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短編小説(非エントリー)

走り抜けて

作者: ori

屈辱的な結果だった.


高校3年になってすぐ,私は陸上部の顧問に「受験勉強に専念したいから」と言って,部活を抜けた.

抜けてすぐに勉強を始め,模試の成績は徐々に上がって行っていた.

しかし,10月になってから雲行きが怪しくなった.


私の点数が下がったわけではなかった.


平均が上がって行き,私の成績が下がっていたのだ.


友達がそれとなく話す勉強の進捗はいつの間にか私の知らないところまで行っていることもあった.

その子は県大会に行き,1回戦で負けたそうだが,つい最近まで部活で忙しそうにしていた.


― 私の頑張りは,彼女の数週間に負けてしまったのだろうか ―


そんなことが頭の中にふとよぎっていた.

模試の結果が返されてすぐの休み時間,クラスメイトの笑い声だけが耳に響いていた.

私は結果の紙の端っこに,無意識に浅い折り目をつけていた.




放課後,私は図書館で勉強するのが日課だった.

誰もが静かに居るこの場では,私も勉強によく集中できた.


ただ今日はいつもと少し違っていた.


日頃は,今まで,気にしたことのなかったはずの部活動生の声がやけに耳に入った.

特に難しい問題で手が止まった時,彼らの声は何故か泣きたくさせた.


今日はもう帰ろうと思い,私は図書館を出て,正門へと向かった.

正門を出る前の右手には,半年前まで走っていたグラウンドがあった.


私は別段,運動が得意ではなかったし,陸上競技の内の何かに秀でているわけでもなかった.

だから顧問もあの時,退部を了承してくれたのだと思う.


「はい・・・,ゴー!」


正門を出ようとした時,聞きなれた掛け声に私は振り替えざるを得なかった.


そこには,汗を流していた後輩たちの姿があった.

その景色がただただ羨ましく思った.同時に,あの時の自分に今更ながら嫌気もさした.

そして,本当は違うと分かっていても,顧問の悪態もついてしまった.


少し顔を出そうかとも思ったが,私にはその資格がないように思えた.

残り3ヶ月もない.これだけは最後まで走り抜けなければならない,そう思いながら,私は歯とこぶしに力を入れることしかできなかった.


私には走り出しの合図をくれる人はいない.

高校受験も大概ですが,大学受験は本当にシビアな世界ですよね.

こういう時に耳に入る声はとてもうるさく悲しく聞こえるものです.

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