6.嵐到来(挿絵あり)
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「我が家へようこそ!」と書いてある幕をジゼルに右側を持ってもらい私は左側を持つ。
出迎えるなら明るく出迎えたほうがいいよねって思って幕を作ってみたが、どうかな……喜んでくれたかな……
恐る恐るデイヴの顔を覗いてみると虚をつかれたように一瞬目を見開きすぐに下を向いてしまった。
やはり失敗だったかもしれない。もっと静かに優しく出迎えたほうがよかったのか。
心配になり駆け寄るとデイヴは私の顔を見て「あれ、お前が書いたのか?」と聞いてきた。私が肯定すると「だと思ったよ。あんな汚い字なかなか書けるもんじゃないしな」と嘲るように言った。
「今なんて言ったのかしら、よく聞き取れなかったわ。もう一回言ってくれない?」
久しぶりにデイヴに会うから緊張してたのかな? なんか馬鹿にされた気がした。
「耳まで悪いのか? おまけにお前不細工だな。お母様の姪だというのにちっとも似てない」
気のせいではない。明らかに馬鹿にされている。えっ、最後に会った時はそんなキャラじゃなくてとても素直でいい子だったのに……相当ショックなんだわ。少しイラッときたけど怒ってはダメね。
「ごめんなさい。私の耳が遠かったみたい。それより馬車に揺られて疲れたでしょう? 部屋に案内するわ。ジゼル、デイヴを部屋に案内しまっ!……」
ジゼルの顔が凄いことになっている。苦虫を噛み潰したかのような顔になっている。
「ジゼル私は気にしていないわ」
「お嬢様がお気になさらなくても私が気にします。先程の言葉はいくらデイヴィス様でも許せません。訂正して下さい」
「うるさい侍女だな。ここは侍女の躾もできていないのか」
『はぁ? 私のジゼルになんて事を言うの!』と殴りかかりたくなったが抑えてデイヴを部屋へと導く。
「絶対勝手に入ってくるなよ」と言われバタンと乱暴に扉を閉められてしまった。
後ろを振り向くとさっきとは打って変わってスッキリとした顔のジゼルがいた。流石年上なだけあって落ち着くのが早いなと感心していたら
「お嬢様、追い出しても構いませんか?」
とんでもないことを言い出した。驚愕のあまり喉から「ひょえ……」と言う変な声まで漏れた。
「ダ、ダメよ! デイヴは傷ついてるんだから優しくしてあげなきゃ」
「先程のような事がまたあったら私は耐えられません」
「あれはきっと本心じゃないのよ。母親を亡くして周りに当たりたいだけだわ」
「ですが……」
「ジゼル」
真っ直ぐにジゼルを見つめる。
「……わかりました」
「ありがとうジゼル! 大好きよ」
それからお父様とお母様とデイヴと夕食をとった。夕食の時は以前のような優しいデイヴだった。さっきのは幻だったのかなと思い部屋に帰る途中の廊下で声をかけると。
「話しかけるな。うざい」と言われてしまった。だが、昼のように引き下がることはしない。
「嫌よ、これからどんどん話しかけていくから。逃げても無駄だからね」
そう言って微笑んで見せると、デイヴは私をひと睨みして無言で部屋に入ってしまった。これは長期戦になりそうだ。でも絶対仲良くなるんだから! 決意を固めて私も自室に入った。
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