成金お嬢様、めちゃくちゃ甘やかされる
ルーヴルナが心労で倒れて二日目。薬のおかげか、心労が和らいだのか、ルーヴルナは胸の痛みが楽になった。とはいえ無理はできない。しばらくは安静にするよう、ジルとモーントから言い聞かされている。
「つまらないですわ」
しかしルーヴルナは、ただ寝ているだけの時間に飽きていた。まあ、仕方がない。暇だし。
「お嬢様、暇ですか?」
「ええ。このまま寝てるとストレス溜まりそうですわ」
「…っ!!!」
ルーヴルナはなんとなく言ったつもりだが、ことがことなので過剰反応するジルとモーント。
「あ…じゃあ、じゃあ!お嬢様、俺のお勧めの歌とか聞きません!?」
「え?」
「お給金で、好きなアーティストの歌を録音したレコード買ってあるんですよ!聞きます!?」
「え、聞く!」
嘘である。昨日急遽お嬢様のストレスケアのためにと、好きでもないアーティストのレコードを無理して買ってきたのである。
もちろん、泣けると評判のレコードばかり買ってきた。
「はぁ…この歌詞、素敵ね」
モーントとジルの気持ちが通じたようで、二人が選んで買ったレコードはどれもルーヴルナの涙を誘った。綺麗な涙をたくさん流すルーヴルナに、二人はほっとする。これでストレスも緩和されているだろうと。
ルーヴルナも、涙を流すとなんとなく気持ちがスッとする。ああ、こんなにも辛かったのだとそこまできてやっと気付いた。お医者様の仰る通りらしい。
「さあ、レコードばかりでも飽きるでしょう?次は物語を読んで差し上げましょう」
「え?」
「ファンタジーはお好きでしょう?」
次はジルが、適当に書庫から持ってきた本の読み聞かせをする。適当に、といってもモーントの勘で選んだ本の中からルーヴルナが泣けそうなものをジルがさらにチョイスしたのでまあ、確実に泣けるだろう。
しばらく読み聞かせを続ければ、ルーヴルナは期待通り涙を流す。書庫にあったファンタジーなのでルーヴルナも読んだことのあるお話だが、ジルが読み聞かせてくれるとなんだか前読んだ時より心に染みる…気がする。
「…はぁ。泣けるわ」
よしよしと、ジルとモーントは顔を見合わせて頷く。
「んん…なんだか眠くなってきましたわ」
「ええ。では無理はせず寝ましょう」
「うん…」
ストレスが解けていくと、安心して眠気が襲う。そのまま眠るルーヴルナに、ジルとモーントは起こさないように気を付けつつお互いの頑張りを称えあった。
ルーヴルナはストレスケアをしようとしてるなんて知らないのでそんな二人の頑張りには特に気付かず、過保護だなぁと満足していた。