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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
明、南の島へ(前編)
30/88

ランチタイム



「何?顔が赤いよ。明ちゃん。」


目敏い山崎が明の顔を覗き込む。


今は忠の部屋で忠が用意したランチを皆んなで食べるところだ。


「私の事はどうでもいいから、そろそろ、この島に来た理由を説明して。」


山崎にシッシッと手払いして明が忠に話を促す。


「私の話をする前に、まずは陰陽局の話が先だね。」


忠は業平の話が先だと言うが業平は数十分前の出来事からまだ立ち直れないらしく惚けてて話にならない。


「業平様に代わって私がお話致しますわ。」


明を殺したいくらいの勢いで睨む由利香が部屋に居た人間の前へとしゃしゃり出る。


話は島から行方不明者が出るところから始まった。


「この1年だけでも8人の女性が、この島で行方不明になってます。」


過去に遡れば100人近い人数になる。


「それだけの人が消えて騒ぎになってないのは何故?」

「元々、訪れる観光客はかなり限られてるし、行方不明者の国籍がバラバラだった為、各国が事件に気付いたのは3ヶ月前なのよ。」


とりあえず直近1年分の被害者の資料だけが用意されている。


金髪に赤毛…。

白人、黒人、スパニッシュ系にアジア系。


比較的健康的な20代の若い女性という事しか共通点も見当たらない。

普通に海外で起きた事件だから公安が出動するのは間違いではない。


「なら、陰陽局が出る理由は?」


明の問に由利香が胸を揺らし鼻を鳴らす。


「業平様が言ったでしょ。これは鬼絡みの事件で鬼斬りが必要なんだと。」


業平に必要なのは由利香であって明の出番はないと言いたいらしい。


「これが鬼絡みだという根拠は?」


山崎が明を庇うようにして聞く。


「既に容疑者が居るからよ。森下(もりした) 貴一朗(きいちろう)。この島に滞在する唯一の外国人で、彼が滞在した頃から行方不明者が出始めてるわ。」


容疑者は鬼…。

由利香は、その鬼退治をすれば今回の仕事は終わりだと考えている。


「ちょっと待って、森下って…、あの森下教授の事?」


明は容疑者に心当たりがある。


「それについては私が話そう。貴一朗は私の友人なのだからね。」


明の疑問に忠が答える番となる。


「明も知っていると思うが、貴一朗は民俗学の研究者で大学で教授まで勤めてあげた人物だ。教授を辞めてからは趣味である鬼の研究を続け、鬼に関する著書なら国内で一番多く出してるはず…。」


当然、その手の著書は明の愛読書である。


「その教授が何故、鬼に?」

「陰陽局は研究のし過ぎで鬼に堕ちたとの見解だ。しかし、私はそうは思ってない。ひと月ほど前に貴一朗から私に助けを求めて来たからね。」

「お爺さまと森下教授の関係は?」

「学生時代の悪友だ。彼が民俗学にハマったのは私が原因だと思う。」


忠の周りで起きる不思議な出来事。

それを知りたいと研究した友人。

その友人が研究しただけで鬼に堕ちると考えるのはあまりにも単純過ぎる話だ。


「そもそも、森下教授が容疑者になる理由は?」


嫌いな由利香ではあるが、出来るだけ陰陽局が掴んでる情報は引き出しておきたい。


「最後の被害者は、佐久間(さくま) 智恵美(ちえみ)。28歳で結婚を目前にしていた女性なの。彼女は学生時代に民俗学を専攻してて森下教授とは元々の面識があったわ。突然、友人に結婚前の最後の旅行に行きたいと言い、わざわざこの島を選び、一緒に来た友人には『会いたい人が居る。』とだけ言い残して失踪したのよ。」


それが3ヶ月前に起きた事件。

以降は行方不明者が出ていない。

それだけで鬼と決め付けるのは早計である。


「お爺さま…。」

「明日、貴一朗のところへ行こうと思う。」


明が森下と会えば鬼かどうか判断が出来る。

今は、まだ情報が少な過ぎる。

被害者、智恵美の足取りを手繰る為、ランチを終えた明達は島見学をする事となった。



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