成金お嬢様、従者を労う(後半)
「ジル、美味しかったかしら?」
「はい、お嬢様。クッキーもお茶もとても美味しくて、とても幸せな時間でした。ありがとうございます」
「ふふ、日頃のお礼ですわ」
淡い恋心を抱く対象が、自分の手作りのお菓子を美味しかったと言って心からの笑顔を向けてくれる。
ルーヴルナにとって、それはとても幸福なことだ。
だから、手伝ってくれたモーントにも当然お礼をするべく口を開く。
「それでね、ジル。今回はモーントが作り方を教えてくれた功労者なので、ご褒美をあげるつもりですの」
「良いお考えですね」
「で、モーントはわたくしとジルとお揃いの物が欲しいそうなんですの。みんなでお揃い…受け取ってくださるかしら」
上目遣いでお願いしてくる可愛い主人に、ジルはあっさりと頷いた。
「お嬢様が望むのならば」
そう、ジルは結局ルーヴルナに甘いのだ。
「まあ!では三人で、お揃いで持つものを選びましょう!お父様とお母様の商品から、わたくしのお小遣いで購入しますわ!」
「ええ、では旦那様と奥様にお願いしなければいけませんね」
「わたくしが頼めばイチコロですわ!」
ルーヴルナの言う通り、ルーヴルナの両親はおねだりされたら候補となる物をいくつか選んで渡してくれた。その中から選び、ルーヴルナのお小遣いで金額を払えということだ。選ばれなかった物は当然両親に返す。
「さて、お父様とお母様が選んでくれたのは…イヤリング、ブローチ、ブレスレットですわね。どれがいいかしら」
「お嬢様に選んでいただきたいです!」
モーントがそう言えば、ジルも頷く。
「どれもお嬢様に似合いそうですし、それがいいでしょう」
「そうかしら。…なら、ブレスレットがいいですわ!ずっとつけていられますもの」
「では、そうしましょう」
「お父様、お母様、イヤリングとブローチは返しますわ!お代もお支払い致しますわ!」
両親からブレスレットを正式に買い、三人でお揃いで付けてみる。
「うん、いい感じ!ですわ!」
「ええ、三人でお揃いですね」
「おおー!本当に嬉しいです!ありがとうございます、お嬢様!」
「ふふ、これでお礼になったかしら」
「最高です!」
モーントの喜びように、ルーヴルナも思わず嬉しくなる。そんなルーヴルナを見て、ジルもその愛らしさにそっと微笑む。
三人の腕には、主従の絆の証が確かに光っていた。