成金お嬢様、天敵と会う
ルーヴルナはこの日、悩んでいた。
何故ならば。
「どうしても会わないといけませんの?」
「お嬢様、往生際が悪いですよ」
「いやですわぁ…」
「ぐずっても無駄です」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」
ルーヴルナはこの日、どうしても天敵と会わなければならないから。
「ごきげんよう、ルーヴルナ」
「ごきげんよう、お従姉様…」
ルーヴルナの従姉、カサンドラ。
カサンドラはルーヴルナと何もかもが違った。
「ルーヴルナは相変わらず、家を継ぐ気は無いのかい?」
「え、ええ…」
ルーヴルナは、予知夢の才には恵まれたが…両親の跡を継ぐ気は無い。正確に言えば、ルーヴルナはジルと結婚する気満々なのでその辺りはジルに丸投げする気である。
一方カサンドラは、女でありながらその多彩な才能を全て商売に活かしている。カサンドラの両親も商人だが、その跡はカサンドラの兄が継ぐ。しかし、カサンドラは自分で新たな事業を立ち上げて両親にもその才を認めさせていた。
カサンドラは…自分に甘い、そして怠惰なルーヴルナを目の敵にしていた。ルーヴルナが、人々のために動くようになるまでは。…まあ、実際のところはルーヴルナは今も自分のこと最優先で自分に甘い子のままなのだが。
「勿体ないな」
「え」
「君、予知夢の才に恵まれたんだろう?その上で人を助けている。一族の者は誰だってわかっていることだ」
「そ、それは」
「…君は予知夢の才に恵まれてからというもの、物凄く活躍している。聖王猊下とのパイプまで作ってしまった。それを活かさないのは勿体ない」
カサンドラの言葉にルーヴルナは目をぱちくりする。なんだか、今まで自分を目の敵にしていたカサンドラのセリフとは思えない。
「ルーヴルナ、正直ボクは今の君をすごく評価しているんだよ」
「え」
「人のために持てる財を全て使って奉仕する精神は素晴らしい」
「え」
そんなつもりはルーヴルナには一切ない。単に自分の破滅ルートを回避した結果。それとちょっとだけの同情の結果である。
なのだが、どうもノブレスオブリージュとかルーヴルナの好きじゃない考え方の結果だと思われているらしい。
富める者は富み、貧しい者は当然それなりの人生を送る。それはルーヴルナにとって当然のことで、立場ある者は責任を果たせなんて御免被るというのがルーヴルナの考えだ。
…とはいえ、長い物には巻かれろということで。
「え、ええええ、ええ!そ、そそそそうですの!わたくし、人々のために色々してきましたのよ!だからこそ、そんなわたくしが商人になるとフェアじゃないというか…」
「ああ、なるほど…恩を売り過ぎているから、それを返さなければとみんなが頑張り過ぎてしまうと思っているんだね」
「え、ええ!そうですの!」
「やっぱり、成長したね。ルーヴルナ、今まで冷たい態度をとってごめんよ。君はボクの自慢の従妹だ」
「お、おほほほほ!」
ルーヴルナはとても胃が痛くなった気がした。