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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
明の学園生活
14/88

北山の噂


「明様、大丈夫?随分とお顔の色が悪いわ。」


教員室から戻った明を心配するのは理子だ。


「あ~ら、また保健室に行ってから早退でもなさるのかしら?明様ほど優秀な生徒になれば、わざわざ学校に来るだけ時間の無駄な気がしますわね。」


背後からは花蓮の嫌味が飛んで来る。

実際、何かと多忙なお嬢様達は自宅で家庭教師を付けてる場合が多く、この学園では出席日数が足りない学生でも成績が基準を超えれば問題はないとし卒業させてもらえる。


山崎の件といい、三者面談の件といい、何かと頭が痛い今日の明は花蓮の嫌味に付き合う気はない。


どうにか花蓮をやり過ごし、ようやく昼休みの時間となる。


(今日は1日がやたらと長い...。)


ぐったりとする明を囲むように、理子を含む3人の学生がお弁当を広げる。


学園には、一流レストラン並のメニューが並ぶ学生食堂が存在するが、老舗の料亭や旅館などの跡取りお嬢様達は自炊を好み、自弁を持って来るのが当たり前だ。


花蓮のような成り上がりの学生だけが、もっぱら高いだけの食堂へと行きたがる為、昼休みは明もお弁当を持って来た方が平和にランチを楽しめる。


「ねぇ...、もう聞いた?北山の噂...。」


噂好きの豪徳寺(ごうとくじ) 今日子(きょうこ)が声を潜めて話し出す。

彼女は老舗料亭の次期女将候補。

既に料亭で修行という名のアルバイトを始めてるお陰でお店に来るお客様からの噂話をあれやこれやと学校へ持ち込んで来る。


「北山って...、森林公園がある、あの山の?」


噂話に喰いつくのは理子だ。

小さな顔に付いた大きな目をキラキラとさせて話の続きを期待してるのが一目瞭然の理子。


物静かだが、ちゃっかり聞き耳を立てるのが柳澤(やなぎさわ) (すず)と明の2人。


「うん、その山の麓の町に...、夜な夜な天狗が出るって噂になってるのよ。」

「天狗?」

「そう...、真夜中に奇っ怪な悲鳴が聞こえたから、ご近所の人が何事かと見に行ったら、道には大きな黒い鳥の羽根だけが落ちてて、バサバサと翼が羽ばたく音がしたんだって...。」

「それで...、その人は天狗を見たの?」

「暗くて、よくは見えなかったらしいけど...、とにかく大きな翼だけは見えたって...、その翼の大きさなら、天狗じゃないかって噂になってるのよ。」


目撃情報では翼を広げた大きさが5m以上はあったらしい。

落ちてた羽根も50cm以上の長さがある。

だとすれば全長で2mはある巨大鳥となるが、古都ではそんな野生の巨大鳥は存在しない。


「どこかの動物園から逃げた鳥とか?」

「それらしいニュースも無いらしいの。」

「じゃあ、本当に天狗?」


動物園自体が無い古都...。

雅な都に獣の匂いが漂うのはお断りだと考える住民が多い為、かろうじて『ふれあい動物園』程度のプチ動物園が北山の山頂にある森林公園に存在するくらいだ。


その、ふれあい動物園に居るのは、兎やモルモット、後は乳絞り体験用のヤギや牛...。


残念なのは、同じ敷地に『手作りチーズとソーセージを作る体験が出来る館』があり、動物との触れ合いを体験した後に、動物の腸に肉詰めをする体験が出来てしまうという部分だろう。


その北山には、明も業平とお花見で行ったばかり...。

今日のお弁当のソーセージは、その北山の山頂にあるお土産店で悠一に買わせたもの。

明達に勝手に付いて来たあげく、のどかな森林公園の片隅でうじうじといじける悠一にお土産を買うという大役を与えて機嫌を取った結果の戦利品である。


(天狗か...。)


この噂が鬼の話なら、喜んで北山に行く。


天狗には全く興味が湧かない明は、教室に戻って来た花蓮とそのお取り巻きとは目を合わせないようにするだけで精一杯の昼休みだった。



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