われる道らしい。
車で行くようなルートだと森を迂回するうえに舗装されてない地道を走る為、1時間以上はかかる。
『ジャングルを抜けるなら、分厚い靴下を二重で履いて鉈を持って歩くといいよ。』
親指を立ててGoodを示すバーテンダーが、そんな言い方をしたので明達は車での迂回ルートを選んだのだ。
「海岸線以外は、マジ未開の地だよね。」
さっきからジャングルの景色しか見てないと山崎が嫌そうに顔を歪める。
轍が出来た道には所々に泥濘が有り、車は思うようには進まない。
しばらくすると園田兄らしくない急ブレーキが踏まれ車はガクンと揺れて停る。
道にバリケードがしてあり、その両サイドにライフル銃を抱えた男が2人立っている。
1人は中年、もう1人はまだ若い。
「何もない島にしちゃ物騒だよね。」
山崎が警戒してる。
表情を変える事なく男に向かって手を振るのは悠一。
中年の方の男がライフル銃を地面を置くと、ゆっくりと車に近付き悠一と会話をする。
若い男はライフル銃を抱いたままで、こちらがおかしな動きをすれば攻撃して来るつもりだ。
『こんな場所へ何しに来た。』
『この先の町に凄い占い師が居るって海岸にあるBARで聞いてね。娘が占って欲しいと言うから来たんだよ。』
『残念だったな。占いは予約が必要なんだ。それに今日は安息日だから誰も町には入れない。』
『そりゃ、残念だ。その占いってのは見学だけでも出来ないのか?』
『アンタが占って貰う時はギャラリーに自分の悩みを聞かせたいかい?』
『プライバシーの侵害だな。了解、町には安息日じゃなければ入れるのか?』
『ああ、アンタ達は何処に泊まってる?』
『海岸沿いのホテルだよ。』
『なら、そのホテルで居留地の見学をしたいと申し込みをしてくれ。この町は余所者にはあまり良い顔しない連中ばかりだからな。』
『了解、了解。ホテルで予約してから来るよ。』
男が車から離れたのを確認した園田兄がゆっくりと車をUターンさせて元の道を引き返す。
「安息日だって?」
山崎が不満をぶちまける。
「先住民の居留地が西洋の宗教の暦を使ってるって変な話よね。」
山崎の意見に明も同意する。
余所者嫌いの先住民が外から来た西洋文化は受け入れてるとか怪し過ぎる。
しかも、ライフル銃を使ってまで人を入れたくない先住民を代表する宗教的指導者が観光客には占いをするとか矛盾点が多過ぎる。
「明日、爺さんの友人とか言う教授に会えば、もっと見えて来るだろうさ。」
これ以上は探りようがないと悠一はパナマ帽を目深に被り腕と脚を組んで昼寝する姿勢へと変わっていた。




