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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
明、南の島へ(前編)
27/88

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「ねぇ…。」


あれから何分経ったのだろう。

頭の中で、必死に数えた羊は既に3000匹を超えた。

耳元で明の吐息とかすれた声がする。


「え?」


自分でも間の抜けた返事をしたと思う。


「自分のコンパートメントに帰って…。」


低く冷たい声…。

業平は知っている。

これは、いつもなら明が悠一に向ける態度だ。


「あ…、ああ…。」


懐に抱きかかえていた明を手放し、慌てふためいて明のコンパートメントから逃げ出した。


「やっちまった…。」


自分のコンパートメントに戻った業平は、ひたすら自己嫌悪に陥る。


業平が焦ったのは山崎だけのせいではない。


『せっかくの小旅行ですから、業平さんは早く明をモノにして来なさい。必要なら契るくらいの覚悟で明を手に入れても当家には全く問題はありませんよ。』


安倍家を出る時に明姫に言われたそんな言葉が業平の頭の中でグルグルと駆け巡る。


契って来いとか言われても明はまだ高校生…。

迂闊に手を出せば業平の方が明本人から犯罪者扱いをされかねない。


せめて高校を卒業するまでと我慢を続けた紳士の業平なのに、あまりにも不甲斐ない男だと誰もが責める。

特に、明姫からのプレッシャーが半端ない。


数多の女を失神させて来たエンジェルラダー業平…。

その実、許嫁の明を除けば、恋人居ない歴が自分の年齢であり、女性経験など以ての外という清廉潔白な男である。


「次こそは…。」


明に自分の気持ちだけでも伝えたい。

なんなら、お友達からでも構わない。

明に業平という男が居る事を理解して欲しいと実に小さな野望を胸に抱く業平だった。


翌朝…。


「キャシー、またねー。シー・ユー。」


金髪のアテンダントに手を振る悠一。

それを横目で見る明は


(また馬鹿親父のアドレスにキャサリンという新たな女の名が追加されたんだ。)


と考える。


何故、母はこんな男を選んだのだろう?

女にも私生活にもだらしない父親。

明が悠一を嫌う理由は、その一点に限る。


「業平様、夕べはゆっくりと休まれましたか?」


由利香が業平の肩に寄り添いシナを作る様も目に入る。

業平は由利香をスルーしてるが、明から見れば業平が悠一と重なって見える。


「明ちゃん、眠れた?俺は明ちゃんに追い出されてエコノミー症候群になりそうだったよ~。」


背後から明に抱きついた山崎が甘える。


「エコノミーって、アンタも一応はビジネスクラスだったでしょ!」


悠一のオマケで来てる身分のくせに贅沢を言う山崎を振り払って答える明…。


「早く広いベッドで明ちゃんと寝たい。」

「教師のくせに学生に手を出す気?」

「教師なんか一学期だけのアルバイト♡そんなの明ちゃんの恋人になれるなら、今すぐにでも辞めるよ。」

「アンタなんかお断りよ。」

「その冷たさが可愛いね。」


一瞬、ドキリとする。

可愛いなんて業平からは言われた事がない。

他の女とベタベタしてる業平より、山崎の方が明を乙女として、ときめかせて来る。


「明、そろそろ行こう。」


山崎から明を引き離したのは忠だ。

空港前に待つ車に明達の荷物が乗ったらしい。

飛行機から降りた先は、それなりに南国の島という雰囲気が出てる。

この島から、更に船で小さな島へ向かう事になるので空港から港までを車で移動する事になる。


車は陰陽局から用意されたもの…。

南国の島に似合わない黒塗りの高級車が3台も停まってる。


後部座席に明と忠、助手席に業平、運転手には見覚えのある顔がある。


「園田さん?」


明が尋ねると


「兄の方です。ご旅行中の忠様の運転手として明姫様より言い使っておりますので…。」


と園田兄が答える。


忠の為に運転手まで用意してる明姫は凄いと思う。

この旅行中に園田兄と弟の違いを見極めたいと密かに考える明だった。



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