成金お嬢様、とりあえず義足を与える
「さあ、着きましたわよ。わたくしの家ですわ」
「わあ、わんちゃんのご主人様のお屋敷よりは小さいけど、すっごく立派なお屋敷…」
「一言余計ですわよ!生意気ですわ!」
ルーヴルナは少年の頬をむにむにする。少年は抗議の声を上げつつもなすがままだ。
「わたくしの家はフルール様のところと違って貴族ではありませんの。商人の家としては立派も立派ですのよ?この国でも随一の商家ですもの!」
「お姉さんすごーい!」
「わたくしの両親がすごいのですわ!ま、わたくしも才能の端くれくらいは受け継いだつもりですけれど!」
早くもルーヴルナに慣れた少年。少年を特に腫れ物扱いすることもなく可愛がるルーヴルナ。その二人を優しく見守るジルと、少年を抱えるモーント。
そんな四人を出迎えたルーヴルナの家の使用人たちは、少年の足がないのには気付いたものの特に何も言わない。またお嬢様のお人好しが発動したと思うだけだった。
「さて、とりあえず…義足が必要ですわね。お小遣いさえ余っていれば超級ポーションを買ってあげたいところですけれども、今はあいにく西の海の向こうの孤島に援助をしていて手持ちがありませんの。それでも、義足くらいなら用意できますわ。そうですわね、ジル」
「はい、お嬢様」
「…え、お姉さん義足買ってくれるの?」
キョトンとした少年に、ルーヴルナは告げる。
「当たり前ですわ。そうでなければ働けないでしょう」
「え」
「わたくし、貴方の衣食住をしばらく保証して差し上げようと思いますの。でも、ただではもったいないですわ。ですから、貴方はわたくしのために仕えなさい。義足くらいは用意しますから、出来ますわよね?」
ルーヴルナの言葉に、少年は感極まった。
「…っ!」
泣きそうな少年に、ルーヴルナは勘違いして慌てる。
「あ、な、泣いてはいけませんわ!仕えろと言っても嫌がることはさせませんわ!ええ、ただちょっとジルやモーントの…そこのお兄さん二人のお手伝いをするだけですのよ。大丈夫、貴方なら出来ますわ!」
そう言ってハンカチを差し出したルーヴルナ。少年は涙を拭うと強く頷いた。
「うん、僕、お姉さんの役に立つよ」
「…そう。いい子ですわね」
優しく少年の頭を撫でるルーヴルナに、少年は幸せそうに笑った。