成金お嬢様、蛇鶴国のモノを見出す
「ということで、今日は何を買おうかしらー?」
街に出たルーヴルナ。それに付き従うのはジル、モーント、そしてリムル。馬車は適当なところで待たせて、表通りを見て回る。
「ふふ、この辺りは相変わらず栄えていますわねー…あら?」
ルーヴルナが目を向けたのは明らかに個人経営の、ちんまりしたお店。
「お嬢様、気になりますか?」
「ええ。これ、なにかしら」
「あ、お嬢様!僕知ってるよ!」
リムルがはいっと手をあげる。
「あら、教えてくださる?」
「うん、着物っていう服だよ!」
「まあ!リムルは物知りですわね」
「うん、お兄ちゃんが教えてくれた!」
リムルにお兄ちゃんと呼ばれるのは、リムルに読み書き計算を教えるモーントである。そこまで懐かれたのはもちろん色々教えて面倒を見たから。
ちなみにリムルは、今は簡単な足し算引き算と読み書きは完璧だ。字の綺麗さで言えばまあ年齢相応だが。今は掛け算をマスターすべく猛特訓中である。
「あら!モーント、貴方その知識どこで?」
「いやぁ、リムルに勉強を教えるために本を読むようになったんですけど」
「あら、偉い」
「へへ、それで小説に着物っていうのが出てきたので調べたんです。この国ではメジャーじゃないですけど、東の小さな国じゃ民族衣装らしいです。蛇鶴國って国ですね」
「まあ!」
蛇鶴國と聞いてルーヴルナの瞳が光る。
「たしか、忍者と侍がいる国ですわね!」
「そうですそうです!」
「入ってみましょう」
興味津々なルーヴルナのために、ジルが店のドアを開く。ルーヴルナが入れば、そこは異世界のようだった。
「まあっ…」
数々の着物たち。扇子も置いてある。簪もあった。そのどれもがとても独特で、ルーヴルナは思わずはしゃぐ。
「いらっしゃ…」
「ご店主様ですのっ!?」
客の気配に、奥から出てきた店主。いきなり客に詰め寄られて困惑しつつも頷く。
「う、うん。俺が店主だけど…」
「これ!ここにある全部、とても素晴らしいですわ!」
「え、あ、分かってくれるのかい?」
目を丸くする店主。
「ええ、ええ。触らずともわかる高品質な布、その柄、デザイン、全てが独特の世界観を表していて…ああ、わたくしなんと言ったらいいのか!」
「…ふふ、どうやら本心らしいね。そう、これは着物という蛇鶴國の民族衣装でね?この扇子や簪も蛇鶴國独特のデザインのモノなんだ。ほら、この扇子の柄とか蛇鶴國で一番有名な山をモチーフにしているんだよ」
「まあ!素敵!」
店主は気を良くしたようでルーヴルナに笑いかける。
「かの有名なルーヴルナ嬢にそこまで褒められると、悪い気はしないな」