平和な三者面談
「花蓮!しっかりしなさい!か~れ~ん!」
学園の中央ロータリーで叫ぶ花蓮の父親...。
小肥りで団子鼻...、花蓮にそっくりだと明は思う。
(だから、娘の整形はしないのか...。)
つまらない事を納得した明は、目の前に居る狼狽えた男に冷たい視線を浴びせる。
今日は三者面談...。
忠のお陰でつつがなく事は進んだはずだった。
高校生活、初めてのまともな三者面談...。
長老は始終、笑顔を絶やさずに
『大学は国公立受験という事で外部進学の希望、それで問題はないですね。』
と本来なら1年生の段階で決まってしまう事の確認を頑張ってくれていた。
明の卒業と同時に定年、最期の担任。
その最後を受け持つ生徒から国公立志願者が出る事は教師として有終の美を飾るに相応しいと考えているのだろう。
和やかに終わった三者面談。
『一緒にお昼ご飯でも食べに行こうか?』
久しぶりに祖父から誘われたランチ。
三者面談の時間が早かった事もあり、祖父が無事に学園へ来るまでは、気が気でなかった明は昼食もろくに食べていない。
ご機嫌な1日になるはずだった。
園田が待つロータリーに来るまでは...。
「明...。」
花蓮を失神させた男が情けない声を出す。
理由はわからないが、園田の代わりに業平が忠と明を迎えに来た事だけはわかる。
明の姿を見つけた業平が車から降りた瞬間、花蓮を含む数人の女生徒とその保護者の一部がホゥッと生暖かい吐息を吐き出して失神した。
「業平、車に乗れ...。」
「しかし...。」
「いいから、早く乗れっ!」
これ以上の被害が拡大する前に問題の業平を隔離するのが先だ。
騒ぎでお局教師達が
「どうしましたか!?」
と駆け付け始めてる。
「安倍さん、一体これは...。」
ロータリー付近で倒れてる学生を見たお局が明に問う。
「申し訳ございません。私が来た時には、この状況でしたので、何が何やら...。」
勝手に失神したのだ。
こちらに責任はない。
「そうですか...。」
「あの...、急ぐので帰って宜しいでしょうか?祖父も疲れてますし...。」
「ええ、気を付けて下さいね。ごきげんよう。」
「ごきげんよう。」
そそくさと忠を車の後部座席に放り込み、明は助手席へと乗り込む。
運転手の業平をひと睨みし
「さっさと車を出して!」
と命令する。
「わ...、わかった...。」
ひたすら狼狽えるだけの業平だが、明日には学園の出禁が決定するだろう。
(今年も失神記録を更新するとわかってたら、三者面談は業平でも良かったんじゃないの?)
迷惑なセクシービームをむやみに放つ業平にムカつく。
「大体、なんで業平が来るのよ!」
騒ぎにならぬよう忠に来てもらったのに...。
忠は、やれやれと苦笑いを業平に向ける。
「古澤さんが北山を占拠したんだよ。」
情けない声で業平が説明する。
「占拠?」
「占拠、北山に完全結界を張ったんだ。今は誰も北山には近付けない。」
「なんで?」
「目撃者の話だと『明の為の天狗狩り♡』とだけ言い残して、あの山崎という男と山中へ消えた。」
なんて迷惑なだけの父親なんだと、車内に居た全員でため息を吐く。
(あの馬鹿親父をぶちのめす。)
平和な三者面談を破壊した元凶を絶対に許さないと明は拳を握りしめた。




