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成金お嬢様、ドラゴンから身を守る(前半)

ルーヴルナは、歩く。そこは、火山。どうしても、登らないといけなかった。


ジルは置いてきた。危険だとわかっていたから。その代わり、モーントと登る。


頂上に着くと、ドラゴンがいた。わかっていたことだった。


ルーヴルナを守ろうと、モーントは前に出る。


ドラゴンは、こちらに話しかけてきた。


「貴様、何の用だ」


「わたくしね、教会の聖王猊下に言われてここにきたんですの」


「…何が望みだ」


「教会の狙いは、わたくしの死ですわ。…聖王猊下に頼まれたのは、貴女の宝物を奪うこと」


「…卵、か。渡さんぞ」


ルーヴルナは、頷く。


「ええ。分かっていますわ。それは貴女の宝物。我が子ほど大切なものはありませんものね。わたくしも、両親から猫可愛がりされていますのよ」


「…なら、なぜ来た」


「聖王猊下の命には逆らえませんもの」


「すごすごと帰って赦されるのか?」


「いいえ?ですから、貴女にはわたくしを食べてもらわねばなりませんの」


モーントがぎょっとしてルーヴルナを見つめる。


「ああ、ここにいるモーントには手を出さず、生きて返してあげてくださいまし」


「お嬢様!」


「いいんですのよ、モーント。心中なんて、みっともない真似しませんわ。…それに、一緒に死ぬならジルの方が良いですもの!まあ、ジルにはわたくし以外の誰にも手は出させませんけど」


「…でも」


「その代わりね、モーント。ジルを、守って。きっとジルも、教会に目をつけられてる。わたくしが、獣人の解放をしたから」


モーントの目が見開かれる。そして、悲しげに伏せられる。自分たち獣人のせいで、ルーヴルナがなくなるのだと。そう思うと、胸が苦しいのだろう。


「…わかり、ました。ジルは必ず守ります」


「ああ…でも、ドラゴン様。貴女の元にも、聖騎士が押し寄せてくると思いますわ。どうか、わたくしを食べた後は卵を抱えて逃げてくださいまし」


「…人間とは、つくづく悲しい生き物だな。では、有り難くお前の命を頂こう。そして、私は卵と共に逃げよう。聖騎士が相手では、さすがに疲れるだろうからな」


ぱくりと、食べられて。意識が、途切れた。
















「…っ!」


また、悪夢。怖かった。けれど、ああ。命を投げ出してまでしてジルを守ることを選んだ自分を、否定できない。


「ジル…」


なんとか、しなければ。だって、あんな別れは辛すぎる。この歳で死に別れるなんて嫌だ、絶対。


「教会…」


獣人の解放のため、聖王猊下から異端扱いされたのが原因ならば。


「教会に、媚を売りまくりますわ…!」


人優先で亜人族を差別するクソみたいな宗教でも、国教であることに変わりはない。


あんな命令出されるくらいなら、いくらでも媚を売ってやる!!!














「ということで、教会に寄付をしますわ!」


「どういうことでしょう、お嬢様」


「げぇ、教会?」


ルーヴルナは元気に挙手して宣言する。ジルはまた始まったと思いつつも、結局ルーヴルナに甘いので異論はない。


モーントは、人優先で亜人族を差別する教会を嫌っているので嫌そうな顔をした。しかし、この国ではもう獣人族は解放されているのだから文句を言ってもしょうがないと己を納得させる。


「だってね、ジル。わたくしも貴方も、獣人族を解放したんですもの。教会には睨まれているはずですわ。特に、過激派の聖王猊下には」


「!?」


モーントもジルも驚愕する。が、納得もした。


「ここはババーンと寄付金を渡して、蔑ろに出来ない存在になることが大切ですわ!だってわたくしたち、貴族ですらないですから!」


「…なるほど」


「申し訳ねぇ…」


落ち込むモーントに、なんとなくルーヴルナは落ち着かない。


「そ、そんな気にすることないですわ!わたくしが勝手にやったことですもの!」


「…ありがとうございます、お嬢様。せめて、俺にもできることはありませんか」


「護衛をお願いしますわ。わたくしもジルも、絶対守って」


「はい…!」


ということで、ルーヴルナの教会への媚びを売る作戦がスタートした。















「教会に寄付をしたいんですの!」


「はい、お名前と金額をどうぞ」


聖都の中央教会。ルーヴルナは元気に叫んだ。


「ルーヴルナ、商人の娘ですわ!金額は金貨を五千枚ですわ!」


ルーヴルナ、獣人の解放を行った異端者。それだけで一気に注目を集めたが、その寄付金の額に誰もが驚いた。これは、ルーヴルナにとっては月に一度のお小遣いの額ぴったりなのだが普通に考えて高すぎる。決して無視は出来ない金額だ。


「い、異端者かと思ったが、やはり彼女は聖女なのか…?」


「教会への奉仕の気持ち、実に素晴らしい…」


「だが、護衛は獣人だぞ?」


「彼女は一体、なんなんだ…」


良し!良し!良し!


「…で、ではお預かりします。…ええ、はい、確かに金貨五千枚いただきました」


「教会に尽くすことが出来て嬉しいですわ。それと、予言を一つ」


「え?」


「近々、国の火山にドラゴンが来ますわ。卵を産み孵すために。なにか防衛策をとることを推奨しますわ」


「え!?」


そしてルーヴルナは帰る。これで予知夢を回避できていることを祈りながら。

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