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成金お嬢様、破滅回避のため奔走する

気まぐれに投稿する感じのゆるふわな感じです。どのくらい続くかも未定ですが気長にお付き合いいただけますと幸いです。

ギロチン。そんな恐ろしいものに、自分は首をチョンパされようとしている。


一年前までは良かったのだ。


国は豊かで、商人である両親はお金持ち。そんな環境で、並みの貴族より贅沢をしていた自覚はある。


でも、モンスターのスタンピードが起こった。流行病が襲った。飢饉に見舞われた。棄民たちによる武装蜂起が起こった。


国が崩壊していく中で、逃げようとしていた私たち家族も捕らえられた。貴族でもなんでもない私たち。しかし、ちょっと前まで贅沢していたのに逃げようとしていた私たちを棄民たちの武装勢力は許さない。


「ああ…空が、青いですわ」


ぽろっとそんな言葉が落ちて。首が、はねられた。














…がばっと起き上がって、辺りを見回す。


「ゆ、ゆめ?」


カレンダーを見る。全ての問題が起きたあの頃の、さらに一年前。


「…でも」


予知夢。


その可能性を、否定できない。


なぜならば、彼女…ルーヴルナの一族には予知夢を見るものがいるから。それによって、商家である実家は発展したのだ。


「…怖い」


彼女は、さめざめと泣いた。泣いて、泣いて。そして、キレた。


「…そもそもなんでわたくしがあんな目に!?絶対絶対原因を全部つぶしてやりますわ!」


彼女は、お金持ちのお嬢様だ。全てを実行に移せるだけのお小遣い。それを持て余していた。












「ということで、国有地を買いますわ!」


「どういうことでしょう、お嬢様」


「いいから準備なさい!ジル!」


「…かしこまりました」


ジルと呼ばれた少年。彼は、彼女に与えられたお目付役だ。孤児である彼は、ある日突然彼女の家に引き取られて彼女のお目付役にされた。彼女はとてもわがままな子なので、抑える者が必要だったのだ。…抑えられてないけど。


「ということで、買いましたわ!国有地!」


彼女は、エステル皇国の国有地の一部を買った。


…そこは、モンスターの巣窟である森。そう、スタンピードの大元だった。


彼女は、森を自分の私有地にした。私有地ならば何をやっても恨まれないし睨まれない。


彼女は、まず森のモンスターを一掃することにしたのだ。


「でも、あの森モンスターがうじゃうじゃいるそうですよ?」


「そうですわ、スタンピードが起きる前にモンスターを殺しますわ」


「…っ!!!」


ジルは目を見開く。スタンピード…起きれば国は間違いなく混乱する。それを先手を打って潰す?このわがままお嬢様が?なぜ?…でも、たしかにそれは悪事ではない。止める理由はない。むしろ、協力するべきだ。


「…どのように」


「全国に散らばる、棄民たち…スラムの人間を集めなさい。そして、超一級の武器を買い与えなさい。モンスターの肉…ジビエは、殺した分だけ自分たちで食べていいことにしますわ。もちろん、加工して保存食にするもよし。それにかかる費用も負担しますわ。そして一匹モンスターを殺すごとに金貨一枚を与えますわ」


モンスター討伐の平均価格は、一匹につき銀貨五枚。金貨一枚は破格である。


「…破格ですね?」


「わたくしのお小遣いで事足りますわ。どうせ余ってる貯金もありますもの」


「ですね。準備します」


そして、全国から一日で棄民が集められた。一日目は集めるのに費やしたので、ルーヴルナのおごりで近くの民宿に泊まってもらった。結構な人数だったので、民宿もてんやわんやだったがルーヴルナから提示された金額に喜んで受け入れた。















「さて、皆さま。ジルから大体の話は聞いていますわね?これが皆さまに与える武器。好きなものをお使いなさい。ちなみに、この森のモンスターを一掃した暁には…この森を、皆さまの好きなように開墾することを許しますわ。一応、わたくしの土地ですけれどね?」


彼女の発言に、棄民たちがざわつく。一気に士気が上がったようだ。


「ということで、あとはお願いしますわ」


棄民たちは、おー!と声を上げて森に入った。


「あ、忘れてましたわ。ジル、怪我人が出てもいいように治療薬も買い込んでくださいな」


「超級ポーション三個と、上級ポーションを百個買い込んできます」


「それだけあれば十分ですわね。お願い」


ジルが教会にポーションを買い付けにいく。ジルが戻ると、ルーヴルナが退屈そうにあくびをしていた。


「お嬢様、状況は?」


「まだ誰も帰ってきていませんわ。監視魔法で見る限り、かなり健闘してくださっているようですけれど。ああ、報酬を弾まないといけませんわね。ふふっ」


思ったより良い調子だ。ルーヴルナは思わず笑う。


ジルは、そんなルーヴルナの様子にほっと息を吐いた。これならば、スタンピードは回避できるだろう。…本当に起こるかどうかなんてわからないが、事前に可能性を潰すのは悪いことじゃない。













そして、数日が経つ。ルーヴルナの森のモンスターは、みんなお腹を空かせた棄民たちのお腹の中だ。あるいは、保存食に加工されていた。


「皆さま、よく頑張ってくれましたわ!これが報酬ですわ!」


見たこともない大金に、全員目を疑う。しかし、間違いなく受け取った。


「このお金を使って、森を開き家を建て畑を作るのですわ!あと、余裕があれば家畜も買いなさい!」


「はい!」


そして、棄民たちは数ヶ月かかったが森を開いて家を建て、畑を作った。また、家畜も飼うことができた。それまでの生活費も、ルーヴルナからの報酬で事足りた。


その頃ルーヴルナは、国中の貴族から感謝されていた。棄民たちを一箇所に集めてくれたおかげで、領内の治安が格段に良くなったと。


そして、もちろん棄民たちにも感謝される。武器はあのあと没収されたが、モンスターのジビエという食料をくれて、報酬としてお金をくれて、土地を貸してくれて。感謝しないわけがない。


「ふふ、いいかんじですわ」


「これで安心ですね」


「いいえ、まだですわ」


「お嬢様?」


「白魔術師を至急雇いなさい。流行病と飢饉の可能性を潰しますわ」


彼女の言葉にジルは目から鱗が出た。流行病に飢饉。どちらも国に混乱を招く事態。起こるかどうかなんてわからないが、可能性を潰すのはいいことだ。


「わかりました、至急手配します」


「ええ、お願いしますわ」


そして、ルーヴルナは有り余った貯金で白魔術師を雇い国民の農家(元棄民たちも含む)に派遣した。作物や家畜に健康を維持し元気を与える魔法をかけてもらい、飢饉をほぼ起こり得ない状況にすることに成功。


そして国に寄付をして許可をもぎ取り、国中に白魔術による加護を与えた。健康を維持し元気を与える魔法を国中の人間にかけて、流行病もほぼ確実に回避したのだ。


しかし、ここでルーヴルナの貯金は全額使い果たし、お小遣いも使い果たした。


とはいえ毎月多額のお小遣いが両親から与えられるので、また貯めていけばいいだけなのだが。


あとは、結果を待つだけだ。













ルーヴルナが十五歳になって数ヶ月。本来ならこの日、ギロチンにかけられる。


だが、モンスターのスタンピードは起こらなかった。流行病は国には入ってこなかった。飢饉は回避した。棄民たちは今はもうルーヴルナの手駒だ。


そして、ルーヴルナは見事にギロチンを回避した。それどころか、人知れず国を救った。


人知れずといっても、ルーヴルナのしたことは知れ渡っている。棄民たちを救い農民にし、白魔術師の加護で農民を豊かにし、世界に蔓延する流行病を自国だけ回避した。貴族平民問わず、ルーヴルナを聖女だと持て囃す声は大きい。


「ふふっ、わたくしが聖女…ふふっ」


ご機嫌なルーヴルナに、ジルは優しく微笑む。ルーヴルナはわがままお嬢様だが、国に尽くす姿勢もある。そう今のジルは思っている。少し、ジルはルーヴルナに甘くなった。ルーヴルナはそれに対して気づいていないが。


「さて、難局も乗り切ったわけですし辛いものを食べまくりますわよ!」


ルーヴルナはご機嫌で、大好物の激辛麻婆豆腐をパクパクと上機嫌で食べていた。


次の悪夢まで、あと少し。

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