成金お嬢様、医者に診てもらった結果
「…なるほど」
「先生、お嬢様は!?」
「心労から来る苦痛が原因…ですね」
「し、心労でここまで酷くなるんですか!」
「よっぽどのストレスを受けたのでしょう。可哀想なくらい心が弱っていらっしゃいます」
ジルとモーントは顔を見合わせる。心当たりはある。…神官に、もっと言えば聖王に怯えるルーヴルナを無理させてしまった。それに、最近色々なことがあった。それも、ルーヴルナにとってはストレスの要因になったのかもしれない。
「…不甲斐ない」
「先生、どうすればお嬢様は良くなりますか?」
「お薬は出しておきます。ただ…これからも心労がかかるようであれば、また同じ発作を頻発しかねない」
「…っ!」
「私たちに出来ることはありますか」
医者は頷く。
「出来るだけ、ストレスケアを心がけて差し上げてください。信頼できる人が側にいるだけでも、気持ちは楽になるでしょう。けれどそれでも処理しきれないストレスもある。それをいち早く気付いて、癒して差し上げてください」
「…ストレスケアですか」
「例えば、音楽を聞いたり物語を読んだりして涙を流すとか。泣くことは、ストレスケアにはぴったりです。そういうことを勧めて差し上げたり、無理はさせないよう心がけたり。あとは、手に負えないならこちらにご連絡ください。その場合、出来る限りのことはします」
ジルは頷く。
「…わかりました、心がけます。ありがとうございました」
「貴方方も無理はいけませんよ。では」
医者が帰ると二人はすぐに相談して、処方された薬をさっそくルーヴルナに飲ませることにした。
「お嬢様、お薬を飲みましょう」
「うん…」
「薬を飲む前に、ちょっとでも何か腹に入れましょう!ほら、今日のおやつに出すはずだったプリンですよ!」
「プリン!」
パッと笑顔になるルーヴルナに、ジルとモーントはホッと息を吐いた。
「ゆっくり食べてください」
「紅茶もどうぞ!」
「うん!美味しい!」
「ゆっくり、ですよ」
はしゃぐルーヴルナに、安心した二人はクスクスと笑う。ルーヴルナはルーヴルナで、プリンのおかげで胸の痛みを少しだけ忘れられた。楽になる。
「さあ、薬ですよ」
「お水で飲んでくださいね」
「はーい…」
薬を飲むルーヴルナ。その後また横になる。
「ふう…ジル、モーント、本当にごめんなさい。約束したのに、体調崩して」
「いいんですってば!」
「大丈夫ですよ、お嬢様は悪くありません」
励ましてくれるモーントと、優しく頭を撫でてくれるジルにルーヴルナは心が軽くなった。
「せめて、早く治しますわ」
「はい、お嬢様」
「でも早く治そうとして無理はしないでくださいね!」
ルーヴルナは、モーントの言葉に心得ていると微笑んだ。