成金お嬢様、蛇鶴國ブームの裏の立役者になる
ランスロットとクリスティアン、フルールとの蛇鶴國風のお茶会からしばらくが経ち。またお小遣いをもらったルーヴルナは再びレジスの店を訪れていた。
「いやー、驚いたよ」
レジスはルーヴルナに困ったように笑う。
「聖王猊下がいきなり蛇鶴國の物を集めだすし、クリスティアン殿にも報酬は払うから蛇鶴國とのパイプを繋いで欲しいと頼まれるし」
「フルール様もすぐにこのお店に来たそうですものね」
「そうそう。まあ、蛇鶴國の良さを認められるのは専門店の店主としては嬉しいからね。ここ数日の忙しさには嬉しい悲鳴ってやつだよ」
レジスの言葉にルーヴルナはクスクスと笑う。
「そして今日も、私に買い占められますしね?」
「あはは、まあそうなると思って色々仕入れた甲斐があったよ」
「ふふ、レジス様は商才がありますわ」
「そうだといいけど。まあ、おかげさまで懐も潤ってるしルーヴルナ嬢には感謝ばかりだ」
レジスがそう言うと、ルーヴルナは少し真面目な顔をする。
「でも、私が毎回買い占めていたらさすがに他の方が可哀想ですわね。聖王猊下のお気に入りということで、蛇鶴國の物は一気にトレンド入りしていますもの」
「そうだね」
「ここの買い占めは一旦、今日で終わりにしますわ」
「その方がいいかもね。そもそももうたくさんのアイテムがあるだろうし」
レジスの言葉に、ルーヴルナはにんまり笑う。
「思わぬ形で、流行の最先端を行ってしまいましたわ」
「表舞台での火付け役は聖王猊下とクリスティアン殿、フルール嬢ということになるのだろうけれど…ルーヴルナ嬢も裏の立役者だと語られるだろうねぇ」
「あら、それならレジス様もその立場ですわ」
「まあそうなりそうだねぇ。余計に忙しくなりそうだ」
レジスとルーヴルナは顔を見合わせて、クスクスと笑う。
「まあ、こういうのもアリですわよね」
「そうだねぇ。ちなみにルーヴルナ嬢の親御さんからも蛇鶴國とのパイプを繋いで欲しいと連絡がきたからね、ルーヴルナ嬢へのお礼の意味も込めてタダで紹介させてもらったよ。クリスティアン殿には秘密だよ」
「あ、そうでしたわ。言うのが遅れましたが、両親がお世話になりましたわ。クリスティアン様とどちらが競り勝つかまだわかりませんけれど、いずれにせよ儲けにはなりそうですわ。ありがとうございます」
「あ、聞いてたんだね。でもお礼を言うのはこちらの方さ。本当にありがとう。蛇鶴國の魅力を知ってくれたのも、広めてくれたのも」
「ふふ、全てはレジス様との出会いのおかげですわ」
レジスはそう言って笑うルーヴルナに、なんとなく胸をときめかせる。
でも、その後ろで静かに控えるジルを思うと胸が締め付けられた。
ジルとルーヴルナには、何か特別な空気があった。それに気付いてしまったから、恋にもならない憧れはすぐに打ちのめされてしまったのだ。