解決
2日後…。
廃工場から川沿いを上流へと登ったところにある、産婦人科の女医が逮捕されたと小さなニュースが流れた。
女医が起こした猟奇的な事件の内容は一切報道されずに終わった。
とある三流の週刊誌が面白おかしく猟奇的な部分を強調し暴露する記事を書いたが、そもそもが信用のない週刊誌なので誰も話題にはしない。
女医は医学部の学生時代に
『肝試しに行こう。』
と言う数人の男子学生達に、廃墟ホテルで集団レイプを受けた。
医者になるという輝かしい将来を諦める事が出来ず、警察にも届ける事すら出来なかったレイプ事件…。
このレイプ事件で不幸な女医は妊娠した。
しかし、父親が誰かもわからず、堕胎し、妊娠すら出来ない身体にまでされてしまった。
不妊になった女医は念願の産婦人科医になるものの、婚約者にも捨てられ、自分の人生を呪うようになる。
そして鬼と化した女医は、ふざけて廃墟で肝試しをするような軽率な女性には子宮など必要ないと考える。
悪気は更なる悪気を呼び、女医は鬼となる。
自分は悪くない。
悪いのは全て軽率な女なのだ。
そんな考えに支配され被害者を襲い続けた鬼は陰陽局での取り調べでも高らかに笑いながら
『自分を大切にしない馬鹿な女は、この世から全て居なくなればいいのよ。』
と言った。
その言葉から、自分と同じように醜い鬼になるかもしれない女を全て消したかったのだろうと明は感じた。
陰陽局は鬼から悪気を祓い、人へ戻し、彼女が自分の罪を後悔するようになるまでが仕事だ。
彼女が人へと戻った時、素直に自分の死を受け入れる事になるだろう。
業平は、まだしばらくは事件の後処理で忙しいようだ。
学校帰り、明は悠一と山崎に頼んで廃工場を訪れる。
工場の入り口付近には献花用の机と、線香をあげるための香炉が置かれてる。
明はお線香を炊くと手を合わせてから空を見上げる。
「何が見える?」
悠一がのんびりした口調で聞く。
廃工場の崩れかけた屋根の上に、現役をとっくに退いたと思われる高齢の警備員が座ってるのが見える。
ただし、見えているのは明だけ…。
悠一にも業平にも見えない。
もしかすると業平は悠一よりもほんの少しだけ優秀なので、そこに何か居るくらいは感じ取るかもしれない。
結局、明にしか見えないものや聞こえないものは多い。
それをいちいち悠一や業平に説明するのは面倒臭い。
「別に…、そろそろお婆さまが心配するから帰るわ。」
悠一を無視するように山崎の車に乗り込む。
「ねえ、明…、今度の週末はパパと…。」
「週末は業平とお花見する約束がある。」
「パパも行く!」
「やだよ…、業平がお婆さまに言い付けたら面倒だもん。」
業平は悠一の事を絶対に言い付ける。
だけど悠一は無理矢理に付いて来る。
そんな面倒な人生だけど、自分を呪って鬼になるほどではないなと、明はそっとほくそ笑んだ。




