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徒然なるままに陰陽師  作者: Noise
明の学園生活
13/88

長老



「やぁ…、安倍さん、わざわざ呼び立てて...、すまないねぇ。」


教員室に入ると震えた手で湯呑みを握りしめてるヨボヨボの老人が明に声を掛けて来る。


現国の山口先生…。

この学園の最長老と呼ばれる爺様だ。

高校では、1年生の時から、この先生が明の担任を務めてくれている。


学園には職員室とは別に科目ごとの教員室がある。

短い休み時間など、わざわざ遠い職員室に行くよりも、近くの教員室に行く方が先生を捕まえやすい仕組みになっている。


古典と現国は同じ教員室を使ってる。

古典のアルバイト山崎が現国の山口の向かい側にあるデスクに着いたのを確認すると、山口は明に椅子を勧めて座らせる。


「ご用はなんでしょうか?」


お嬢様らしく、姿勢を正した明がすました顔で問う。


「うん、来週から始まる三者面談について相談したくてねぇ…。」


老人がため息混じりで明に言う。


(ははは…、三者面談...。)


思わず、明の目が泳いだ。

基本、明の三者面談など、やる必要がない。

入りたい大学には全国のどこにでも入れる。

これは専門学校であっても同じ事。

ただし、お嬢様校である、この学園から専門学校に行く子はほとんど居ない。


理子ならば、実家の和菓子店の為に製菓の専門学校を希望する事もあるだろうが、基本はエスカレーターで短大まで卒業してから専門学校に入り直すのが通常になる。


そんなこんなで就職を選ぶ事も選択肢に含まれないのだから、形だけの進路決定をする三者面談に明の担任が悩む必要などないはずなのに...。


「そのぉ…、安倍さんのぉ...、保護者...、今年はどなたが来られるのか...、前もって聞いておきたいというか...、そのぉ...、心の準備が必要というか...。」


カタカタと震える手で持ったハンカチを使って、最長老が額に流れる冷や汗を拭く。


「えーっと...、今年は...、まだ...、決めてません。」


長老から目を逸らす。


一昨年は、祖母の明姫(あきひ)に来てもらった。

なのに、悠一が明の父親は自分であると学園に乗り込んで来たからおかしな事になる。


老い先短いと思われる担任の前でハブ対マングースの危険な戦いが始まった。


『明の保護者として、父親として...、私は明の意思を尊重した進路を希望してます。』


明姫の言いなりにはならないとマングースが立ち上がり、先制攻撃を仕掛ける。


『悠一さん...、貴方に明の親権はありませんよ。つまり明の学園生活や進路に口出しする権利はありません。これ以上のお話をなさるつもりならば代理人を通じて頂けるかしら?』


ハブはマングースの喉元を食い破り、マングースは真っ白になって燃え尽きたのだった。


以来、悠一は保護者では無いという理由から学園への出禁を喰らい、学園の外で明を待ち伏せするようになる。


(頭が痛い...。)


一昨年の残像を振り払う。


しかし、去年の惨劇を思い起こすと、頭だけでなくお腹まで痛くなって来る。


去年の三者面談は...、明姫が陰陽局へ行く必要が出たと、明姫の代わりに業平が来たからだ。


業平は長老にひたすら頭を下げるだけだった。

理由は、業平がロータリーで車を降りた途端、失神する女子生徒が多数発生した為だ。

被害は学生だけに及ばす、その保護者にも影響した。


帰って明姫に三者面談の結果を報告すると


『あら、久しぶりに業平さんの失神記録が更新されたのね。』


と明姫が言う。

業平は首都に居た幼稚園から高校まで、古都では大学で、数多の女子生徒や教員を失神させて来た記録があるらしい。


(そんな無意味な記録を伸ばすな!)


今年も業平だと記録がまた更新される。


「今夜...、祖母に相談します。」


かろうじて、そう担任に伝えると、魂の抜けた明はフラフラと教員室を退室した。



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